ヒロイン登場!
零の絶体絶命のピンチに彗星の如く駆けつけたツンデレ美少女。
6話目にしてやっとヒロインの登場である。
「安原・・・」踏みつけられながら零は言う。
「少し太ったか?」
「うるさいわ!今一番気にしていることを真顔で言うな!」
てゆーか、殺されそうになってる時に言うな!
「さーてと、始めるわよ」ツンデレ少女はストレッチをする。
「あんたが世界最強の殺し屋、如月流星ね」少女は如月を睨みつけて言う。
「なんだ小娘。こやつのガールフレンドか。けっけっけ」
「あいにく私は人を愛するということを知らないの。そんなやつ大嫌いよ」
ポニーテールの美少女は、そう言ってのけた。
彼女は、背中のかばんから何かを取り出した。
10本ほどの棒切れ。
美少女はそれを器用に組み立てる。最後に鋭利な刃物を取り付けて完成。
それは、組み立て式の槍だった。彼女の愛用武器『ピンキーラッシュ』。「いつの間に組み立て式になったんだ?」例によって踏みつけられたまま、零が尋ねる。
「ちょうど1週間と2前よ。かさばって仕方ないから」
彼女の名前は安原杏。
零とは同期であり、同じ高校2年生。ツンデレが売りの美少女である。
彼女は、簡単に言うと「アルバイトの殺し屋」である。
彼女はほんの小遣いかせぎに殺し屋になる。
小遣いを得るために人を殺す。
殺し屋を本業にするつもりはないが、やめるつもりもない。それが、安原杏。
「とりあえずそこから、どきなさーい!」
杏は『ピンキーラッシュ』を片手に俊敏な動きで如月の目の前まで移動する。
そして、如月の胴体めがけて薙ぎ払った。
当然ながら如月はよける。
解放された零はすぐさま床に突き刺さった『素人殺し』を回収した。
「さあ、第2ラウンドと行こうか」
今まで黙ってみていた地獄岬湊が如月の近くに行く。
「大丈夫?2人相手はきついでしょ」
「子供が余計な心配をするな。大丈夫すぎるわ」
「ふーん」
「ところで安原、ここへ来たのは会長の命令か?」零は聞いた。
「そうよ」
「会長も余計な事をしやがる」
「強がり言っちゃって。さっきのあんたの顔干物にしか見えなかったわよ」
「サザエに言われたくねーよ」零は鼻で笑った。
「誰がサザエよ!」
そんなことを言っている間に如月は糸を張り巡らせていた。
「やばい。あの糸の前では攻撃が通じねーんだ」
「先に言ってよ」
2人が同時に飛ぼうとした瞬間、また体が動かなくなった。
如月に睨みつけられたからだ。
くそっ。あれがあいつの能力か・・・。
しゃべることもできない。
如月が2人に近づく。
「貴様らはここで死ぬ。吾輩が殺す」
さらに近づく。
「吾輩の能力は『皇帝の目』<エンペラー・アイ>。睨みつけたものを5秒程度動けなくさせる」
最強の殺し屋という称号を得られた理由。
この能力のおかげだったのか。
並外れた戦闘力と「糸攻撃」、そしてこの能力があればそれも頷ける。
5秒が経ち、零と杏は動けるようになった。
「ふー。これは厄介ね」
「だけど殺す」
「珍しく気が合ったわね。私も今そう思ってた」
零は杏の腕を引っ張った。
「さあ来い」
『時の門番』発動!
零は杏を時のはざまに連れて行った。そう、時のはざまには本人以外も行けるのだ。
「どうするつもり?」杏は零を見つめる。
「今から10秒後の世界に飛び出す。そして如月の隙をついて一撃を浴びせる。それだけだ」零は人差し指を突き出した。
「だけど、糸が張り巡らされて進めないわよ」
「安原、お前の力を使うんだよ」
杏は気づいたらしい。頷く。
「この作戦に失敗したらおそらく死ぬ。本気でやるんだ」
「了解」
「頑張れよ」
零は杏の顎をそっとつかむ。しゃがみ込む杏の顔に立ったまま自分の顔を近づけ、
そっと口づけをした。
杏の顔が真っ赤になる。
「ううう、うん」杏は抵抗したが、拒絶はしていない。
長い口づけは終わった。
「何すんのよ」開口一番怒鳴った。
「ご褒美を前払いで上げたんだよ。喜びたまえ」
「どんなキャラだよ!」
2人は時のはざまから飛び出した。
部屋は糸だらけだ。
文字通りありの通る隙間もない。
どうやっても近づけない。
そう思われた。
しかし。
杏の能力が不可能を可能にした。
『絶対服従』<パーフェクト・コントロール>。人間以外の『もの』を下僕にする能力。
その能力で糸を下僕にした。
ただそれだけのこと。
杏はその瞬間にだけ、女帝と化す。
行く手を阻む糸たちは次々と引きちぎられていき、杏の通り道を作る。
そのあとを零が通る。
如月は呆気にとられている。理解できていないようだ。おそらくこの糸地獄を突破されたことが無いのだろう。
如月めがけて杏は落下していき、『ピンキーフラッシュ』を構える。
そして、『ピンキーフラッシュ』が突き刺した。
如月流星ではなく、地獄岬湊を。
杏の顔が血に染まった。状況を理解するのに数秒かかった。
湊が如月の身代わりになったのだ。
「湊おおおぉぉぉぉぉぉ!」如月はすぐに『ピンキーフラッシュ』を引き抜いて湊を抱きかかえた。
「ご、めん。お兄ちゃんがやられるの、み、見てられなかった」朦朧とした意識の中で湊が言った。
「今日はここまでだ。だが覚えていろよ。いつか殺してやる」如月はそう言い残して湊を抱いて去ってしまった。
「はあ、難は去った」杏は力を尽くしたように倒れこんだ。
「くそー!あの野郎今度会ったらぶっ殺してやる!」零はご立腹のようだ。
「で、レンタル料2時間分と交通費、あとボロボロになった衣装代をいただこうじゃないの」杏は手を差し出した。
「はい、お手」零は杏の手の上に自分の手を置いた。
「お前は犬か!ちゃかすな!」
「今年のツッコミ大賞はお前で決まりだ」
「ツッコミすぎて喉が痛いわ」
「うわっ」
2人は、崩壊した食堂を見て愕然とした。
「てゆーかあの王様大丈夫か?」
見に行くと、ヤブカラ3世は奇跡的に無傷だった。
「これにてヤブカラ王国編は終了!」
「まだ続くわよ!」
第6話です。
今回は書いてて面白かった。あの2人をもっと掘り下げていきたい。
もっと切れのある会話を目指して頑張ります。
ではでは。




