新学期の事情 その8
授業中露骨に落ち込む宮原と、集中できずそわそわしている間宮。
そんな2人をチラリと確認して思わず溢れる溜息。
ったく、授業に集中できねーじゃねーかよ。
内心でそう愚痴りつつ、仕方がないから一肌脱ぐかと思う。
ぶっちゃけ今のままの方が色々と面倒くさそうだし、ならば多少はしておいた方が俺の為にもなるだろうからな。
後輩キャラも予想を覆して全然間宮と接触していないようだし、一応桐生に相談してみたのだが何故かはぐらかされるし。
とりあえずそっちは大丈夫だからとか言ってたけど……、そっちはって何なんだよ。
もしかして、他にも面倒事あるのか?
俺は心当たりがない訳だが、桐生の方が実際にプレイしてやりこんでいた分俺より間違いなく詳しいだろうし、不安は募るばかりだ。
ほんと少しでも不安事は減らしておくべきだろう。
そんな訳で、休み時間に突入するや宮原の方へと歩み寄り、驚く宮原を無視してその手を掴んで問答無用で連れて行く。
行先は当然間宮の下で、近づく俺達に気付いて目を見開き慌てて桐生の影に隠れる間宮。
「間宮、宮原がお前と話したいんだと」
宮原も戸惑っている事位気付いていたが、問答無用でそう言葉を紡ぐ。
「ちょっ、急にどうしたよ雄星。
間宮ちゃんも宮原も戸惑っているだろ」
フォローするように口を開く健。
桐生は何故か苦笑を俺に向けていて、多分俺の気持ちを察しているのだろう。
「いや、もう面倒でさ。
って言うと言い方は悪いが、健には言ったとおり宮原は間宮と喋りたいらしんだよ。
だけど、去年の出来事に尻込みしてうじうじと見つめるだけでさ。
昨日俺に相談しに来る勇気はあるくせに、折角アドバイスしてやったのにそれでも間宮には話し掛けに来なくてカッとしてやった。
今も全く反省してないぜ」
無駄に胸を張って少しでも空気が軽くなるように意識する。
俺の言葉で色々と察してくれたのか、健が何だそれと言いながらわざとらしく声を出して笑う。
いやー、実際話しておいた事と違うわけだが、お前のその察しの良さ本当に助かるわ。
そして桐生よ、なんだよその仕方のない子ねー見たいな顔。
そんな表情向けられるとムズ痒くて仕方ないから止めてくれ。
「あぅ、話したいって……ごめんなさい足りなかった?」
桐生の影から泣きそうになりながらそう口にする間宮。
あ、宮原の野郎絶句してやがる。
馬鹿! ここは即反論しないと益々勘違いさせるだろうがよ。
「ふふふ、それじゃぁ翔子ちゃんちゃんと私の前に出なきゃね」
「えええええ! 何で!?」
優しげな笑みを浮かべながらも、問答無用で場所を入れ替える桐生。
盾にしていた相手のまさかの所業に間宮は半ば悲鳴のような声を上げる。
「何でって、そりゃぁ宮原君は翔子ちゃんに話に来た訳でしょ?
ならちゃんと面と向かって聞かなきゃ失礼でしょ?」
「あぅ……でもぉー……」
必死に助けを求める様子の間宮の肩から手を離し、そっと右手を掴む桐生。
「大丈夫、こうやってちゃんと付いててあげるしまー坊だって居るじゃない。
たけるんは役に立つか分かんないけど」
「ちょっ、何で急に俺ディスられてんの!?」
急に振られて大げさに慌てる健。
チラッと横を見れは何とか少しは固さの抜けた様子の宮原。
間宮も健を見てクスクス笑っているし、ほんと2人とも助かるよ。
「まぁまぁ、とりあえずそう言う感じの事じゃないっぽいし、あまり構えなくて大丈夫だぞ間宮。
ほら、ここまでお膳立てしてやったんだ。さっさと話せって」
言いながら背中を叩いて前に出す。
改めて驚いたような表情を浮かべてこちらを見つめる宮原に、笑みを浮かべて1つ頷いてやる。
見つめ合う宮原と間宮。
流石に俺達が多少空気を緩くしたとは言えまだ固い様子の2人。
まるでこれから告白するかのよう……頼むからそう言う先走りは止めてくれよな宮原。
「あの……その……げ、元気?」
おいおいおいおい!
