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ちょっと霊感少女・奈緒  作者: 五十嵐。
みんな繋がっている・現代の黒魔術
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「奈緒っ、来週の日曜日、暇だろっ、映画、見にいこっ。連休だからサッカー、休みだ」


 学生でごった返している食堂で、私は食券を買う列に並んでいた。そこへ聡が、日替わりランチのお盆を手にして通りかかり、そう声をかけられた。

 私は、映画の話よりも、聡が手にしているお盆に、目が釘付けになっている。

 どうやらそれは、私が買おうとしている日替わりランチらしいが、ご飯が大盛りなんてもんじゃない、山盛りになっていて、さらにその上にカレーがかかっていた。もうそれだけでカレーライスとしての一食分以上あるだろう。他の生徒もそれに気づき、じろじろ見ている。それに聡は他の生徒より頭がグンと出ているからさらに目立った。


「なあ」

 聡にそう言われて、映画の話だと思い出す。

「うん、もちろん行く。何を見るの」


「アタック・オン・タイタンだ」

「ああ、あれね」

 聡がハマっていたゲームの原作。人間が開発した農業用の巨人が、突如として知能を持ち、人間を襲うという、どっかで聞いたような話の映画。有名な俳優が出演しているから、かなり話題になっていた。

 でも、かなりバイオレンスらしい。


「いやか?」

「ううん、大丈夫だよ。ホラーじゃないし」

 そう、ホラー映画は苦手。

 そういうシーンが嫌ってことじゃなく、そういうモノを上映しているところには、そういうモノが集まってくるってこと。以前はそんなこと、感じなかったけど、先日テレビでそういう系をやっていて、そういうモノの気配を感じ、母と顔を見合わせたのを覚えていた。


 聡は私の返事に破顔した。

「オッケー、オレ、チケット買っとく」

「ありがと」

 

 私はまだ、聡のお盆を見ていた。

「すっごい量。そんなに食べるんだ」

「育ち盛りだからな。まだ伸びてるぞ。奈緒ももっと食った方がいい。チビだから」


 私が「もうっ」と抗議すると、聡は、アハハ、と高笑いをして行ってしまった。

 その後姿を見ていた。聡が座ったテーブルにはサッカー部の人たちが集まっていた。みんな、聡のように大盛りのご飯。あんなに食べても放課後にはお腹がすくのだ。とても同じ人間だとは思えない。


 私のすぐ後ろに並んでいる石崎礼香いしざきれいかが笑っていた。

「相変わらず、仲いいね。冷やかすスキもないくらい」

「いまさら、冷やかされても困っちゃうよ」


 礼香は美人タイプ。成績も常にトップファイブに入っている秀才。

 けど、それ故にちょっと変わっていた。その容姿には似合わず、つっけんどんに話す。他の人は言えないことでも、結構平気で言ってしまう。


 そして、ほとんどの高校生が持っていると思われる携帯電話、もしくはスマホを持っていない。いや、それだけではなく、毛嫌いしているようだ。

 そうかと思えば、家には礼香専用のパソコンがあり、タブレットも持っている。自分でも言っている。変わり者なのだ。


 そんな礼香と私、そして他二名、いつも四人で行動していた。

 教室を移動するときも食堂に来るときも一緒。いつもはお弁当を持ってきて教室で食べている。けれど、週二回くらいは誰かが食堂へ行くから、他の人はお弁当を持って食堂へ移動するパターンをとっていた。今日は礼香と私がお弁当を持ってこなかった。


 食堂はいつも混雑しているけど、予備の椅子がたくさんあり、友達のグループがいるとそこに詰めて座ったりしている。他のグループと一緒になることも珍しくはなかった。


「聡くん、女子の間で人気上昇中らしい」

「えっ、それって聡じゃなくて吉沢くんでしょ」

 吉沢にはファンクラブみたいなものがあるらしい。

「吉沢くんもそうだけど、聡くんも屈託のない笑顔がかわいいって、キャーキャー言ってた」


 私は不思議な気持ちで聡たちのテーブルを見る。

 確かに吉沢は、万人が選ぶだろうというタイプのイケメンだ。聡はどちらかというと童顔だし、口は悪いし、すぐからかってくるし・・・・・・。人気があるなんて言われても、その彼女としては複雑な心境だった。


 聡はほんのちょっとの間、他の学校の美咲とつきあっていた。しかし、私との腐れ縁のためか、あまりそのことに気づいていなかった。ただのファンにつきあって映画に行った、お茶を飲んだ程度になっていた。

 今、その美咲は、吉沢を追いかけていた。土曜日の午後、サッカーの練習風景を見に来るし、練習試合の遠征でも脚をむけている。


「私が吉沢くんを射止めたら、ダブルデートしよっ」

 そう美咲は言っている。ものすごく積極的だと思う。

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