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新学期の事情 その5

 入学式があってから早1週間。

 俺の予想に反して後輩キャラがこちら……と言うか、間宮にまだ接触していない。

 うーん、原作ゲームのときゃどんなに遅くとも3日以内にイベント発生していた筈なんだがなぁ……。

 そう思って桐生に質問してみると、まー坊自分でゲームとは違うって言っているのにそれは頭固いんじゃないのって……、言われてはっとさせられるとか、俺もまだまだだな。

 と言うか、無自覚だったんだが俺も間宮ほどじゃないにしろ意識してしまっていたって事か。

 これは大いに反省するべき事だな。


 よくよく考えれば、愛ちゃんと矢部先輩以外の主要キャラに対して必要以上に冷たく考えてしまっている節もあったのかもしれない。

 間宮の親友ポジの子だって、もしかすると間宮と改めて仲良くなれたかもしれないのに、間宮が暴走しているうちに間宮に呆れてしまったからと、間宮にこれ以上あの子に関わるなって言ってしまったからな。

 ……いや、それはそれで良いのか。

 別にあの子は友達多いみたいだし、間宮も今更無理に友達になりたいなんて思ってないみたいだからな。


 うーむ、ゲームの知識があるって寧ろ色々弊害があるって事だな。

 本当に気を付けておこう。

 後輩キャラの場合、そもそもあんな態度を教師に向かって平気で出来るって時点で関わらない方が無難のタイプだろうし。

 そりゃぁ理不尽な事言われてとかなら分かるが、あれ完全に自分から先生煽ってたからな。


「お兄ちゃん、また悩み事?

 なんか2年生になってから考え事するの増えたね」


 間宮に言われる通り考え事していた俺は、彼女が心配そうにこちらを見ている事に気が付く。

 うん、これは良くないな。


「あー、悪いな。

 ちょっと色々あってね」


 苦笑いを浮かべながらそう口にする。

 と、横を見れば桐生が健をからかって遊んでいて……南無三。

 まぁ、桐生と健は放置しておくか。


「むー、色々ってなーに?」


「おいおい、そんな不満そうな顔するなって。

 生徒会の事とか愛ちゃんの事だよ」


 膨れっ面だった間宮が納得したように頷く。


「あー、何だ。お姉ちゃんとの事考えてたのかー。

 って、愛ちゃんってお兄ちゃんまさかお姉ちゃんと!?」


 あ、こいつ絶対勘違いしてやがる。

 そんな目を輝かせて大声上げるなって、桐生も健も驚いてこっち向いた後そんな楽しげに微笑むなって。

 むぅ、気を付けて愛実先輩と学校では言っていたのだけど……、愛ちゃんと呼ぶのにだいぶ慣れてきたって事か。

 まぁ、俺をからかう分には一向に構わないのだが、愛ちゃんはまだそう呼ばれている事を恥ずかしがっているくらいなのだから、愛ちゃんに余計な事言ったら許さないぞ。


「なになにー、愛しの愛実先輩とまー坊ついにやっちゃった訳?

 やっぱりまー坊も猛る欲望には敵わなかったのね」


「してねーよ。

 そんな無責任な事俺には出来ないし、単に愛ちゃんって俺が呼ぶようになっただけだ」


 何故に財布を言いながら出しているんだよ桐生。

 しかも滅茶苦茶楽しそうだし。


「いや、突然そう呼ぶって事は、つまりそれだけの事態があったって事だろ?

 素直に教えろって。

 大丈夫、別に吹聴して回ったりはあんまりしないさ」


「ああ、そりゃぁ大学で愛ちゃんに何かあった時愛実先輩と呼んでいるより、愛ちゃんと呼んでいた方が良いだろう?

 それだけの話だ。

 後、あんまりとか言うお前は本気で信用ならん。

 その所為で愛ちゃんが照れすぎて俺の顔をまともに見れなくなった事、俺は一生根に持つからな」


「うわぁ、お兄ちゃんほんとお姉ちゃん絡むと器ちっさいね」


 うっせーよ間宮。

 そして、何口パクでつまんねーとか言ってんだよ健。

 お前がつまるつまらないとか知らねーよ。


「まぁまぁ、どうせもう秒読みでしょ?

 悪い事は言わないから持っておきなさいって」


「おい馬鹿やめろ」


 いや、ほんとそんな嬉しそうにコンドーさんを手渡されようとされても困るんだが。

 つーかここ教室、分かる?


