プロローグ
「俺…お前のこと、好きかも」
「…‼嬉しい、実は僕も…」
…やっぱ、BLっていいわぁ。
「姉貴ー。ハサミ貸してー……って、また…」
「…弟よ。貴様は薔薇の道を進む気はないかね」
「あるわけねぇだろ‼ちょ、マジで、そーゆー趣味なのはいんだけど俺をそっちに連れて行こうとしないでヤメテ」
本気で目が死んでいる弟に対して私は輝きしかないの笑顔を見せた。
さらに追い打ちをかけるように今まで読んでいた小説の濡れ場のシーンを見せた。
「やめろっつってんだろ⁉聞いて⁉お願いだから‼」
…何も面白くない弟めこんちくしょう…。
「フン。お前なんかにもう用はない。これ持ってとっとと帰れ」
わざと刃先が下になるように投げたら弟は一度睨んでから小さく「…さんきゅ」と言って部屋を出て行った。
…ふぅ。
あんな受け要素を簡単に諦めれるわけねえだろ。
岡澤紫苑。高校二年生。
外向きでは、明るい元気な女の子を演ってます。その方が都合がいっかなって。
やっぱり…遠くから見るのも良いんだけど、それなりの距離から眺めたい。
そのために、幼馴染みで隣人さんの男子と一緒にいた。アイツは友達多いから。
それに…イケメンの部類に入るし。
逸材ですよ逸材!
そのため常に幸せで胸がいっぱいです…。
友達に囲まれてるアイツを見ると…。
イケメンとフツメンのcpは王道ですから…。
「…何ニヤニヤしてんの気持ち悪りぃ」
「ひゃっ、ビビった。い、一樹か」
「…また、妄想かなんかですか」
そんな冷ややかな目を向けないで。当たってるけど。
「つか、勝手に部屋入るなよ。ノックしろや。そして帰れよ」
「したし。返事なかったから入った」
「おかしいだろ。着替え中だったらどーすんの」
「お前の着替えなんか見て何か思うもんなの?」
それは私に喧嘩を売ってるんだな?よろしい表に出ろ。
これが、このデリカシーのデの字も持ち合わせて居ないであろうこの男が、幼馴染みで隣人さんの神尾一樹。
顔はもちろん良いです。性格が悪い…玉に瑕なんだよな…。
でも、攻めとして見るなら私的ドストライクなんだよね。
私の弟とええ感じのcpなんだよ…。
ちなみに、弟の名前は岡澤瑠衣。純情ピュアボーイ。中学三年生。
こないだ、一緒にゲームしているところを見たんだけど、そのときに、一樹が瑠衣の手に自分の手を添えて、やり方を教えていた。
萌えた。
凄く萌えた。
それから私は彼らが二人揃ったら、どうしてもニヤニヤしてしまう。瑠衣にはめっちゃ睨まれるけど。
あ、一樹には腐女子バレしてません。ヲタクと妄想大好きなのはバレてるけど。
「ところで何用」
「漫画読もうかと。あ、ジュースもください」
「ここは漫画喫茶じゃねえよ。もー!仮にも女子の部屋だからね!?」
「女子?お前が?…ふはっ」
「よーし分かったくたばれ」
ゴキッ、ゴキッと関節をならす。
こいつとは一度話をしようと思ってたんだ丁度いい。
「姉貴。ハサミ返すー…一樹さん…」
「おー。瑠衣。ちーす。久しぶりにゲームしよーぜ」
「や、俺、課題あるから遠慮しとく…」
私に刃を下に向けてハサミ投げてきた刺さった痛ッ。
瑠衣がそそくさと出ていくと、一樹は不満そうに顔をしかめた。
「んだよ最近素っ気ねぇ…前まで一樹兄ちゃんとか呼んでたのに…嫌われたかな…」
うん、多分私のせいだな。
一瞬ヨダレが出たのを見られたんだろうね。
フォローいれとこうか。
「瑠衣は今思春期真っ盛りだからだよ」
「それ関係あるのか」
もちろん!好きな人には照れちゃってなかなか一緒にいれない年頃だよ!
…言いたかった…言えない…。
「まあいいや。とりあえず漫画物色〜と」
「…もう勝手にして…」
基本的にはBL漫画が多いけど、本棚の裏にある収納スペースに隠してる。
建前として、本棚には少女漫画とか少年漫画、あるいは文学とか入れてる。抜かりはないのです。
…この時はまだ、思いもしなかった。
ずっと、BLのことだけ考える人生が良かった。
…私には、無理だよ…。
「…お前、少女漫画とか読むの」
「読むけど。何」
「いや、似合わないなーって」
「まじでお前帰れよ」