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超亀更新。筆が乗らない。千文字まではスラスラかけるのですがねー...。
追ってくる奴らを巻くのには非常に苦労した。
路地裏に逃げ込み、壊れた屋根の上を走り、空を駆け、ひたすら逃げ続けること約数時間。座り込む白髪の少女を飛び越え、おっさんの頭を踏み台にし、唖然とする青年を盾にしつつもなんとか逃げ切った。
正直、時間が立つ事に雪ダルマ式に追いかけてくる人が増えていった為、逃げきれるか内心焦っていた。
............投げられたフライパンを回収したり、誰かの頭を踏みつけたりしていたからだろうか。
とにかく、逃げ切ることができた。それだけは揺らぐことの無い事実である。ひとまずの所訪れた平穏へ相方と共に身を委ねた。
陽の光は途絶え、昼間の人ごみが嘘のように誰も居なくなった。辺りは人工の灯りによって照らされていた。
そんな街の、光の届かない闇の中を私は相方と二人、盗人の様に忍び歩いていた。
「全くどうして私がこんなふうにコソコソと動かなければならないんだ。これじゃあまるで私が犯罪者の様じゃないか。」
「どうしてもこうしても、あんたが昼、揉め事を起こしたからじゃない。.........忘れて無いでしょうね?」
私のぼやきに対し、即座に返ってくる厳しい返事。その内容は正論そのものだった。だがしかし、それでも私にも同情できる点はあるのではないだろうか。そう、例えばあの店の唐揚げが高すぎることとか。
そう考えていると、相方が殺気を放ってきた。言い訳をするなということだろう。いい加減余計なことを考えず行動を再開しよう。
私たちが今いる場所は街の中心。多くの店が集まる場所だ。ではなぜそんな所に向かっているか。それは、とあるツテで昼の事件を揉み消す為である。あの規模まで行くと私ではごまかし切ることができなくなってしまったのだ。今は事件を知る憲兵の数も少ないが、明日になれば、街中で事件を起こした犯人として、多くの人の目に人相書きが映ってしまう。そうなった場合、この街から逃げる他なくなる。ならば、その前にけりを付けるしかない。
そう話しているうちに目的の場所が見えてきた。
多くの人が訪れる故か、ここの建物はほとんどがそれなりに整っている。その中で異彩を放つ建物。古びたその外観は、周りと違うのだと高らかに自己主張しているようにさえ思える。
『ファルス商店』
それがこの建物の名である。
さて、事件を揉み消す事と、古びた商店に来ることに何の関連性があるのか。簡単なことで、さきほど言ったツテというのがここの店主だからである。
「おい、誰か居るか?」
ガサリという音と共に古びた扉を開けて声をかけるが、返事はない。
「おい、居るんだろう?」
そう声をかけるがやはり返事はない。
「おい…」
「そう何度も呼ばなくたって聞こえているさ。騒々しい。」
三度目の呼びかけの最中、そう、声がかかった。
ボサボサの黒髪、やる気のなさそうな灰目、だらけきっているように見える姿勢。しかし、見るものが見れば、それは不要な部分だけ力を抜いていることがわかる、そんな姿であった。
この男が、店主のファルスである。
「それで、一体こんな辺鄙な店になんの用だい。何もないのだったら、とっとと帰って欲しいんだけど。」
そう言う彼の顔はタチの悪い客がやって来た、とでも言いたげなしかめっ面をしていた。
人が訪ねて早々に不満気な顔をされるとは、彼が私をどう思っているか丸分かりである。
相方もさすがに、
「ファルス、来ていきなりそんな顔をされるのは心外なんだけど。流石に客に向かってその顔はどうなのよ。」
と文句をこぼす。しかし、彼はその表情を崩さぬまま文句を言う。
「君たちの要求する依頼は難度が高すぎるんだよ。その上厄介事を毎度毎度持ち込むし。」
「随分と酷い言い草だな。涙が出てくる。」
そう私が言うと、ファルスは呆れたような表情で返事を返す。
「胸に手を当てて思い返してみるといい。君、この前の以来の内容覚えているかい?僕ははっきりと覚えているよ。この都市の秘宝を壊したから秘密裏に戻して欲しい、だっけ?」
言われた言葉に冷や汗が流れる。
「他には…実験で街の一部を壊滅させたから、直すまでの間ごまかして欲しいとか?一度入ったら出られないとまで言われてる『永劫樹林』に薬草の採取に行って欲しいとか?」
顔が思わず引き攣る。
「まだあるけれど..........その表情だと言う必要はなさそうだね。」
おもわず顔が項垂れる。この調子だと、依頼をするのは困難をきわめるだろう。顔を上げ、どうやって彼を説得しようか考える。一つ目、何か物で釣るのが手っ取り早い。が、今手持ちのものでは彼の興味を引くことはできそうにない。…二つ目、物でなく行動を対価とする。だが彼は何か行って欲しそうではない。…………三つ目、依頼の内容を妥協する。無理である。
四つ目を考えようとしたところで、行き詰まった。つい顔を俯けしかめっ面をしたところ、隣と前から苦笑したような、からかっているようにも取れる声が聞こえた。
「前見なさいよ。ファルス、悪戯が成功したような顔してるわよ。」
その言葉を聞き前を見ると、してやったりという表情でこちらを見ていた。からかわれたと認識するのに少し時間がかかった。
なるべく速く書けるようにしないとなー。