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Ep.4 『南のエース』


光線、光線、光線!



照りつける太陽光線に、会場にすし詰めにされた男達はびっしょりと汗をかきながら、それでも尚ステージ上でマイク片手に踊り続ける女の子に声援を送り続けていた。



アイドル、サヤカちゃんのコンサート会場である。会場は超満員で、いつ熱中症に倒れる者が現れてもおかしくない状態だった。



しかしそんな熱中症の恐怖すらも燃やしてしまうくらいにファン達の熱気は凄まじかった。


なのでアイドルの隣に、突如としてゴッズ精鋭怪人の一人ガニニカが現れても、ファン達は暫くはアイドルに声援を送り続けていた。


しかしアイドルがガニニカに気付いて悲鳴を上げた途端、ファン達もこれはただ事ではないぞとやっと気付き、パニックになって逃げ惑った。


ガニニカはそんなファン達に、


「グハハハハ、お前達の好きなこの女の子はこの俺が切り刻んでしまうぞ! それでもいいのか、愚かな人間ども!」


と言い放ち、巨大なカニの如き両手のハサミをカシャカシャと閉じたり開いたりしてみせた。


アイドルは腰を抜かし、尻餅をついた状態で怯えきっていた。


ファン達は逃げることに必死で、既にアイドルがこの世に存在している事すら忘れていそうな雰囲気だった。


そんな中、アイドルを助けるべく、一人の戦士がステージ上に舞い降りた。



戦士はアイドルを庇うようにガニニカの前に立ち塞がり、黄色と白の色合いのメタリックで滑らかな線をしたデザインのプロテクターを纏い、それは顔を覆うマスクも同様でありながら一部には淡いブルーの配色もあり、かつ頭部のデザインは麦わら帽子を連想させる形をしており、また目の部分は中華まんのような楕円形をした瞳の無い黄色い月のような目が二つ光っているだけの鉄仮面ながらどこか涼しげな印象を与えるそんな姿をしっかりと敵に見せつけた。それから背後のアイドルをチラリと見やった。



ガニニカはハサミを向けると、「貴様は、まさか!」とやや狼狽の色を見せた。


すると、戦士の方は少し驚いたように首を傾けて、「え? 俺の事知ってるの?」と少しだけ嬉しそうに言った。


「貴様はあれだろう。カナラズサウス支部の……」


と言い、その後は相手の名前を忘れてしまったらしく、「えっと……」と言って思案するようにハサミを自分の顎に当てて考えだした。


戦士はウンウンと首を振り、「そうそう、カナラズサウス支部の」と言ってから、背後のアイドルをチラリと見て、


「サンファイタービーチだよ」


と名乗った。


ガニニカは、「ああ、そうだった、そうだった」とスッキリしたようにハサミをカシャカシャと動かした。


そして気を取り直したように、再び険しい様子を浮かべると、


「で、そのサンファイタービーチがこのガニニカ様に何の用だ!」


と鋭く言い放った。


「勿論、戦いに」


サンファイタービーチはそう返すと、またアイドルをチラリと見て、


「それと、か、彼女を、助けに」


とややつっかえ気味に言った。


ガニニカはその様子に鼻で笑った。


「ふん、まさか貴様もこのイベントの客だったとは言わんだろうな!」


「客じゃない」と言ってから、サンファイタービーチはまたアイドルをチラリと見て、「応援隊」と小さい声で言った。


ところがその時、サンファイタービーチとアイドルの視線がガッチリ合ってしまった。サンファイタービーチの全身は硬直し、頭の中が洗濯機のようにぐちゃぐちゃと回ってパニックになった。


「あ、あの、サ、サ、サヤカちゃんの、ずっと前から、お、お、応援、ファ、ファンで」


その隙をガニニカは見逃さなかった。


馬鹿だこいつは!


完全にアイドルに気を取られているヒーローの後頭部に向けてハサミを弾丸のように伸ばした。御目出度いその脳みその断面を太陽の下に晒さんばかりに真っ二つにしてやる。


はずだったのだが、気付いた時にはサンファイタービーチの専用武器である特殊トンファー、サンビーチトンファーの一撃を腹に叩き込まれていた。


何が起こったのか分からずにガニニカは腹部のトンファーを見下ろす。すると今度はもう一つのサンビーチトンファーの一撃が顔面に飛んできて、ガニニカは頭部の甲羅ごと側頭部を砕かれて後方に吹っ飛ばされた。



ガニニカは薄れゆく意識の中で、サンファイタービーチがアイドルに向かって「け、怪我、し、してないですか? あ、そ、そですか。よか、たです」とド緊張の声で言っているのを聞きながら、完全に意識を失って敗北した。




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