物語の始まり(2)
空あおはという、突然現れた転校生に戸惑い、俺は『相談部』という未だ得体の知れない部活に入った。
とりあえず、空が「相談室に来い。この野郎」と言ったので(実際はそんなこと言ってないけどね)、俺は放課後行った。
相談室は、東館の四階の一番端にある、存在感の無い教室だ。
こんな所に来る人なんて果たしているのかどうか分からないが、俺はさほど違和感を感じず、中に入った。
既に、空と幸がいた。
「入ってくれたんですね。健示君」
「健示?昨日言ってたことは嘘か?」
「お前もだろうが。俺はお前が暴走しないように、監視役として入っただけだ」
「俺は動物じゃな」
「そんなことよりです」
ツッコミを遮られ、幸はやや不満そうに空を見る。あ、あれは危ないやつだ。
「幸。暴走はやめろ」
「健示ってどこまで俺を信じてる?」
「え?片時も信じたことなんてなかったぞ」
「俺達友達だよね?」
「ホモ達?お前………とうとう?」
「上手いこと言ったつもりか!」
「お二人さんいいですか?」
空に半ば怒られた。と言っても全然怖くないんだけどね。
「この部活もいよいよスタートです…………と行きたいんですが」
「ん?なんかあるのか?」
「実は………あと二人足りないんですよ」
………あぁ。つまり「お前らパッとしない同士なんでもいいから連れてこいよ」的な事か………。
「断る」
「えぇ?私なんにも言ってませんよ?」
「あれだろ?手伝えだろ?」
「まぁそうですけど………」
「だったら俺は嫌だ。人集めるのは苦手なんだよ」
第一、頼めるやつが俺の場合、一人しかいない。
まぁ、幸の場合、いけるだろ。
「なぁ幸?お前ならいけるだろ?」
「えっ?あ、あぁ……そうだな……。」
何その動揺。大丈夫だろ?
「という事だ。空。人数は大丈夫だ。顧問はどうせ谷さんがやってくれるよ」
「え?そうなんですか?」
「俺は分かるんだよ。谷さんそんな人だから」
ですよね?谷さん?
─────────────────────────────────────
「っくしゅん!誰か噂してる……?」
谷さんはクシャミをした!
─────────────────────────────────────
「もうこれでいいだろ」
「え?帰るんですか?」
「あぁ。今日用事があるし。幸。頑張ってアイツ呼べよ」
「えぇ……」
自身なさげだな。まぁ大丈夫だろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「やっべぇなぁ………」
翌日、三枝幸は、昼だというのに、屋上で一人疲れるように座っていた。
幸は、昨日、時ノ森健示にいわれ、ある人を呼んでいた。
幸にとっては、少し苦手な部類に入るかもしれない。
「何の用?」
「うおっ!?き、来てたのか……」
いつの間にか、彼女は来ていた。幸は、そちらの方へと目を向ける。
「やぁ楓。久しぶりだね……」
「本当?五年ぶり?」
「ん?三日の間違いだろ?」
「三日」で「久しぶり」は飛躍しすぎたが、今日も、雪柳楓は凛と佇んでいた。
「『相談部』に入ってくれ?」
「あぁ。人数不足で今危機に陥ってる。何とか入ってくれないかな?」
「別にいいわよ」
あまりの即決に幸は少し戸惑った。
「いいのか?ホントに?」
「ええ。何か悪い?」
「い、いや?全然?ただ、いつもはすぐ断るのに、おかしいなって」
「別に?普通よ。幸が変態で今の私も身体の危機を覚えてるのよ?」
「俺は変態じゃないよ?」
楓と幸は、小さい頃からの幼なじみであり、健示より、関係は深い。
楓は、こんな感じだが、見た目は美人なので、よく男子から、告白を受けたり、他の女子生徒から、嫉妬や、陰口を言われたりした。
彼女なりにも、『相談部』というのは、一つの身を潜める憩いの場かもしれない。
幸は、鈍感な方なので、それには一切気づいてないが。
「んじゃ、今日、相談室に」
「分かった。来れたら来る」
そう言い残して、楓は颯爽と去っていった。
「なんか変なやつだな……」(←自分自身)
─────────────────────────────────────
「はぁ………はぁ………」
何故か、雪柳楓は、胸を抑え、息を切らしていた。
長い髪で、顔の表情はよく見えないが、楓の頬は、赤く染まっていた。
「おかしい………何でだろう……」
さっきはバレないように、我慢したが、幸を見ると、恥ずかしく感じる。
分かる。自分は──恋をしてるんだって。
─────────────────────────────────────
「おお、幸。やれば出来るじゃないか」
「俺子供じゃないしさぁ………」
いやまさか。幸もすごいと思った。部員が一人増えていた。こっちも手は打ったのだが………。大丈夫なようだ。俺は本を漁る雪柳楓に声をかけた。
「よう、雪柳。来てくれたのか」
「ええ。幸の監視役としてね」
「だから俺はそんなやつじゃな」
割愛
彼女に関しては、幸の幼なじみとして、多少なりとも、話は通じる。ただ、雪柳は、幸のことを恐らく好きなんだなということは分かっている。
「これであと一人……健示は何もしないね」
「いいや?多分くるよ」
その時、教室のドアがゆっくり開いた。来たか。
「よぉ。久しぶりだな。ちゃんと来るんだな」
「僕だって約束は守るよ?クレープ、頼むよ?」
「相変わらず甘党なこと」
俺は、そいつと、楽しそうに話した。
……ん?お前らどうした?なんで俺を見る?
あ、そうか。知らないのか。
「健示。誰?」
「こいつは俺が小学生のころ、世話になってな。俺がこっちに転校してきた時、別れたんだけど、こいつもこっちきたんだよ。紹介する。古木誠だよ」
「よろしく。僕は基本、大人しいからね。よろしく〜」
「おぉ………」
もしかしたら幸とは合わないかもな。
「古木は、やっぱり変わってないな。その不敵な笑顔」
「健示君も。相変わらずの暗い性格」
「うるさい」
俺はこれでいいんだよ。
「これでやっと部活が出来ます!ありがとうございます!」
空は深く頭を下げた。嬉しそうだな。
俺は、今の現状に不満はない。だが、良くともない。
『青春』ってこんなものなのか?神様も随分とお遊びが好きだな。
俺は、四人を見た。………まぁいけるだろ
※イメージ
空さん「( ゜Д゜)∂゛チョットコイヤ」
初期設定は「三枝」ではなく「冴草」でした。
途中のあれは完全におふざけ




