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5:この国を記憶処理無しで出た人はストレスに耐えきれず何が起こるか分からないため、この国の記憶は消させなければならない

先に謝っておくことがあります。

投稿スピードが遅くなったことです。

少し前に法事でバタバタしていまして小説を投稿出来ませんでした。


今後も、急なことがない限りペースは落とさないように努力をしていきます。



一人でいることには慣れていました。

僕があの家で愛されていないのも知っていました。

本当は僕を愛していないのは知っていました。


僕は誰からも好かれる為に努力をしました。

親から貰えないと思った愛を、誰かから貰えるように努力しました。

仕方ない事かもしれなかった。ですが僕は待つことが出来ず、親から愛を望むことを捨てました。




###


ロビンに電話をかけ、少し話をした後に、私たちの代わりに食材を買いに行かせ、ルーカスが公園に行きたいというので、急いで公園がある図書館方面へと戻ることになった。

今はルーカスとハチと一緒に3人で歩いている途中なのだが、私はルーカスと会話することもなくルーカスはハチと絶える事無く会話をしている。


先の道を引き返して歩いているだけなので二人ともキョロキョロ見ることは無く、会話を楽しんでいる。




さて、私の脳内では既にルーカスが何が理由で発達途中の心の病をが出来たのか……大まかにはわかった。


だが、彼がその中の何に心を痛めたのか。よく分かっていないのだ。




銭湯でルーカスの体を見た時、体には人から付けられた傷跡らしき物は見当たらなかった。


父親からモンブランケーキをいただいたりと、割かし暖かそうな家系にいるはずだし、私の記憶が正しければスウェーデンにモンブランケーキは疎か、栗を食べる習慣は無いはずだ。




つまり彼はそこそこ裕福な家、もしくはモンブランケーキを渡した父が、外の国と関わりがある仕事なのではないだろうか……

あまり詳しい事は知らないので確証が持てないが……



そんなことはどうでもいい、肝心なのはルーカスが両親の話をしようとすると。必ず暗い面影が臭う事だ。


あれは誰が見ても、確実に分かることだろう。


しかし問題は、その詳細が分からない……もっと言うと、彼は親からの虐待も受けておらず、少なくとも親から愛情は与えられている筈だ。



だが、彼は愛に飢えている。



「ナツキさん?」

ルーカスが私の方を見上げて心配そうな顔をしている。

その後、私がルーカスを握る力が強くなっているきがして弱めた。


「大丈夫。考え事をしていると全身に力が入ってしまうんだ。」

何となくその場しのぎの嘘をつくと、「ナツキさんは色んなことを考えますね」と、ルーカスが静かに微笑む。


「ところでルーカス、公園に行きたいと聞いて、言おうか迷っていたんだが、この国は危険性を招く遊戯は作られないようにされているんだ。」


「そうなんですか……でも、僕はバスケをしたいので多分大丈夫なはずです」


まぁバスケはあまり危険性が無いと思うし、ゴール位はあるだろう。


図書館の方面へ歩いていく女性と仲良く手を繋ぐ姉妹をチラと見送って、図書館のすぐ近くの公園へ歩いていく。


ルーカスは元気を作っている子供だ。

あまりに不自然な子供だと、私は思う。

ロビンやハチは気づいているか分からないが、普通の子供がこの国に来るのならまず、笑顔でいられるはずがない。

色んな不安があるだろう。


家族の心配、学校の心配、自分の心配……


私が子供の時、この国への知識が全く無い状態で入国させられたのなら、まず場所が分からず戸惑うし、知らない大人達と共に過ごすと言うだけでストレスフルになるだろう。


だが、彼は1日目からそんな事は無かった。

自分の運命に受け入れている人のように、自分の人生を捨てた人のように、諦めた人間に見えていた。


異常なのだこの子は……


ハチからの思いがけない質問をくらって戸惑うルーカスを見つめて、私は思った。




###




早速、ルーカスはドリブルをして、ジグザグとステップを踏む。

ボールを両手で取り、1……2歩出したところで右足を軸に垂直跳び。


綺麗なレイアップシュートを入れる。


「──」

息を小さく吐いてガッツポーズを見せる。


ロビンには聞いたが地元のリトルチームの選手の中でもかなりうまいらしいな…

なんで入ってないんだ…リトルチーム…

他人事の様に私はルーカスを眺めたのちに、ハチを見る。

ハチはそれに気にすることなく本を静かに読んでいる。

近くに植えられていた大木にもたれ掛かり、木陰からチリチリと光る日光が所々、ページに光が射し込む。



「その本……面白い?」

ナツキは少し呆れ気味にハチに尋ねる。

というのも、彼女が読んでいる本は『看護医の為の精神医療』という看護医になるための教科書で、普通の人間が必要な本では無い。


「いや、本当は別の本が読みたかったんだが借りるのを忘れてきてしまった。この本によると看護医は何があろうと患者の近くにいないと行けないらしい、だからこれを暇つぶし程度に読むことにした。これはこれで面白いものだな」


ハチは頭をよく見せるためか本に書かれている事をしたり顔で説明してくる。

一応だけど、私……その道のプロだからね?


