ネオ朝日シティホテルの守護神
曲野零はネオ朝日シティホテルの地下駐車場にいた。
もちろん、仕事のためだ。非日常の世界に戻ってきた。
超セレブの街、ネオ朝日シティにあるネオ朝日シティホテルは芸能人、政治家御用達のリゾートホテルだ。そこには、裏の世界の住人もやってくる。
普段なら高校生の零など絶対に入れないほど高級なホテルなのだが、今の零は殺し屋だ。
人を殺す職業。
いわば、悪魔に身を売った裏の住人。
この程度のセキュリティなら、簡単に侵入できる。
零は要項をめくる。
「標的は梶山鮪、麻薬密売をするマフィアの頭。ネオ朝日シティホテルに3日間滞在している。SPを2人つけている。証拠を残さず的確に仕留めよ」
「なーるほど。このマフィアの頭を殺せばいいのね。ちょろいちょろい。ほんとにBランクかよ」
曲野零は怖気づかない。
恐怖を知らない。
「さーて、始めちゃいますか」零はコツコツと音を立てて歩き出した。
右手に『素人殺し』を携えて。
ネオ朝日シティホテルのフロントにて。
「わたくし、予約をしていた真島千と言います。チェックインをお願いします」
零は、黒いスーツに身を包んで、深い帽子を被っていた。ちょび髭もつけていたので完全に怪しい中年男だ。
潜入するには変装を。
ってな。
「はい。真島千様ですね。ご予約を確認しました。6024号室でございます」若いボーイはそう言った。
「ありがとうございます」
「荷物をお運びします」
「大丈夫です。筋トレが趣味なものでして」零は重い荷物と『素人殺し』を包んだ袋を持って言った。
「筋トレですか!?」
「いやはや、わたくしボクサーを目指しているのもので」
「そ、そうですか。そちらの長い包みは何ですか?」
「望遠鏡です。わたくし、天体観測も趣味でして」ははははっと笑う。
「ここ都会ですよ!」
「都会の夜空もなかなか・・・。おっと、楽しみにしていた番組が始まってしまいます。それでは」
「ごゆっくり」
零は急いでエレベーターに乗り込む。
ふー、と息を吐いて暑かった帽子を脱ぎ捨て、髭も取り外した。ささっと髪を整える。
「変装も楽じゃないぜ」
行先を決めるボタンを押した。
60階ではなく、最上階の99階を。
エレベーターは恐るべきスピードで駆け上がっていった。窓からネオ朝日シティの夜景が全貌できる。なかなかいいじゃないか。
零は袋から『素人殺し』を取り出した。望遠鏡など入っていない。
99階に着いたらすぐに取り掛かる。
99階はスイートルームただ1つだ。他に部屋は無い。
殺しをするのにこれほどいい条件はない。
多分、ドアの前に1人SPがいるだろう。
まあ、問題ない。
チンっと音がした。
99階に着いた合図だ。
零は荷物を持ってエレベーターから降りて、薄暗く静かな廊下へ足を踏み出す。
廊下と言っても、短い通路の先にスイートルームがあるだけだ。
敵の根城、スイートルームの前に刺客はいた。
敵を目前に最後の難関。
ドアの前には、人間ではなく、ロボットがいた。
「どうも、私は対殺し屋用戦闘機M-125でス。誠意をもってあなたを抹殺しまス」
M-125はかわいらしさの欠片もない、冷たい声で言った。
第9話です。
冬休み暇なので小説ばっか書いています。どんどん更新したいと思います。
もうすぐ新年です。
思えば、僕が小説を書き始めたのって今年なんですよね。
何か変な感じ。ずいぶん前からやってる感じ何ですよね。
感想、アドバイスお待ちしています。
ではでは。