12:ヴァージンロードは日本でしか通じない。 ウェディングアイルという。
セイメイは目を細くして私を見つめて、その後にため息を吐い た。
「多分だけど、向こうの世界でも2週間はもつよ」
何この子?怪物?と冗談を混ぜながらハチを見る。
普通であればこの国から出る際に記憶の処理と、少しのストレスを与えて外に出す。
深海魚が急に地上に上げられると死ぬように、この国から何もなしに出たら死ぬ可能性があるとされているからだ。
ローラがそうだったように、私が病に犯されたように。
セイメイの占いのようなものはよく当たる。
ほかの人たちからしたら冗談や戯言のように見えるけれど、かなりの頻度で当たるようで、ホソカワは良く彼を使っていた。
ホソカワはあの後すぐに政府に捕まったらしい。
病原性心象郡を拡散させようとしたというのはテロ行為に近い。と言う人たちもいるようで、最悪死刑になるそうだ。
「あまり当たって欲しくない占いだよね」
セイメイはそう言いつつもニコニコと笑みを浮かべていた。
ホソカワがセイメイに占わせた死の予言は恐らく当たるのだろう……
あのホソカワの事だから、この死に方は満足しているのではないだろうか……
「それはそうとナツキ」
セイメイは私の耳元に手を当てて呟く。
「政府が君たちを探している。捕まったら多分とんでもないことになるよ」
「分かった。じゃあもうすぐ出発をするよ」
ナツキの言葉にハチは反応し、茶色に染めておいた髪をふわりふわりと揺らしてこちらに来る。
セイメイに隠してもらっていたスーパーカブに跨り。あの頃を思い出す。
ローラの事を思い出す。
「じゃあ、サヨナラだ。」
ナツキはセイメイに別れを告げる。
「うん。またね」
片手を振っていつも通り相も変わらないセイメイに少しの安心感を持ち、後ろにいるハチを確認する。
ワクワクした雰囲気と今までになく緊張も持っているように見えた。
エンジンの音が鳴り響く。
車体の振動を感じながら走り出したバイクは、いつもセイメイが掃除をきている神社へ向かわせる。
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神社を渡る橋まで来るとバイクを止める。
たくさんの橋をあらゆる方向に置くことでご利益があるとセイメイは言っていた。
実際この神社には77の橋をかけているそうで、無意味な場所に橋をかけているところもある。
無意味な橋というのは、本当は橋の下に通っているはずの水がなかったり、橋なのに「このはし渡るべからず」とか看板を立てていたりと、おかしな奴がいると噂されている。
問題はこの無意味な橋のひとつが橋なのに向こうに渡れない橋がある。
大きく真ん中が崩れており、とても渡れそうに無い橋がある。
向こう岸には特に何も無いのだが、この橋の下にはトンネルがある。
そのトンネルを通ると国の外へ出れてしまうのだ。
ローラが出る際に教えてくれた抜け道を再び使わせてもらうことにした。
トンネルの中はただの一本道でただ真っ暗だった。
道に迷う心配もないから安心だが、一向に向こうの光が見えないのは怖いところもある。
しっかりとしがみつくハチを感じどんな顔をしているのか気になるが、前だけを向いて走り続ける。
暗闇の時間はかなり長かったような気がするが終わってみるとそこまで時間は立っていなかったようで、太陽はまだ真上に登っている。
久しぶりに国から出たなんとも言えない感覚と、呼吸する度にちょっとした息苦しさを感じる。
山道にあるトンネルから抜け出したナツキ達は、目の前に広がる少し山頂が赤くなり始めた山を眺めて下っていった。
普段使われない獣道の坂ではあったが、落ち葉が地面に散らかりすぎていること以外は平らな道だった。
山を下り、近くのパーキングエリアに止まり私はハチに尋ねた。
「二週間弱ほど時間はあるけど、どうする?」
少し考えるしぐさを取ってハチは答えた。
「とりあえず目的地の近くまで行きたい」
「了解」
再びバイクを走らせて私たちは向かった。
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目的地であったに着いた。
まぁ、八宮という名前の通り彼女は日本出身なのだが「あの国」が日本に近い位置にあったことから、後は英語と賄賂を使って飛行機の席を取り、日本へ向かった。
日本に降りると彼女の余命は12日間となった。
まずは彼女の家に帰る。
実家のような安心感はあまりしない。と彼女は言った。
「むしろ、ナツキの家の方がゆったり出来る」
そりゃあ、あの国だからね。と微笑をこぼした私は、父親がいないのに家に上がっても良いのだろえかと尋ねた。
「まぁ、あの人はいつもいないから気にする必要はない。いつも一人だから一人増えても大丈夫だと思う。」
平然と言うが、ハチ位の歳で家に誰も居ず1人で暮らしているというのは辛いことだ。
家の中は散らかっていて、ゴミ屋敷に近い感じだった。
ナツキが寝込んでいた時に、ハチは食べ物を必要なだけ買って戻ってくる行動をしていたのが習慣づいていたものだと言うことを知る。
