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ちょっと霊感少女・奈緒  作者: 五十嵐。
みんな繋がっている・現代の黒魔術
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14

 叔母は続けた。

「でもね、人を妬むってことは悪いことばかりじゃないのよ。うらやましくて、自分と他の人と比較することは、人と違うことに気づくこと。自分もそうなりたいって、向上していこうと努力するようにできてるんだって」


 そう言われても、今の私にはあまり説得力がない。もし、成績がトップクラスで、美人で、スタイルもよくってみんなにちやほやされているんならわかるけど、そんなに妬まれる原因になる要素がない。私はそんなにめだたないどこにでもいる普通の高校生なのだ。訳がわからなかった。


 先を歩いていた母が振り向いた。

「生霊って本当に厄介なの。その人がやめてくれないと終わらない」

「もし、やめてくれなかったら?」

 怖々聞いていた。

「専門家のところへ行かないとだめかも」

 除霊の専門家ということだろう。


「生霊がチラと見えたのは、奈緒と同じくらいの女の子。同級生だと思うよ。今はいいけど、学校へ戻ったらまた憑りつかれると思う」

 私はそんな大変なことを淡々と言う母に腹を立てる。どこか他人事っぽいから。

 それを叔母が悟ったのだろう。

「大丈夫。奈緒にはこの叔母さんがついてるでしょ。そういうの、受け取らない術がある。教えてあげるからね」


「そんな術、あるんだ」

 やっぱり、叔母は魔女だと思う。

「でもね、今回のことはきちんと除霊をしないとだめ。そんなこと二十四時間、やってられないから」

 私達を母がそう窘めた。


「あのね・・・・・・あまり大きな声で言いたくないんだけど」

 まるですぐそばで誰かが聞き耳をたてているかのように、ひっそりと母が話し始めた。

「今回、奈緒が体が動かせなくなるほどの念を受けたのは、・・・・・・スマホを使ったんだと思う」

 私はごくりと唾を飲み込んだ。


 スマホって、あの・・・・・・スマ―トフォン。


SNSソーシャル・ネットワーキング・サービスを利用していたんじゃないかな。普通、一人の念がこんなに強く現れるってことないのよ。なにか呪術のツールを使ったり、それを専門にしている人ならともかく、普通の高校生が同級生にここまでの生霊を飛ばせるって、考えられない。きっと誰かの応援もあると思うの」

「応援? 人を呪うのに応援なんか・・・・・・」

 しないよね。そんなこと。その言葉を飲み込んでいた。


「その人たちは自分が呪いの応援をしているっていう意識はないの。誰かの愚痴を聞いて、へえって思う程度」

「愚痴?」


「最近、奈緒、ヘッドページを始めたでしょ。もし、アレで奈緒のこと、書いた人がいるとしたら? こんな子がいて、うらやましい。それにそういう念が込められていて、それを知らないで共感してくれただけでもたぶん、その念が増幅する」

 ゾクリとした。思い当たることがあるからだ。

 そう、あの夜、恐ろしいほどのコメント、そして私のページを覗くアクセス数が半端な数じゃなかった。それがそういう念だったとしたら、一人一人の思いは弱くても、それが何倍、何百倍にもなる。


 生霊が他の人たちの念を食べてどんどん大きくなっていくイメージ。そんなに怖いことなのか。

 スマホに変えてからメール、テクスト、ラインなどをする時間が大幅に増えていた。今まで本や両親とテレビを見る時間があったのに、母から注意されるまでずっとスマホと過ごしていた気がする。何時間でもあきなかった。いつの間にか時間がたっていた。それってある種の憑りつかれた現象なのかもしれない。


「ねえ、お母さん。いつからそれに気づいてたの? わかってたんでしょ」


「奈緒が食事中にいじってたりしてたでしょ。あの頃かな。それまではわずかなものだった。誰にでもある小さな念。それほど影響は受けないくらいのもの。私がある程度、守っていた。でも、奈緒がスマホに手をかけるたびにそれが見える。だから、時間制限をしたの。夜の九時から十二時まで。その間、私がそれを意識していれば、奈緒を守れるって。私が結界を張っていたの」

 そうだったんだ。知らなかった。守りの結界だ。でも、私はその時間を守れなかった。


「夕べ、・・・・・・過ぎてたの。気づいたらもう十二時すぎてた」

「ああ、やっぱり」

 母が残念そうな声を出した。

「奈緒を信頼してたの。もちろん、スマホを取り上げればそれでよかった。けど、それはしたくない。もうきちんと自分を制御できるって思ってた」

「ごめんなさい。それを破ったからあんなに影響を受けたってわけ?」


「そうね。ずっとせき止めていた今までの念までが、結界が破れたと同時に押し寄せたのかもしれない。それも夜中って、大勢がアクセスしているでしょ。それに連休だし、みんなが見てた」


 そう、気味が悪いほどのアクセス数。それを思い出していた。


「聡くんに来てほしいってお願いしたのは理由がある。彼のお母さんに、奈緒が行かれないって伝言をしてもらった後、聡くんから電話がかかってきた。」

「知らなかった・・・・・・」


「その彼の電話からも少しその生霊の影が覗いてた。だから、その人は共通の知り合い」


 共通の知人、クラスメイトってこと? いや、可能性はもっと広がる。最近、聡は目立っていた。人気のあるサッカー部の、その彼女ってことだけでも私は妬まれる因子を持っていた。


「聡くんには電話を置いてきてもらった。そして奈緒と二人をここで清めようって思ったの」

 聡にまで影響が及んでいた。

「聡くんはもう大丈夫。さあ、いいわよ。後は私達に任せて。今日のこと、謝っておいで」


「うん」



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