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風船  作者: 寿々 鱗
1/1

彼は

彼は、私の人生で一番大切な人でした。辛くて、泣きたい時もずっとそばにいてくれて。

こんなに幸せで良いのかってくらい、好きで、甘えていたくて。私は、彼についつい甘え過ぎてしまったのでしょうか。あの時の私が、もし目の前に現れたら、

「我慢しなさい。」

と、強く言い聞かせてやりますよ。彼がどんなに大切だったか。必要だったか。また、私がどれだけ彼を好きだったのかを。


▲▽▲▽▲▽▲▽


朱音あかね

彼はタンタンと、音をたてて走ってくる。私のもとへ。私の名前を呼びながら。

「寒志郎。時間かかるって言ってたのに、思ったより早かったわね。」

彼、寒志郎かんしろうと付き合い始めたのは、大学1年生の時でした。優しくて、そこそこかっこよかった寒志郎は、きっとモテていたと思います。そんな寒志郎と付き合えた私は、運が良かったのでしょう。

「ああ。朱音に早く会いたかったから」

「ふーん」

寒志郎は、よくこんなこっ恥ずかしいことを言うのです。だから私はいつも、照れながら言葉を返すしか選択肢はありませんでした。

「リボン可愛いね。似合ってるよ」

とか、

「今日も好きだよ」

とか、聞いてるこっちが恥ずかしくて、照れてしまうことをいつも言うので、わざと言ってるんじゃないかと疑うほどでした。

「もうこっちの暮らしには慣れた?」

「まだ全然。寒くてたまんない」

この時、私は沖縄から内地の短大に通っていたため、寒さには全然知識が無く、とても苦労していたのです。ですが、寒志郎がいろいろと寒さ対策など教えてくれたおかげで、少しはこっちの暮らしを知れました。今思えば、寒志郎にはいろいろと教えてもらって、本当に感謝しています。そのたびに、彼は私が好きなんだと感じることができ、辛いことがあっても頑張ることができたのです。

「あーすごい夕焼け。綺麗。」

「そうだね。綺麗な色をしているね」

「すごいなー」

寒志郎と歩く帰り道は、いつも愛おしくて、一歩一歩を写真に撮りたいくらいでした。

「寒志郎、明日は何時に会う?」

ふわふわ、ふわふわ。気持ちは上がっていく。風船みたいに、破裂しないように。高く、高く。

私が彼を嫌いになるまで、ずっと上がり続ける。ふわふわふわふわ。

君を思う風船が、ずっと上がりますように。






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