おかしなものを見るような感じがしたが、気にすることはやめて、ハチと話をしておくべきだと思い質問を始めた。

「ハチは本を読むことが好きなのか?」


「好きなわけでは無いが、知識は力だ。必ず学んだものは後で役に立つ」

確かにその通りだ。

解き方が分からない状態で数式を解くより、解き方が分かっている状態で数式を解く方が遥かに速いだろうし、正解率も違うだろう。


「なるほど、ハチは学ぶ事が好きなのか」

少しクスクスと笑いを漏らして解釈をした仕草を魅せる。


ハチは「そういう事だな」と便乗した後、姉には負けたくない、と付け加える。



「へー……姉がいるのか」


軽く、そう聞くと頷き

「絶対に勝ちたい」

闘志を燃やす目をしていた。


私は「仲が悪いの?」と聞くと彼女は「そういった訳では無い」と答えた。


「姉とはあまり接点がないんだ。ただ、姉はたぶん私の事を嫌っているだろうよ……」


「ふーん……勝ちたいってバスケ?ゲーム?」


何となくだが、触れてはいけないような気がしたので話題を避け、別の質問をしてみる。


「ゲームみたいなものだな、目には見えないけど必ず姉は私の上にいると分かるのだから」


具体名を外してきた、ということは恐らく人には言えない物なのだろう。

質問は辞めハチがどれくらい本を読んだかページを見てみると、10数ページも読んでいた。


私が話してる間にもこの少女は本を読んでいるが、その間、目を離したルーカスは何をしているのだろう。と、ふと気になり始めバスケットゴールの方を見る。


………どうやら、貴族のボンボン見たいな少年とバスケで勝負?いや、喧嘩?してるみたいだ。


「お前みたいなクソ野郎に負けるわけないだろ!」

少年はルーカスに貴族らしからぬ暴言を吐いてボールを持つ。


「例え、貴方がこの国の偉い人の息子だからってボクは許しませんから」


ルーカスが初めて見せた敵意のような目付きは相手を噛み殺す様に鋭くさせている。

貴族の少年はボールをルーカスの顔面目掛けて投げる。

だが、ルーカスはそれをキャッチすると、ボールを投げ捨て一気に少年に詰め寄られた。

てっきりボールを投げ返してくると思ったのか、対応に遅れた少年は押し倒され、一方的に殴られていた。


「やめろ!ふざけんな、おい、看護医!!やめさせろ!、俺は偉いんだぞ!」


悪いな少年……今、看護医(ロビン)はいないんだ。

これでストレス発散の道具になってくれたら助かる。

どうせ、彼は患者でもなく看護医でもなく、治療以外の目的でやってきた偉い人の息子なんだから、どうなっても私は知らない

しかしまぁ、やはりルーカスと違って無理して元気を出してる感じでは無い。


だが、流石にやりすぎでとんでもない事になると困るので、止めに入ると「お前、遅せえんだよ!こんな親から捨てられた奴、気持ち悪いんだよ!」

と、私に怒りを覚えさせた。


ルーカスをチラと見る。憤怒の赤色と絶望といった暗い色が合わせ混ざった様な顔色をして少年を見ている。


………


「まぁ、落ち着いて下さい。今回は私の監督ミスでした。」

私は落ち着いた口調でニコリと、静かに、静かに少年に詰め寄る


「ナツキさん!!」

ルーカスが嘆いた様な声で私を呼ぶ。

少年はフンと鼻を鳴らし、勝ち誇ったような顔をする。


「ですが、あなたもあなたです。言葉を選ばず、自分が偉いと勘違いして暴言吐いて……恥を知ってください。こんなことを父上が知りましたら、ルーカスに言った言葉が帰ってきて『親に捨てられてしまいますよ?』」


その言葉を聞いてルーカスにニヤケ顔を見せつけていた少年は少し色を失い、「そんな嘘には引っ掛けらないぞ!」

と騒がしく声を出す。


「何を言っているんです?嘘ではないですよ……あなたはお父さんの大事な跡継ぎですが、そんな跡継ぎが、見ず知らずの少年にこの国でけっしてやっていけないようなことをした。親がそれを聞けばどう思うでしょうね……あなたは最悪、親の子供じゃなくなるかもしれませんね」


自分で何を言っているのか分からなかったが、多分取り返しのつかなさそうな事を言っていることはわかった。

みるみる汚らしい顔を向けた少年は、走り去っていったので、ルーカスを見る。


まだ怯えているというか、痙攣を起こして動けずじまいになっている。


「大丈夫、大丈夫だから」

私は冷静にルーカスの前にしゃがみ込み、ぽんぽんと肩を叩く。

自力呼吸をするほど苦しそうにルーカスの目から涙が溢れる。


無理していた反動だろう。

ルーカスはさきの少年に、トドメを刺されて崩壊した。

これはそろそろ急がないと完全に病魔に犯されてしまうな……


ハチの方へ顔を向けるとハチは既にこちらへ向かってきているのを確認し、ルーカスをだき抱える。


ほとんどのピースは揃った。


()()()()()()()()()()()()()()()だ。


私は決意を固め、腕の中でもがき苦しみ続ける少年を、眺めていた。

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