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第06話

「あ~……だるぅ」


 次の日、俺は体のダルさにやられていましたとさ。

 何でこうなったのかは分からんが……頭を左右に動かすぐらいしかできん。無理すれば立ち上がれん事もないが、すぐに立ちくらみで倒れそうだ。


 いや、こうなってしまった以上次に起きるであろう事態はある程度想像できる。

 規模がどれほどのものになるかは分からないが。


「坊ちゃん、おはようございます。朝で……坊ちゃん?」

「……やぁ」


 部屋に入ってきた瞬間駆け寄ってきた。

 一目見て俺の体の異常を察知したとでも言うのだろうか。

 隣まで来たセシールは丁寧に、それでいて勢い良く毛布を剥ぎ取った。そして俺の状態を確認してすぐに毛布をかけた。額に手を当て、深刻な顔をして反転、静かに部屋を出て行く様子を見て嗚呼と力なく呟く。

 あの人たちの事だ。大事になってしまうのは目に見えていた。


「すぐにお医者様を手配しなさい!」


 そんな声が遠くのほうで聞こえてきた。




「過剰魔力症候群に似ていますな」


 ベッドの中で大人しく待っていたら白い服を身にまとった、いかにも医者然とした男性がセシールの先導の元やってきた。

 軽い触診と何だか分からない器具でよく分からない何かを計られた後の診断結果は『過剰魔力症候群』らしい。と言っても、語呂からじゃ魔力が多すぎて何かが起きているとしか判断つかん。どこまで体に異常を及ぼすのだろうか。

 見るからに不安そうな表情をしているセシール。


「先生? 似ているというのは、どういうことですか?」

「通常、過剰魔力症候群は先天性のものなのです。後天性でなることはまずあり得ません」

「つまり……」

「原因は分かりませんが、何かしらの理由で体内に魔力を大量に蓄えてしまった、としか輪年からは言えません」

「あ」


 つまり、昨日の夜にやった自分でもよく分かってない行為の結果がコレカ。

 そう言えばセシールも夜中に慌てて来てたみたいだし、アレはあまりやらないようにしよう。

 いや待て、魔力を溜めるのがダメなんだったら魔力を出せばいいんじゃないか? 取り合えず、専門の人に意見を聞いてみようか。


「先生、蓄えるって事は、魔法で魔力を出せば良いの?」

「ん、まぁ……そういう事になるが……坊ちゃんはまだ魔法は使えないんじゃ」

「でも、昨日杖と契約できたってお父様が言ってたから使えるかも」

「……え?」

「え?」


 え? 何、もしかして言っちゃいけない事言った?


「そんな……普通、杖と契約するのは10歳のはず……もしや、何方(どなた)か高名な魔法使いに師事されているのですかな?」

「えっと」

「ええ、坊ちゃんは幼い時より魔法に関する勉学をなされていまして、今回のような事になるとは思ってもみませんでしたが」


 言葉に迷っているとセシールが医者と話し始めた。

 それを熱で浮ついている頭でぼんやりと見守る。所々聞き取れなかった所とぼんやりし過ぎで聞き取れなかった所もあったが、どうやら少しばかり話を摩り替えているようだ。


 恐らく今まで勉強していなかっただろう俺は、いつの間にかセシールやその他魔法を使える人に教えを請い学んでいたと言う事に。

 杖との契約は偶然だったと言う事実は前々から決まっていた決定事項として。

 元々高かった魔力――今初めて聞いた――が杖との契約と感情の昂ぶりによって『過剰魔力症候群』として形になってしまったのではないのか、と。


 と言う事らしい。

 おい、これが俺じゃなくてただの子供だったらどこかでうっかり漏らしてたかもしれんぞ。


 とまぁ、話を聞いているうちにうとうとと重くなってきた目蓋に従い、大人しく眠っておこうと思う。


 それでは、おやすみなさい。

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