3:看護医の副業は認められているがその副業から給料は割与えられない
家に帰る頃には既に、日は落ちていて、海風が吹き抜けた窓からリビングまで通る。
窓に下げている風鈴が「チリンチリン」と奏でる。
「ロビンソンさんとルーカス君はとても仲が良さそうだけど、知り合いなの?」
ハチはリビングで、ジェントルマン風の、茶髪の男性「ロビンソン」と金髪の少年「ルーカス」と食卓で雑談を戯れ、その間に私は、キッチンを使って今日の夕食であるサラダうどんを4人分作っている。
事のきっかけはとても簡単で、昔、一緒の看護師医学校で学んだロビンソンにルーカスの治療をして欲しいとお願いされた。
正直、ロビンソンと今はそれほど仲が良いわけでは無い。
というかロビンソンが一方的に私を嫌っているわけなのだが…まぁ自分の利益の為にもやっておくかと昔の友人であったロビンからの依頼を受けることにした。
それからはなんだか、暖かいというか、家の雰囲気が明るい感じになった。
元々ルーカスという少年がそういった話題を引き出すことがうまい少年のようで、7歳にしては大人ともそこなく会話をこなせる事には素直に驚いた。
「ロビンソンなんて言いづらいでしょうからロビンでいいですよ」
髭を遊ばしている、ロビンソンという男は、堅苦しい名前で呼ばれる事より、ロビンと呼ばれる方がいいと言う。
「でもロビンさん、ナツキさんがロビンと呼んだ時、顔を赤らめて怒ってましたよね?」
ルーカスがロビンの痛いところを無意識につついた。
私は何も聞かなかったことにして作業を続けるがキッチンとリビングがくっついている為、ロビンソン達の会話が、私に聞こえているのも理解しているだろう…だから今、ロビンソンは、そのルーカスの言葉にバツが悪い顔をし、ルーカスもそれに気づいて失敗したという顔をしている。
「……ナツキとは学生時代の仲です。ただ彼は自分の利益を優先することが多かったので、学生時代もその後も、ひどい目にあわされましたね」
怒りと呆れが混じったような声色でナツキに向けてはなしていた。
そんなに怒るなよロビンソン……ただ1回だけ、直感で(やばいな)と思ったときに、その場にいたお前を身代わりにしただけじゃないか……
ナツキは口に出そうとしたが、今考えるとあの時の出来事はどう考えても自分が悪いし、言ったところで火に油……ロビンソンの怒りが激情し、この平和な雰囲気が一瞬にして戦場と化し、ロビンソン怒りのマシンガントークで、ナツキを抵抗することなく虐殺される未来を見たため、口をきつく締めた。
そして、ロビンソンがおとなしくなるまで、完成したサラダうどんをリビングに持っていく事はやめておくことにした。
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さて、本題に入ることになる。
帰り道、私とハチはシルクハッチが特徴のジェントルマンのような男性「ロビンソン」と、スウェーデン風の金髪少年「ルーカス」が待ち構えていた。
仲が悪いのに、意外にもロビンソンは彼の患者であるルーカスの治療を手伝って欲しいと頼みに来たのだ。
「まぁハチの治療に本腰を入れるのはもう少し先だし、何ヶ月か鈍ってる腕を復活させる為にも引き受けてやろう」
と、上から目線でロビンソンの依頼を受け。
ハチとの治療生活初日から賑やかな雰囲気になっている。
家の中でハチと私の2人だけでも、喋る話題も振ることは出来ず、静かな生活を送ることになってしまう。それは私の方針には向いていない、必ず誰かが患者にストレスを与えない程度の話をして、自分の心の闇を引きずり落とせるようにしてやらないといけない。
だからその為にもこの2人は必要だ。
今の私は明らかに腕が落ちている。彼女に心の闇があるとは思えない…ただの人嫌いの少女にしか見えないなんて、鈍りすぎている。
だから2人にはその代行をして貰う。ついでにハチがルーカスの闇を見つけ出してくれれば楽なんだが……
……ナツキは1人、人の悪い計画を立てていた。
ロビンソンはその人の悪そうな顔を横で見て、明らかに嫌悪、軽蔑の様な目をしていたが、ナツキは気にすることはなく深く考え込んでいた。
「箸、というものを使ったことがありませんが、とても難しい物なのですね」
普段フォークやスプーンしか使ってないのか、ルーカスがうどんを食べようとするとうどんの麺がツルッと箸から滑り込み、お椀に戻る。
「ルーカスは箸を使えないのか?」
ハチは疑問に思ったのか、ルーカスに1つ尋ねた。
