表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

第二夜 後

「彼とお手合わせ願えませんか」

開口一番にそんなことを言う私に、魔王は不意を突かれたようだ。

少しの沈黙の後、魔王は確かめるように聞き直してきた。

「彼で間違いないかい?」

傍らに立つ巨人を見る。

「はい」

何か考えた後に魔王は続ける。

「君は君で何か思うことがあるのだろうね、許可しよう。しかしここでは手狭だ」


魔王の言葉に従い、私達3人は城の庭へと移動した。

「ここなら遠慮することはない、思う存分に暴れてもらって構わない」


私は対峙している巨人を見る。

彼は普段と変わらぬ様子で、こちらに向かって進んできた。

普段と同じ、魔王に付き従う時となんら変わらぬ様子で歩き、私の前で止まった。

こうして正面から見上げると、改めてその巨躯には驚いてしまう。


先代の生み出した稀代のゴーレム、一体どのような戦い方をするのか。

一筋縄でいく相手ではないだろう、警戒を緩めずに相手を見つめる。


巨人は右腕を頭上高く振り上げる。

何を考えている?まさかそのまま叩きつけてくるとでも言うのだろうか。


次の瞬間、右腕は無造作に振り下ろされた。

予想を裏切るあまりにも単純な攻撃。

巨岩のような拳が私に迫る、まともに食らえばただでは済まないだろう。

が、どんなに速くとも真っ向からの力任せの攻撃など防ぐ手段はいくらでもある。

私は彼の攻撃を躱し、その拳は空を切る。

そこまでは私の想定通りの展開だった。

回避に専念すれば避けられない攻撃ではない、直撃さえ避ければ特に問題はないだろう。

そんな私の目論見は、彼の拳が空を切り地面に打ち付けられた時に脆くも崩れた。


まるで流星。

その拳は凄まじい衝撃と共に、地に大穴を穿つ。

想像を遥か上回る破壊力に、私は茫然とする。

その一瞬の隙を見逃さずに巨人から繰り出される第二撃。

動揺のあまり初動が遅れた私に第二撃を躱す時間はなかった。

咄嗟に魔力障壁を展開し、流星のような拳を受け止める。

かつて経験したことのない衝撃が体中を駆け巡った。

障壁はその一撃で音を立てて崩れてゆく。

障壁は一撃で破壊されるが本体への影響は少ない、攻撃は防げている。

吹き飛ばされそうになる体を必死に支え、体勢を立て直しながら己を無理やり鼓舞する。

仮初の自信で気を持ち直し、再び巨人へと立ち向かう。

しかし、体勢を立て直す際に巨人から目を離したことが致命的な失敗となった。


巨人が、いない。

私は目を疑った。

強力無比な二撃により、地に穴が穿たれ砂塵が周囲に舞い上がっている。

とは言え、あれ程の巨躯を見失うことなどあり得ない筈だった。

立て続けに繰り出された想像を超えた攻撃、勝負の最中に相手を見失うという失態を犯した私は、もはや完全に冷静さを失っていた。


砂塵がおさまり、私の背後に立つ巨人の影。

止めの一撃とばかりに両腕が振り下ろされる。

私はもはや逃げることも出来ず、眼前に迫る拳を受け止める為に全身全霊を注ぐ。

この攻撃を受け止めてもこちらの体力は尽きる、この勝負はもう終わったのだ。

そんなことを考えながら、次の瞬間に訪れるであろう衝撃に身構える。


両の拳が障壁に触れる刹那、巨人の腕は動きを止めた。

どういうことだ?思わず私は魔王を見る。


「まだ終わっていない」

その言葉と共に、私の体を強い衝撃が襲う。


巨人によって蹴り上げられる。

私は木の葉のように宙を舞った。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