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二十三、野良犬は覚悟する

 セレニアの言葉で会場はがらんどうとなり、俺はこれから始まるであろう俺の終了の鐘を受け入れようと覚悟を決めた。


 彼女は王女としては恐らくどころか確実に最上で、俺という男の妻に堕とされるべき存在では無いのだ。


 歴史ある伯爵家の当主との結婚であれば、野犬の嫁だと、身を落としたなどと、彼女は陰口など叩かれずに王宮とのつながりを持ったままでいられるかもしれない。


 俺は身を引くための理由を自分に言い聞かせたが、俺が一番認めたくない理由は勝手に目の前で展開していた。


 セレニアは目を輝かせて緑ケ原伯爵を一心に見つめ、緑ケ原伯爵は男の俺から見ても神々しいまでの魅力をセレニアにむけているではないか。



 彼らは心の底から結ばれていたのだという、俺が死んでしまう真実。


「アレン。会えて嬉しいわ。あなたには紹介したかったの。バルドゥク、さぁこちらにいらして。あなた方はきっと仲良くなれると思うわ。」


「あぁ、彼の事は良く知っているよ。それに、もう仲良しさんだ。」


「あら、そうね。仲良く登場されたのだものね。庭でいろいろとお互いの事をお話をされていたの?」


「いやいや、ず~と前から知っているよ。なんたって僕の弟が心酔している上官だからね。」


「え?」


 俺から変な声が出たのは仕方が無いだろう。

 セレニアだって目を丸くしている情報なのだ。


「おい、お前の弟って。」


「勿論、キリアム君だよ。彼は僕の大事な野苺子爵様だ!」

「ええ!あいつが、子爵?」


 俺は緑ケ原伯爵の言葉の方が衝撃で、セレニアが俺の名前を呼んでくれた事に迎賓館に戻るまで気付いていなかった。

 俺はせっかくの機会だったのに、夫として彼女の横にも立つこともしていなかったのだ。



 畜生、あの素っ頓狂な伯爵め。

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