いや、確かに先走るのは止めてくれって思ったけどさ。
流石に元気? はねーだろ!
「う、うん。元気……だよ。
えっと……だいちゃ……宮原君は?」
だいちゃんとでも前は呼ばれていたのか、間宮がそう口にしようとした瞬間分かりやすくぱぁっと表情を明るくしたのだが、宮原君と呼ばれて再び分かりやすく落ち込む宮原。
そして、元気だよと弱々しく呟いた後、助けを求めるように俺の方に視線を向けてくるな。
自分で何とかしろと言う意味を込めてクイっと顎を動かす。
「っははは、お見合いかよー。
もっと気楽に行こうぜー」
ただ、健は俺よりも優しかったようで、わざとらしく笑い声を上げる。
桐生も優しい笑みを間宮に向けて……って、これ俺らまるで間宮と宮原の保護者じゃね?
間宮は今までの付き合いから仕方ないかと思う面もあるけど、頼むぜ宮原。
「ほら、翔子ちゃんももうちょっちリラックスしなさいな。
とって食われる事はないのだし、そうなろうとしても撃退してあげるからね」
「うん!」
あ、間宮が素直に桐生に微笑みながら元気よく返事した訳だけど。
それを見てた宮原がまた凹んだ。
お前マジでもう少しメンタル何とかならないのか?
「えっとね、その……だいちゃん……て、また呼んで……いいのかな?」
散々視線を彷徨わせつつ、最後に上目遣いに口にした間宮。
正直俺からすればさっさとそのくらい喋れと言いたくなる訳だが……、宮原は感激したようにぱぁっと笑みを浮かべて1歩踏み出したのを確認するや暴走する前に頭を叩いておく。
いやー、準備しておいて良かったぜ。お前今抱きしめようとかしただろ。
吃驚してこちらを向いた宮原に、口パクで落ち着けとだけ伝え同じく吃驚している間宮に笑みを向ける。
「すまん、続けてくれ」
「いや、マジ突然だったな」
多分察しているのだろう、苦笑いを浮かべつついち早く口を開いた健。
いやー、マジで助かるわ。
「あー、悪かったな宮原」
一応念の為にそう口にすると、いえ、ありがとうございますとか口にする馬鹿。
お前それ素直に口にしたらダメだって!
桐生がなんか間宮に話してて肝心の相手に聞かれずにすんだっぽいけど、マジで桐生に感謝しとけよ。
こりゃぁ後でマジで説教ものやな。
「えっと……そう呼んでくれると……凄く嬉しい。
その……僕も翔子ちゃんって……呼んでいいかな?」
しゃきっとせー! と怒鳴りたくなるのを気合で堪える。
いや、お前間宮の事好きなんだろ? ビビるのは分かるが、ここまで来たらもう言うしなねーじゃん。
っと、俺視点で考えちゃダメだな。
宮原には宮原のペースがあるのを半ば無理やり連れてきた訳だし。
仏の心だ。
「うん、嬉しい」
満面の笑みを浮かべる間宮。
はっ、待てこれ勘違いする流れじゃね?
幸いな事にチャイムの音が響いてきたのでそのまま解散となったのだが……あいつあの笑顔勘違いしているとしか思えない。
もう予想しなくとも分かるが、間宮は異性の友達と仲直りして喜んでて、宮原はヨリを戻せそうとか思って喜んでるのだろう。
これは放置したら間違いなく俺にも迷惑がかかる。
そして、愛ちゃんとの時間が減る。
……そのくらいなら昼飯を抜くくらいやむを得ないか……。
愛ちゃんの手作りな以上食べないと言う選択肢などある訳もないのだが、ただ、食べる時間は午後の休み時間となってしまいそうだ。
1つ1つ味わって食べたかったのに……ああ、俺の癒しタイムがぁ。
方や上機嫌な2人、方ややり遂げた感満載の2人を尻目に、1人憂鬱な思いに満たされるのだった。
チクショー、健も桐生ももう終わった後は2人でどうぞーみたいな顔しやがって、絶対巻き込んでやる。
あ、何でこっちを見てウィンクするかな桐生よ……いや、兄さん。察しが良いのも限度があると思うんだ。
あーもー、愛ちゃん分が足りない足りない足りないー!
……、切り替えて授業はきっちり受けないとな。とほほほほ。