とりあえず座れる場所を確保するため床にちらばった物をどかして行き、残りの時間を何に使いたいかを聞いた。
ハチは「やり残した事をやれるだけ潰していこう」と答えた。
手始めにこの家の掃除をし、床に物が無い状態を作りゴミ袋に詰め込まれた空のビール缶やコンビニ弁当の箱等のゴミを分別して出した。
その後は行ってみたかった店に行ってみたり、普段食べないステーキを食べに行ったり、お札を燃やしてみたり……
できる限り近場で出来て可能な事を全て行っていき、11日が過ぎていった。
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ロシアから来た妹はハチと同じ位の身長で、白い髪の毛をしていて、赤い目をしていて白すぎる肌を隠していた。
髪型は違えど、何処と無く雰囲気は似ていたので、すぐに見つけることが出来た。
「久しぶり……」
妹はハチにどういった感情を持てばいいのか分からない感じだった。
彼女達は6歳の時に離婚により別けられた存在であることを聞いたナツキは、無理もない事だと思った。
ハチも出会ったけれど、特に話す内容も思いつかなかったようだった。
「もうすぐここに住むことになるの?」
ハチが世間話の流れで妹に聞いていき、妹が答えるだけという面接のようなコミュニケーションのとり方をしていた。
日本がどういう所か、とかロシアの話を聞く。
だが、彼女達はそれでもよかったらしく、かなりの時間を会話して洋服を買ってみたり、一緒にご飯を食べて一緒の時間を過ごした。
妹は「明日から住むところの確認とかで他に寄るところがある」と言って電車に乗って何処かに言ってしまった。
「これでやるべき事は全て終わったね。」
成し遂げた顔をしたハチは、ゆっくりと目をつぶる。
「このまま病気が進んでいくとして、私はどうやって死ぬと思う?」
少しの間目を瞑って私は答えた。
「考えてはみたけど、ハチがしぬのは想像ができないんだよね……今日で二週間を終えるのに今もピンピンしているし……」
ハチはその後、何も答える事は無く会話は終わる。
単純にナツキの解答がつまらなかったとかそういう理由ではないと、ナツキは思っていた。
あの時のハチは私の言葉に微笑んでいたのだから。
翌日、ハチは消えていた。
あさ目が覚めるとハチは何処にもいなかったのだ。
嫌な予感はしていた。
だけど、彼女が死にたいと思う場所は考えられなかった。
使かわれた痕跡のないバイクをみてから、遠いところにはいないはずだと考える。
だが、私の心配は無意味なもので、おにぎりと牛乳が入ったレジ袋を片手に近くのコンビニから帰ってきた彼女と家を出てすぐに見つけた。
「……心配した?」
ハチは私に問いかける。
心配したよと私は答えた。
家に帰って朝食をとり、一段落してから私はハチに昨日の事を聞く。
「昨日の質問の答えがようやくわかった気がする」
ハチは黙って私の言葉を聞いていた。
「もう限界が来てるのか?」
彼女の会話を聞いておかしいと思ったのが「あとどれくらいもつと思う?」と聞くはずだ。
彼女でなくても恐らくはそう聞くはず。
まだ生きれるかな。と言った趣旨の質問が来るはずなのに、どう死ぬかと聞くのは「もう自分は無理だ」と分かっているからではないだろうか……
彼女は何も答えずナツキの目を見ていた。
死ぬ間際の人のような優しい目をして見ていた。
「あとどれくらいもつと思う?」
私はハチに聞いてみた。
そこでようやくハチは口を開く。
「もう、きついかな……」
自分の限界を告白する。
「でも、まだ死にきれないよ」
彼女の人間らしいところをナツキは初めて見た気がした。
彼女の言ったその内容は、あまりにも少女の様で、年相応で、彼女の現年齢では難しい内容だったけれど。
私は彼女の手を取り、彼女の夢を叶えることを約束する。
「じゃあ、安心してまってるから」
彼女は眠り始めた。
どういう方法で死んだか分からないが死んだらしい。
医師は自然死と言っていたが、あの病の事だから何らかの自殺をさせたのだろう。
彼女の父親は、彼女が死んだことに対して気にしていないようだった。
狂っているとは思ったが、最低限の葬式を終えて桐箱を受け取り、私はバイクに乗せる。
あと二年、私が死ぬわけにはいかない。あの約束を果たすまでは……
これでこの作品は終わりとなります。
初めての処女作となったため、おかしな部分やキャラ崩壊があったかもしれません。
ぶっちゃけ話数的に、打ち切りマンガ並ですが……当初の目的は完了しました。
創作活動をするにあたって、最後までやり切らなければ意味がないと思っているため、私は満足です。
因みに余談ですが、ナツキはハチと共に外の世界に出たことでもう一度、心の病にかかってしまいました。
彼は今も精神をすり減らされ、約束の時を待っています。
私自身、こうやって自分のために約束を守ってくれる律儀な男性が好きなため、こういう形になってしまいました。
絞め方の異論は認める(実際あと四通りルートがあった。)