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皆空高校至上主義部!  作者: 三枝光吉
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部活選びに間違えると高校生活は基本闇

はじめまして。続けられるように頑張ります。

「あぁ、頼む、もっとだ…!もっと激しくしてくれ…!!」


そんな事を言いながら、目の前にいる女は這い蹲りながらも媚びへつらってこちらの顔色を伺っている。


上気した頬。艶やかに、かつ扇情的に乱れた長髪。そして何よりその表情。男子高校生十人に聞いたら恐らく九人くらいはそのまま立ち上がることもなく急な腹痛で前屈みにでもなるだろう。


「嫌ですよ、なんであなたのために俺がそんなことする必要があるんですか。それは、俺の主義とは関係ない」


対するは拒絶。完膚なきまでに無表情で、氷のように、凍てついた言葉で断った。


「あぁっ…!やっぱり君は、こんな姿をした私でも、普段と変わらずに拒絶してくれる…!」


しかしてこの対応は逆効果だったようだ。ドMに対して放置するのも下手したらそう言うプレイとして解釈されなくもないから仕方はないが。とはいえこの状況、実に面倒だ。この時間があったらもっといい自分磨きができるのに。


「頼む、私の…!卑しい私のご主人様になってくれ!くださいぃ!!」


ハァ、とため息を一つ。いやほんと、どうしてこうなった?


戒めとして、こんな状況になる前、そう、この部活、《至上主義部》に入る前、高校生活始めたての、つい一週間前まで現実逃避をする事にした。



春。新しい生活と真新しいパリッとした制服に身を包んだ新入生。右を見ても左を見ても、初々しく少し緊張した面持ちをしているクラスメイト。


今日は高校生活の初日も初日、入学式からのクラスでの初顔合わせの時間。同じ中学から来た奴もいるのか、早速この学校について話をしている奴らもいる。


私立皆空(かいくう)高校。俺、月見里(やまなし)(やなぎ)は晴れて受験戦争を勝ち残り、この高校に入る事になった。


偏差値も悪くなく、比較的新しく作られたことにより設備などが充実しており、人気な高校なだけに受かったのは少々心地良い。この感覚、癖になりそうだ。


家から徒歩圏内だったから受けたけど、わりかしいい高校に入れたのではないだろうか。


一人ウンウン頷いていると、肩を叩かれた。


「やほっ。まーた一緒だねぇ、やっくん」


そこに立ってたのは顔馴染み、というより幼い頃からの見知った幼馴染。湖月(こづき)(あお)。栗色の髪をセミロングに、ゆるふわパーマをかけている。幼馴染、という贔屓目を抜いても美少女に分類されるであろう。


「どーお?似合ってる?」


「ハッ、蒼なら基本なんでも似合うだろ、顔はいいし」


「んはは、まーねー。なんなら最近スタイルもいいしね?」


綺麗な顔をしながらもヘラヘラと軽薄な笑みを浮かべる姿も、まぁ側から見たら可愛いっていう感想になるんだろうな。俺は見飽きたけど。


「身長が高くなりゃなぁ」


「やっくん、君は今幼馴染を一人失ったよ」


「お前のその地雷スイッチなんなの?」


コンプレックスは身長が低いこと。140センチくらいしかないと思う。よく自身の母親に着せ替え人形じみたことをされてるから余計に触れられたくないのだろうが。


「見てろよぉ…絶対に…絶対に今年は145センチになってやるからなぁ…!」


「その目標、高いのか低いのかわかんないな」


小粋なジョーク(145センチになるなんて低い次元なのに目標とか意識高い事を言ってる)を挟みつつもなんだかんだ俺は蒼が居て良かったと少しホッとしてる。他の奴なんて全く知らんし。


「そういうやっくんこそ、高校じゃ変わるって言ってたけど、変わるの?」


「あったりまえだろ。俺ぁリア充になる。絶対に、楽しい青春を過ごしてやる。これが俺の目標だ」


すると、蒼は俺の返答が意外なのか目をパチクリさせている。


「やっくんどうしたの?悪いのでも食べた?早退する?」


「なんでそんなに信じられんねん。俺だって友人が極端に少ないのは嫌だし、せっかくの高校生活なんだしそりゃ楽しまなきゃ損だろ」


確かに中学じゃ友人付き合いは少ない方だったけど、流石にそこまで酷くはない。普通だった。いやマジで。柳嘘つかない。


「はー、やっくんが青春ねぇ。部活とかでも入るの?」


「ん、まぁな。この学校、部活に関してはガチだし、なんか良さげなところにでも入るつもり」


ここ皆空高校は部活に力でも入れているのか運動、文化両方含めておよそ40の部活がある。部活に関しての冊子を見る限り、ぱっと見では何してるのかわからない部活もちらほらと見かける。なんだよ空を飛部って。何すんだよ。めっちゃ気になるよ。


「運動系でも入るの?やっくんあんまり運動好きじゃなくない?」


「できないわけでもないからな。明日やる部活紹介で雰囲気が良かったらそこに入ろうって漠然と考えてる感じ」


とはいえすくなくとも部活動、というのはリア充生活を目指す者としてなくてはならないものなのではないだろうか。仲間との切磋琢磨や過ごした時間というものは代え難い。


「ふーん。割と真面目に考えてるんだねぇ。じ、じゃあさぁやっくん。こ、恋人とかも作る感じなの?」


恋人。リア充としてはなくてはならないもの。なるほど青春を送る上で確かに恋人、彼女というのは作った方が良いのかもしれない。


「…ま、それは今考える事じゃないかな。とりあえず部活、まずはそこから」


「そ、そっか。なるほどねぇ。やっくんが部活するなら、私も何かやろっかなー」


「それがいい。蒼だって運動できるんだし。そのなりで」


「やっくん、君は今湖月家の敷居をまたぐ事を禁止されたよ」


「さっきより罪が重い!」


高校生になってから、なんだか無性に幼馴染の地雷が大きくなってるようだった。


とはいえ、明日の部活動説明会。少し…ほんの少しだが、楽しみだ。俺の“目標”のために、せいぜい活用させていただこう。

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