2:看護医になるためには最低でも精神医療資格がなければ看護医としての入国は許可されない。
「病原性心象郡」
世界で心の病が正式な病気として認められた理由の一つで、癌(末期)や心不全のような特定疾患に認定された。
1番の理由はこの病気は病原体がいることだ。
心の病なのにどうして?と思う人もいるが、いたのだから仕方ない。
更に性感染症のように特定の場合でしか、しないのだが、何かをスイッチにその病気は感染する。
現状、何も理解出来ていないのだから対処法がないという事で特定疾患になっている。
まだ何をしたら感染するのかも分かっていない病気を、わざわざこの国に管理させるというのは私としては気になる所であるが…
まぁ単純な理由だろう。
今まで「心の病なんて心が弱いだけ」とか「病原体がいないんだから病気じゃない」とか言ってた人達にいきなり
「病原体が現れました。しかも感染したら死にます」
なんて言ったとしたら彼らは血相を変えてその人物を隔離するだろう。
感染したくないからその人を殺してしまうかもしれない。
小学生にいたっては学校には1人か2人いる理由もなく嫌われている児童にぶつかっただけで「うわ、病原性心象郡に感染した!」とか騒いでるのが目に見える…反吐が出るほど気持ち悪いな。
久しぶりの仕事の前に私は薄暗い部屋の中でオフィスチェアに座ってデスクに置いてあるカルテを眺めて、片手にコーヒーの入ったマグカップを持って1人毒づいていた。
さて、明日からの患者だが…このカルテを見ると歳は17か…この年頃なら1度かかっててもおかしくないが、この病気にかかるとは運がなかったな。
少なくとも私は感染したくはないので一刻も早く彼女を国から追い出したい。
その為には完治させなければいけない…か、
ハハッ、笑ってしまうな。私が断れる立場なら速攻で断っていた。
いや、ホソカワも断る事が出来ない私だからわざわざこの患者にしたのか…何か悪い事をしただろうか…
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ナツキと名乗ったこの人物はかなり不思議だ。
白く濁った街の中でハチはすぐ隣に歩くべく歩幅を合わせてくれるナツキを監察する。
黒く染めた長い髪を後ろに縛り、女性のようにしてはいるが少し野太い声をしている。
赤色の薄生地パーカーの上に白衣を羽織い、青いジーパンにスニーカーといった白衣以外は庶民的な服装をしている。
眠そうな顔をしていて黒い目の下のクマが不健康を匂わせている。
こんなので看護医は勤まるのか?と不安に思う。
ただ彼からほのかに香る柑橘系の香り、私の人間嫌いも考慮してか、程よく人が少ない通りを通っているような気がする。
人が全くいない道を選ばれるとそれはそれで嫌な気分になるのでありがたくはある。
「そういえばハチは嫌いな物とかアレルギーとかそういう物はない?」
ふと、思い出したようにナツキは私に聞いてきた。
それを聞いてから少し考え、「特にあるわけではないが、敢えて言うならお酒は駄目だ。」
「…あぁ、この国はお酒飲めないから問題ないね」
ここは治療をする為の国なのだからね。とナツキは呟いた。
「よし、ここの店を行けば終わりかな」
ナツキが足を止めた店にはベーカリーショップだ。
チリンチリンと、喫茶店のような音を鳴らしてドアを開け焼きたてのパンの匂いを嗅ぐ。
初めて焼きたてのパンの匂いを嗅いだが、最初から分かるものだなと少し驚いていた。だがもっと驚くべきことはこの店、店の外装はヨーロッパ系というか…洋風の造りにしてあるのに扉を開けたらそこには和風と一言で表す事ができる。
年期の入って黒ずんだ木製の棚と和室が奥の方にあり、すぐ目の前にはパンを置いている。
この店が何をしたいか分からないが目の前にいる人間はナツキと違って一目で男と分かるので少し安心をした。
細目でパーマがかった茶髪の男は店と同じで袴を着ており何がしたいのか分からない。
「いらっしゃい…おや、約束を守ってくれたのか」
キツネ顔の男は執拗にナツキに絡み始め頭を揉みくじゃにする。
「髪の毛を触りすぎると店の商品に髪の毛が落ちるぞ」
冷静かつ遠回しにやめろと告げ、まぁそうだねとパン屋の主はナツキから手を離し私を見る。
