6:国1番に売れてる名物はパンケーキとされていて、特産物はハチミツとの事
解決パートというのは初めて書くもので、校閲していたら月曜日が過ぎていました(汗)
そろそろ夏ですが私はやることも決まっておらずダラダラしていますが……今朝、目を覚ますと体が鉛のように重かったため、今年の夏は少しだけ運動をしていこうかなと思っています。
ハチをパン屋で知り合いのソウセイに1度預けてからルーカスを抱き抱えてナツキは自宅に帰ってきた。
玄関を開けるとロビンは仁王立ちをして
「一体どうしてこうなった!!」
私の胸ぐらを掴んで怒鳴りちらした。
ルーカスは顔色が酷く、今にも吐きそうな顔をしている。
そんな状態になるまで何もしなかった事に対してロビンは怒っているようだが……
「今はそんな事を言っている場合じゃない」
ルーカスを抱えているため掴まれた腕を振りほどくことが出来ないので言葉で訴え、ロビンも納得したのでこれ以上の面倒はなかった。
玄関を土足で上がってからルーカスをリビングのソファに寝かせ、ロビンと2人で準備を始める。
ロビンはリビングにある飲み終えたグラスコップ、観葉植物として置かていたサボテン、これからのカウンセリングに使わないであろう不要物を片っ端から片付けはじめた。
ナツキは2回へ上がった目の前にあるドアを開ける。
物置部屋へ行くと真っ先に目に映った「レモングラスの精油」と付箋のついたアロマ瓶を手にし、猫型の加湿器も持って一階に降りる。
リビングでロビンソンはすでに準備を終えていて覚悟に染まった目の色をして私の方へ振り返った。
ルーカスは昨日、夕食を済ませた時の椅子に座らされ、うつむいて黙り込んでいる。
水の入った加湿器タンクにアロマオイルを一滴、二滴おとし、電源を入れ深呼吸をする。
再度、ルーカスが病にかかった理由を検討し、彼がそれに打ち勝つための方法を考察する。
とはいっても、最初から考えていたので時間はかからないわけだが…
心を強く保つ努力を続けた彼の意志に、今からその心に土足で踏み込む覚悟を決めて…
「じゃぁ…始めようか…」
今、焼け落ちた心象に足を伸ばす。
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「さて、ルーカス…起きてるかい?」
何処からか声が聞こえる。
さっきまで何も聞こえていなかったのに、突然聞こえ始めた騒音がルーカスにとって嫌悪に感じた。
いったい誰がこんなにうるさくしているんだ。
まぁ、返事なんてしなくてもいいんだけど…と男の声が再び響く。
「話を進めるとして、君の病気である喪失症…何かを失う事を認め、抗うことをやめた結果…その損傷があまりにも大きく、感情が欠如してしまう病の話をしようか」
男は訳の分からないことを騒ぎ始めた。
いや、騒いでいるわけではない。
そんなに大きな声でもないのに耳の壁を無視して鋭く鼓膜へ入ってくる。
耳の奥まで届く声だ。
「君はその結果、楽しみと喜びを失った。もしかしたらもっと失っているかもしれないけれど…」
バスケでレイアップシュートを決めたときもガッツポーズしてたのに顔は喜んでなかったし、そもそもバスケがうまくなければわざわざバスケをしに公園に行かないし、結構うまいのに純粋にレイアップを決めただけでそんなに喜ぶものだろうか。
と付け加えて響いた。
すこししてから「普通の子供みたいに見せるのがわざとらしかった。」と再び付け加えてきた。
…どうやら自分はいたるところでミスをしていたらしい。
少年はまず、そんなことを思った。
今まで外の世界で通じた笑顔や、子供らしさ、話し方がどうやらこの声の主には通用しなかったようだ。
恐らく自分の出来事を見返してみると普通うれしがるはずのところで、何かおかしなことをしているのだろう。
「まぁ、発症してから時間があんまり立ってないからほとんど気づかなかったんだけど…気づかなかった一番の理由は、君がいつもニコニコしていて表情が読みづらかったってのもあるけどね」
声の主は少年の思ってることを覗いているかのように言葉を返した。
「君は外だけでなくこの国でもそうすることで、異常のない普通の子どもを演じる事で一切の治療を受けず外に出ようとしてたみたいだからね」
どうやら自分がしようとしていることもばれていたらしい。
敗北だ。僕はよりにもよって全く会話をしていなかった彼に全てを見透かされていたようだ。
「さて、本題に戻ろうか…」
彼は仕切り直しのために1つ言葉を出し、話を戻した。
「君が何故、そんな病気にかかったのかについてだ。喪失病は私の中ではかなり多くの人がかかりやすい病気だが、君がそれにかかった理由を探すのがかなり難しかった。」
正直これで外したら無理かもしれない。
そうネガティブな言葉を付け加えて彼は続ける。
「君の弟か妹に家族からの愛を全て奪われたからだよね」
図書館に行く途中に出会った双子をとても怖い顔で見ていたようで、彼もその顔を見てからチラとその双子を見たらしい。
「確かにあの時羨ましいと思ったし憎ましいとも思っていた。
だが、僕は弟を恨んでなんかいない。」
少年は弱々しい声で呟く。
「確かに弟を恨んでいる訳では無い。だが君の弟は君の両親や、親族までに好かれやすい才能を持っていて、君が貰えるはずの愛情まで彼は吸い取ってしまったんだと思う。」
