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Ep.2 『東のエース』


「ふふはははは、ヒーローともあろう者がその程度しか戦えんのか!」


屋内型球場のマウンド付近で、ゴッズ精鋭怪人の一人ガマジーリーが高らかに笑い、向かってくるカナラズの戦士達を次々と自慢の鎌を振ってなぎ倒していた。


マウンドに伏したカナラズの戦士達の全身を覆うプロテクターには亀裂が入り、火花を上げていた。そしてついに、最後の一人までもが、ガマジーリーの前に敗北してしまった。



「むはははは、ヒーローが聞いて呆れるわ! 所詮、正義は悪に勝てんのだ!」


ガマジーリーは目の前に倒れている幾人ものヒーロー達を見下ろしながら、自分の両腕に備わっている自慢の鎌をぶんぶん振って、空気を切り裂いた。



その時――。



三塁側ベンチから一人の戦士が飛び出して、ベンチの前に立った。


青と銀の光沢のあるプロテクターに、西洋の甲冑を連想させる鋼のマスクを被ったこの戦士こそ、カナラズのイースト支部に所属する最強の戦士『ザン』なのである。



マウンドに倒れている戦士達は、首だけを動かしてザンの姿を確認すると、「ザンさん……」と安堵の声を絞り出すように口にした。



ザンは腰から剣を抜くと、その切っ先をガマジーリーに向けた。


「ゴッズの怪人よ、まだ僕が残っているぞ!」


ザンは勇ましい声をガマジーリーに投げた。


ガマジーリーは鼻で笑った。


「ふん、貴様がイースト支部最強と言われる青剣士ザンか。声の感じからするとまだまだ小僧のようだな」


ガマジーリーは二つの鎌を合わせ、まるで刃を研ぐかのようにそれをこすり合わせて温度の無い音を鳴らした。


「まぁいい。イースト支部最強の男の首を取れば、俺の名も上がるというもの。かかってこい!」


ガマジーリーは腕を大きく開き、構えを取った。


ザンは地面を蹴り、土を削りながら敵へと向かって駆け出した。


目前まで迫った人間大の蟷螂のような怪人に、第一撃目の剣を振り下ろす。


ガマジーリーは左の鎌でそれを受け止めた。そして間髪を容れずに右の鎌を、ソフトボールのピッチャーのように下から振り上げた。


ザンは受け止められた剣を一瞬で左手に持ち替え、下方へずらすと相手の右鎌を刃で受け止めた。


ガマジーリーはまたも間髪を容れず、空いた左の鎌でザンの首元を狙った。


ザンは今度は頭を下げてそれを躱した。別にガマジーリーに謝りたいわけでも、お礼をしたいわけでもないのに頭を下げた形になったわけだがそんなことはどうでもいい。今、ガマジーリーの体の左側はがら空きになっている。


ザンは右の拳を振って相手の左わき腹辺りを殴った。ガマジーリーが一瞬だが痛みに動きを止める。


その一瞬を狙って、ザンは相手の懐へ身を預けた。


ガマジーリーの右鎌を受け止めていたザンの剣が、ザンの動きに合わせて、相手の鎌をスライドするように移動し、その切っ先は目の前の怪人の右胸を貫いた。


ガマジーリーが呻き声を上げた。しかしすぐさま、「おのれ」と言うと、両方の鎌を同時に振り下ろして、懐に入り込んでいるザンの体を切り裂こうとした。


しかしザンはすぐさま相手の体から剣を抜き、そのまま後方へ飛び退いて鎌をぎりぎりで躱した。


ガマジーリーは鎌を躱されたことと、右胸のダメージでバランスを崩しよろめいた。



ザンは剣の柄の部分に組み込まれている回転式グリップを捻った。すると剣の刃は青白い光を帯びて輝いた。



「エネスラッシュ!」


ザンはこう叫ぶと、青白い光を纏った剣を振り下ろした。すると剣から青白い光が刃の形を成したまま剛腕ピッチャーの剛速球よろしくガマジーリーに向かって飛び、その身体を真っ二つに切り裂いた。


ガマジーリーは最後、自慢の鎌で光の刃を跳ね返そうとしたが、鎌ごと切断されてしまった。



ガマジーリーの死を見届けると、倒れていたヒーロー達は「さすがザンさんだ」と、相変わらず絞り出すような声で呟いた。



ザンはカナラズイースト支部に連絡を入れ、傷を負った仲間達の救助を要請した。






余談だが、倒れていたヒーロー達が全員搬送された後、ザンは自ら進み出て、荒れてしまったマウンドの土を、とんぼと呼ばれる専用整備具を使って綺麗に均してから帰ったという。




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