ロビンソンはその話を聞いて、勝手にキッチンへ上がる。
「いつも家ではステーキや、ミートボールと、ナイフやフォークをメインに使っていますので…あ、でも日本のスシと言うものは食べたことありますよ!アボカドとチリソースのスシがお気に入りでして……」
「チリソース?」
ワイワイとハチとルーカスは会話を始め、子供用の分け皿を持ってきたロビンソンもその会話に加わり始めた。
「え?日本ではチーズのスシもないのですか?じゃあサーモンは?」
……
「ハチさんはエビが苦手なんですか…僕もエビが苦手なんですよね……特にザリガニが………え?、そもそも食べない?」
ルーカスは見た目に似つかず、会話をするのが上手だ。
絶対に相手から、何かしらのツッコミが来るであろう言葉を、選んで話している様に感じた。
年齢的にもかなり健康的な体をしていて何かスポーツをやっているような肉付きをしている。
スポーツをやっているということはクラブか友人達と遊びでやっているかだが…
「ルーカス、ザリガニは私の国でも食べる事は無いんだが昔、アメリカに旅行をしに行って、バスケットボールの試合を見たあとにザリガニを食べたことはあるよ。」
私からの急な呼びかけにキョトンとした顔をルーカスはしていたが、すぐに笑顔になり
「バスケットボール、いいですね!ボクも学校の皆とやっています。ボクはクラブチームには入ってないですがクラブチームに入ってる僕の友達のウィリアムがとても上手で……」
私の欲しい答えを不自然なく、教えてくれるなんて……人の心覗かれる見たいな気分でなんだかスッキリしない。
とりあえず今のところ、彼はそこそこの友人がいる、彼くらいの子供が嘘をつく時は必ず大きなボロが出る。いつも笑っている彼は特にだ。
さて、この年頃で悩むことなんて友人関係以外で何がある?
考えれる事は限られている。
彼の会話を聞きながら何とかする事にしよう。
……ルーカスとの言葉のキャッチボールを放り出し、人差し指を曲げて第1関節と第2関節の間を噛み始める。
ルーカスはナツキからの会話が帰ってこなかった事に、変な顔をした後、考え事をしていると分かったので、別の話題を話し始めてた。
その後、私とルーカスは食事中に会話をすることは無く、私だけ皆より先にサラダうどんを食べ終えていた。
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ルーカスとハチを客人用の部屋に連れていき、眠らせてから私とロビンソンは2人で海風がよく入る見渡しのいい部屋にいた。
ソウセイから貰った麦ビール缶を手に取り、ほろ苦いが癖になる後味が引きずるような感覚をに喉に感じた。
「久しぶりに酒を飲んだな……」
「そもそもこの国は、酒を禁止しているはずなんだが?!」
ロビンソンは煩くナツキに口擊を与える。
「そういう真面目な所、昔から変わらないな。お前は」
疲れ始めた目を細めてさざ波の音に耳を向ける。
もうひとつ持ってきておいた酒を「まぁ、飲めよ」とロビンソンに手渡すが、ロビンソンは首を横に振った。
「正直な話、お前があの子を直せないとは、思えない。」
ナツキは窓に背を向け、呟く用に静かに、ロビンソンに訴えた。
「無理だ……俺にはあの子は癒せない。あの子が何を望んでいるかも分からないんだ。1日でも治せる治療だと聞いたし、普段の私なら出来たかもしれない…だが、出来ないんだ…1度、失敗してしまったあの時から失敗することを意識してしまって、もう無理なんだ……」
ロビンソンは私の目を見ることなく、ただポツリポツリと言葉を零す。
「いい事を教えてくれるよロビン。真面目すぎるお前は1度、失敗したらそれをずっと引きずるし、前に進めなくなる。たまには息抜きした方がいいぞ」
手始めにその手に持ってるそれでも飲んでみろ。と強要してみる
「息抜きか……」
ロビンは缶をしばらくずっと眺め続け、ステイオンタブに手を当て、ジュース缶特有の、開く音が部屋に小さく響く。
私の紫の目は彼がビールを飲む映像をしっかりと焼き残した。
さて、あとがき固定と成り果てた弟の話をしましょうか。
テストが帰ってきました。
なんてことは無い平均以上の点数でしたね。
100点はありませんし、あれほど威勢をあげてましたが半分から10位ほど下でした。
ノー勉ですけどね(白目)
まぁこれに懲りて勉強しろと母も言っており父はテスト週間中に何時間もSwitchやるなって言ってるのであんま怒ってなかったので私の頃とは大違いです