彼の発言はあくまで推測の話だったが、思い当たる節が鮮明に見えていた。
あぁ、なるほど…親だけでない、自分も彼に無意識に愛情を与えていたのだ。
モンブランケーキに関しても本当は食べた事は無い、弟がその上にある栗が欲しいと言ったので、僕は嫌いだから上げるよと上げていたのを思い出した。
「無言ということは会ってるって事かな?」
彼の言葉に僕は小さく頷くと、クスリと笑った。
「あってるようで安心したよ……これでやっと君とお話することが出来るね」
そう、彼の言葉を聞いて俯いた顔を上げると、そこには先程の声の主……ナツキが僕の目の前に立っていた。
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「ナツキ……さん……」
口内が乾燥してかすれた声が部屋中に響いた。
どうしてここに彼がいるんだ……だってここは僕だけの最後のテリトリーゾーンである心の中だ。
この焼け果てた何も無い暗闇の部屋に僕いがいの人間がいていい訳が無い。
それを彼は自らの足で易易と入ってきたという訳だが……
一体どうやって……
「おー、面白い顔してんな、いつも笑顔しか見せてなかったお前だが、あの双子を見る時と偉い人のクソガキを殴った時以来の凄い顔してるぞ」
ナツキさんは普段とは違う紫色の目の色をしている様で薄暗いこの部屋では輝いて見えた。
「どうやって心の中まで入って直接会話することが出来るかってのは企業秘密だけど……現実の方のルーカスは話しかけても何も言わないから仕方なく。ね」
いつもと違う雰囲気を漂わせて危険を煽っている用に動いているのか、自然と心の奥でズキズキと変な痛みが走る。
「さて、これ使うと患者に悪影響を与える可能性があるから素早く終わらせるね」
ナツキさんはコツコツと靴の音を鳴らして僕に近づいてくる。
「来ないで!!」
嫌悪感からか突如、口に出た言葉と同時に数枚の壁が現れる。
心の中にいるのだから自分の思うように物を出現さしたり誰かを壊したりする事も出来る。
そんな中でルーカスが選んだ解決策が壁、ナツキを撃退させる。傷付ける為に使うのではなく、彼との距離を置いて精神を保とうとする姿勢は、彼が今までもしてきた無理だと思った人と距離を置くという原始的な発送から来たものだと、ナツキは考えていた。
「やっぱり優しいな、ルーカスは」
優しい声で彼は声をかける。
「この壁からでもいい、話をしよう」
「もう嫌です!気がついたらこの薄暗い所にいて、誰もいないから1人で心を休めていた時なのにナツキさんが入ってきて」
ルーカスは今までにないくらい声を大きくして叫ぶ。
文字通り心の叫びを聞いているらしい
「そもそも弟が生まれてから確かに皆、僕より弟を可愛がるようになって……」
「だけどルーカスはその弟と違って自分から愛を貰おうとしなかったんだろ?」
ルーカスの嘆きにナツキは問うた。
その言葉にルーカスも面をくらった様な顔をして言葉が詰まった。
「私は全てルーカスが悪いとは思っていないし、今回に関して敢えて人の性にするならば弟が有り得ないほどるルーカスから愛情を奪ってしまった。という事になるけれど人の性にするのは正直、精神の健康的によろしくない」
その人を恨み続ける事にもなるしね、と付け加えて……
「でもルーカスは君の弟見たいに自分をよく見せている訳では無いし一応、親から愛を受けてなかったらモンブランケーキなんて持ってこないと思うし」
ルーカスは黙り込んでいる。
なんとなくだが、彼も気づいているようで少し目を潤い始めた。
「私は一人っ子だから上手く言えないけどさ、お前はしっかりしてると思うし、親もお前がしっかりしてるから今1番、手のかかってる弟よ世話をしているんだと思うよ」
その言葉だけでもなんだか楽になった気がした。
自分でもよくわからない。ただなんだか心の奥に埋まっていた沼みたいに汚い液体がスッ─と消えた感じがした。
「さて、私からのお話はこれでお終いだ。後は外の方で彼がなんか言うんじゃないかな」
壁の向こうにいたナツキさんの気配は既に退席していた。
小さい嘆息を漏らし、顔をパンパンと両手で叩いた。
「帰ろ」
無意識に声が漏れた。
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「やっと目が覚めたか」
夜の月がうっとおしく射し込み、部屋を覆っていた。
目が覚めた僕の目の前にはロビンさん……いや、ロビンおじさんがそこにいた。
「ありがとうございました、ロビンさん。」
まず礼を口にするとロビンは「よしてくれ、俺は何もしてない」と疲れた声を出した。
「ナツキさん達は……」
「温泉だよ、もう8時だ。俺達も後で行こう」
不意に、静かになった部屋にロビンはポツリポツリと言葉を出す。
「俺もお前と同じで、1度だけだが喪失病にかかってたんだ。」
しかも同じような理由で、と付け加える。
「だから久しぶりに親戚皆で集合した時、お前が喪失病にかかっている事をなんとなくだから感じた見たいで、それは当たってた。」
「正直、自分が心の病にかかってるなんて知らなかったし、認めたくなかったんですけどね」
ルーカスはそこで初めて言葉を返した。
「でも、終わってみるとなんだかスッキリしました。」
それからナツキ達が帰ってくるまで2人の男達は他愛もない会話をして待ち続けた。