「えー、家族計画ってかなり重要よ?」


「そんなん分かってるわ。

 だからこそ、まだしねーって」


 渋々取り出した物を財布に戻す桐生。

 ってか、お前そんなもん持ち歩いているんだな……。


「ねー、薫ちゃん。それなーに?」


 間宮の衝撃発言に固まる俺達。

 嘘だろ? と思いながら視線を向ければ尚更不思議そうに首を傾げる。


「……間宮ちゃん。それ本気?」


 震える声で問いかける健。

 おう、気持ちは分かるぞ。


 本当に分からないのだろう、素直に縦に首を振る間宮。


「うん、翔子ちゃんには色々お勉強が必要のようね。

 と言うか、保健の授業真面目に聞いてた?」


 本気で心配そうな表情を浮かべる桐生。

 健も似たような表情だし、俺も多分同じような表情になっているのだろうな。


 あ、間宮が益々不思議そうにしてる。


「ちゃんと聞いてるよー。

 と言うより、なんで皆そんな可哀想な子を見るように私を見るの?」


 やっと不安そうに俺達を見るが、正直俺達の方が遥かに不安を感じていると思うぞ。

 いや、単に知識はあれど見た事なかったとかそんなんだろうが……。

 どうしたものかと思っていると、間宮に耳打ちする桐生。

 と、目の玉をこれ以上ないくらい開けて大口を開けた間宮。


「へー! それがコンドームなんだ!」


「馬鹿! 大声あげんな!」


 叱咤するが後の祭り。

 教室中の視線が俺達に集まり、更に沈黙が場を支配して正直居心地が最悪になる。

 ……おい、お前の幼馴染が何故か俺を殺意すら混じってそうな凄まじい顔で睨んで来ている訳だが、どうすんだよこれ。


「ご、ごめんなさい……」


 状況が一変した事はすぐに気付いたのだろう、しおらしく頭を下げる間宮。


「いや、仕方ないよ間宮ちゃん。

 でも、次から気を付けようね」


 健が慰めるようにそう間宮に告げた直後休憩時間の終わりのチャイムが鳴り響き出す。

 ほんと頼むよ間宮。

 純粋なのは分かるんだが……色々限度ってもんがあるぞ?

 もしかしてあれか? 女友達いなかった弊害か?

 普通女の子の方が耳年増だったり、実はえげつない話していたりする筈だが。

 ……そう言えば、愛ちゃんも明美先輩もその手の話は割りと初心そうと言うか、好んでするタイプじゃないもんな。

 他の女の先輩方はそうでもなかったけど、結局本当に懐いたのは2人だけだし……。


 どうしたものかと思っていると、ふと桐生と視線があって意味深に頷かれる。

 ああ、お前が色々フォローしてくれんのか。

 うん、余計な事まで教えそうな不安はあるが、そのくらい目を瞑るわという意味を込めて頷き返す。

 こう言う事は早目に教えておくべきだろうし、俺は今日も放課後は生徒会で拘束されてしまうから時間ねーからな。

 健も一緒に居るだろうし、まぁそこまで心配しなくとも良いかな?

 何だかんだ自分の恋愛事情以外では鋭いし、フォローも上手い奴だし。


 教師が教室に入ってくるのを横目で確認しつつ、後輩キャラが絡む前に発覚して良かったと思いつつも、ちゃんと自分で自分の身を守れるのか更に不安になったなと安堵半分、頭の痛い思い半分内心で溜息を付くのだった。




 今年の大まかな予算の振り分けも終わり、去年がどれだけ異常だったのか再確認しつつ帰路を急ぐ。

 いやー、マジでバ会長は仕事放棄してたんだな。

 って、あれは間宮の幼馴染?


「……田中 雄星。

 お前と話したい事がある」


「いやー、俺はねーしさっさと帰りたいんだが……まぁ話してみろよ」


 どうやら待ち伏せされていたようで、こちらを睨むそいつに溜息が溢れる。

 なんだかなー、色々勘違いしてそうだし勝手な妄想膨らまさせてそうなんだよなー。

 あー、面倒くせー。


「……すぐそこに公園があるだろう?

 そこに移動するぞ」


「あー、分かった分かった。

 だから、そんな睨むなって」


 ……黙れってですかい?

 よほど俺に対して何かあるのか、宥める様に言った言葉に更にキツい視線を向けてくる。

 マジで面倒だなこいつ。

 ……とは言え、間宮へ行かずこっちへ来たのは俺にとっちゃ僥倖だったかもしれない。

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