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第07話

 目が覚めたら綺麗さっぱり体調は良くなってましたとさ。


 外を見ると真っ暗。時計が無いから何時か分からないけど、もう日付は変わってしまったのだろうか。

 しかし、過剰魔力症候群と言っていたが、何もしなくても魔力は抜けていくものなのだろうか。スポンジに染み込んだ水がゆっくりと抜けていくように、そんな感じなのだろうか。


 ク~と可愛らしく鳴った我が腹には逆らえぬ。

 ただ寝ていただけだが結構疲れたな……ショボショボする目の下を指で押しながら部屋を出る。

 真っ暗な廊下。しかし、扉の隙間から体を少し出すと真っ暗だった廊下に一つ、また一つと明かりが(とも)されていく。幻想的な光景に思えなくも無いが、魔法があると知ってるからそこまで怖くは無いがちょっとした恐怖だ。


 まぁいい、取り合えず食堂に行ってみよう。もしかしたら何かあるかもしれん。

 無くても目が覚めてしばらく寝れそうに無いからなぁ……




「坊ちゃん、何をしているんですか?」

「はわっ!?」


 そろそろと食堂に滑り込んだ俺は、急に後ろから掛けられた声に変な声が出てしまった。

 慌てて後ろを見ると、そこには少しばかりあきれた様子のセシールの姿が。

 もしかしたらこのまま連れて行かれて無理やり横にさせられるかもしれん。折角ここまで来たのに何も食べないってのは少々頂けない。


「ちょっと、お腹が空いちゃって」

「……本当なら寝ていて頂きたいんですが、仕様が無いですね」

「良いの?」

「はい、それに、少しでも食べていただいたほうがお体に良いでしょうし」


 そう言って厨房の方へと足を向けるセシール。

 ここで待っていてくださいといわれた俺は素直に椅子に座ってセシールを待つ。しばらくしてからカチャカチャと微かな金属音が聞こえてくる。

 しばらくそのままお腹を(さす)りながら待っていると、良い香りのする料理をワゴンに乗せてきた。


 それは例のコック長の物とは違い、見た目の華は無いが安心できるような、美味しそうな料理を持ってきてくれた。


「これ、もしかしてセシールが作ったの?」

「え? え、はい……ゴードンさんが作られるものと比べると見劣りするかも知れませんが」

「ううん! そんな事ない、美味しいよ!」

「――嗚呼、坊ちゃん!」


 うむ、一口スプーンに似た食器でお粥のようなご飯を掬い、口に流し込む。

 ――日本のお粥に似ていた。柔らかいご飯にしっかりした出汁(だし)が旨味を醸している。


 あれ? 何か、ここでご飯を食べてるだけのような気がしてきた。




「落ち着きましたか?」

「うん、ご馳走様でした」


 ずっと寝てたからだろう、胃に優しいお粥を作ってくれたセシールは非常に良い女性だ。

 ほんわかしたままゆったりしていたが、そろそろ部屋に戻ろうか。食堂に来た目的も果たしたし。

 おいしょっと声を出しながら立ち上がる。


「――坊ちゃん」

「うん?」


 ドアノブに手を掛けようとしたところで、後ろから声を掛けられる。

 セシール、君って俺の後ろから声掛けるの好きなのか?


「聞いていただきたいことがあります」

「何だい?」

「あのお医者様の言われた過剰魔力症候群のことです」

「……ああ、あの魔法を習っていた、とかってやつ?」

「――はい」


 あれから暫く時間があったから、セシールとお医者様からお父様に連絡でもしたのだろう。

 まだ俺としての意識は甦ってから時間は浅いが、精神年齢的には大人だし、一般的な子供と比べてアドバンテージが凄まじいことになっていると思う。何より、大人の世界は~なんて言われる汚い所まで俺だとすんなり理解できるしね。……それに納得なんて一切しないが。


「坊ちゃんには、明日から魔法、文字にいついて学んで頂きます」

「うん」

「それから、坊ちゃんがお望みになられるのであれば、魔法学校の方に早い段階で入学することもレーモンド様がお許しになるとのことでした」

「魔法学校、ねぇ」


 魔法学校と聞いてもいまいちピンとこない。

 学校と言うからにはこの屋敷の図書よりも多くの、それでいて幅広い魔法に関する書物があるんだろう。なければ行く意味はそこまで感じないんだが……もし、魔法を実践的に使える人が教師としているんだったらその人のところに行きたいとは思う。


 ――そもそも学校って、どれだけの子供がいるか分かったもんじゃないじゃない?


 どれだけ現実をみている子がいるかわかったもんじゃないし、俺みたいな子供がいたら気味が悪い。盛大にブーメランとして俺に返ってくることになるのは単に今の俺の見た目が子供だからだが。

 だから、今俺が取る選択肢と言えば――


「ねぇ、セシール」

「はい、なんでしょうか」

「僕はね、セシールに魔法も文字も教えて欲しい」

「え?」


 じっと目を見て話す。話をするときの基本だろ? しかも、それが真面目な話をしてるときなんだから、少しくらいカッコ付けたいじゃない(幼児並思考)

 セシールの目が泳いでる。このまま押せばいけるんじゃないだろうか?


「それに、僕、セシールの事、好きだし……」

「――坊ちゃん!」


 ぎゅぅっと抱きしめられる。

 少し苦しい感じもするが、セシールに抱きしめられるのは嫌じゃない。

 それどころか、俺にとっては役得である。子供だから言えるってのもあるんだがな。


「大丈夫です! 少なくとも1年はこの屋敷で学んでいただく事になってます!」

「あ、そなの」

「レーモンド様が、魔法学校で必要であろう知識を前もって教えてくれる方を講師として雇っていただけるとのことです」

「ア、ハイ」


 アラヤダ、子供心で言った好きですはそんなに意味無かったのか。


 まぁ、でも……これで安心して文字から学べるな!(白目)

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