「…新しい患者さん、随分と若そうだね…」
少し大人しくなり、戸棚から丸メガネを取り出してかける。
……………………しばらく無言の見つめ合いが続いた。男は表情を変えることなく私の目を見つめ、たった数秒かもしれなかったが私にはもっと長く感じていた。
「なるほどね、さて…まぁ大体のことは分かったので約束通りパンを買っていってくれ」
ふっと、顔を戻し軽快なステップを踏んで私から離れるとおぼんとトングを手に取りハチとナツキに一つづつ手渡す。
どう言った約束でパンを買うことになるかは分からないが、この国では患者が買うために必要なお金はないらしいので患者名義で買い物をすれば実質看護医もただなのでどうでもよかった。
「ささ、金は国が払うのだからさっさと選んじゃってね」
「ソウセイ…今日はパンだけではないからそれも準備しておいてくれ」
ナツキはため息混じりに「元々の目的はこれだったろ」と言葉をこぼした。
「はいよー。じゃあボクは奥の方にいるから、パンを買ってくれ」
ソウセイと呼ばれた男はそう言うと急いで奥の方に消えていった。
ではソウセイが帰ってくる前にパンを選んでしまおうとパンの内容を見てみる。
基本的に菓子パンが多く、メロンパンやケルキーのチョコパン、惣菜パンとされる焼きそばパン等もそこそこの量ではあるが…種類は豊富だ。
「あいつ変なやつに見えるし服装が神主みたいな着物をいつも着てるんだが、実際神社の仕事と掛け持ちで仕事しているんだって」
ナツキがパンをつかんで言った内容を聞いて(へー、そうなのか)と思いはしたが正直このソウセイと呼ばれた男がどういう男かは興味が無い。
ただ、この国にも神社はあるということは分かった。
意外と日本以外にもあるものだなと感じはしたが色んな国から患者が来ると聞く。文化のためにも教会はあるし神社もあるのだろう。
ただイスラム教は1日に何回か神に祈りをするらしいが、ここ何処か分からないのにどうやって祈るのかは気になる所であるな。
そうこうと恐らくは無駄なことを考えている間にナツキは次々とトングでパンを挟んでおぼんに運び、気づいた時にはおぼんいっぱいにクリームパンや袋詰めされた食パン、フランスパンなど…たくさんのパンをおぼんに溢れるばかりに乗せられていて、よく落ちないなと感心する。
私も何かパンを選ぶか…
トングをカチカチ閉じたり開いたりしてその場にあったメープルパンとあまり見ないパンを挟んでおぼんに乗せた。
「はい、準備終わったよー…あれ?、1個だけでいいのかい?」
ソウセイは戻ってくると袋に入ったたくさんの缶と薬品がたくさん入った袋の2つを持ってきた。
どうせナツキがたくさんパンを買っているし、私が1個しか買っていなくても問題は無いだろう。
「今は一つだけでいい」
久々に人と必要以上に関わった事からか薄々と疲れを感じていたが、家に帰りたいと思い始め、少し無愛想な返し方をしてしまっただろうか…
「お?、つまりまた来てくれるってことだね〜嬉しいな〜」
ソウセイは陽気に袋にパンを詰め始めてそれをナツキに全て手渡した。
それを確認してナツキは「暇だったらまた来てやるよ」と店をあとにした。
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さて、問題はここからなのだ。
ここまでは至って普通のこの国での日常を送っていた。
日が傾き始めて4時の鐘が何処からか鳴り響く。
私達は家の帰り道に1人の子供が待っており、毒づくように少し不機嫌そうなシルクハットの男と並んで私達の前に立ち塞がっていた。
この時期になるとテストが始まりますね。
私の弟は一、二週間前にテストがあったのですが彼はテストが始まる1日前までテストがあることを知らずニンテンドーSwitchでスプラ2をやっていましたね。
1日前に初めて知って猛勉強をし夕食も食べていませんでした。
テスト初日、母親がどうだった?と聞くと「うんー今1、理科は多分100点なんだけど」とちょっと訳の分からないことを言ってましたね。
多分どこの中学も一緒ですが点数を取らせるテストなんて誰も作らず平均を60位にさせるテストを作っています。
なんだこの生物って思いましたが来週テストが帰ってくるらしいので楽しみですね。