死闘
糸、繊維を細く長く引き伸ばしたもの。縫い物や編み物に使われる。
如月流星はそれを暗殺に使う。
目に見えない糸、というかかぎりなくピアノ線に近いものを自由自在に操り、対象物を死に至らせる。
そして、それをサポートする彼の能力。
が、
彼の能力は謎に包まれている。
「さあ、死闘としゃれ込もうじゃねーか、如月先生」零は『素人殺し』を引き抜き、特攻をかける。
「ふん、青二才め」
零は全力で走り、如月に一撃を加えようとするが、その如月は美しい黒髪をくくっている。
余裕の表情で。
零の特攻など彼にとっては幼稚園児のかけっこ程度の物なのだ。
零の攻撃はかわされ、如月はどこからか糸を取り出す。
「吾輩に勝負を挑んだこと、後悔するなよ」
「俺の人生後悔だらけなんだ。いまさらそんなこと後悔しねーよ」そう言って零は跳ぶ。
『素人殺し』を振りかぶり、如月に向かって振り下ろす。
如月は立っているだけだ。
防御しようともしない。
なめるなよ。
これなら当たる。そう思った。
だが、当たらなかった。『素人殺し』を確かに如月の頭上に振り下ろしたが、見えない何かによって塞がれているのだ。
よって、当たらない。
「なぜだ!」
零は途上に着地した。如月は一歩も動いていない。
「よく見るがいい」
よく見る?どういうことだ。何もないじゃないか・・・。
あ!
零は如月の頭上に張り巡らされた「何か」に気づいた。
「糸か・・・」零は言った。
如月は零が攻撃を仕掛ける一瞬の時間に糸を仕掛けたのだ。
それによって零の攻撃は糸に当たり、如月には届かなかったのだ。
くそっ。
格が違う。実力が違う。経験が違う。
違うことがありすぎて、零は勝てないのだ。
「がんばーれ!お兄ちゃん」湊が応援をしている。
なめやがって。運動会じゃないんだよ。
ここは戦場だ。
『時の門番』発動!
零は時のはざまに入り込んだ。ここなら安全だ。どんなことがあっても。
よし、1分後に如月の目の前に飛んで攻撃を仕掛けてやる。
あのいけ好かない顔に一発ぶち込んでやる。
如月の目の前に、いきなり零が現れた。
如月は一瞬驚いた、しかし、すぐさま切り替えてこの状況から脱出する方法を考える。
後ろのリュックザックからフックロープを取り出し、シャンデリアに引っ掛ける。
零が時のはざまから出て如月にパンチを浴びせようとしたとき、如月はロープで上に消えていた。
零は『素人殺し』を床に突き刺し、そのつかを足掛かりにして高く飛ぶ。
幸い糸は張っていなかった。
すさまじいスピードで如月を追いかける。まさしく、空中戦。
「如月いいいい。待てっ!」
それまで顔を上げていた如月が、不意に下を向いた。
いや、彼は下を見たわけではない、零をにらんだ。
体が動かなくなった。
拳をぶつけようとしても手が動かない。腕が動かない。肩が動かない。
如月ににらまれただけで、まるでゴルゴーンの如く。
そのまま零は自由落下する。
如月は零を逃がさなかった。如月もロープから手を離し、落下する。
意思を持った落下。
追跡するための落下。
糸で零の体を巻き付け、引き寄せた。
何もできない零の顔を殴った。計30回。目にもとまらぬ速さで。
そして、空中で30回殴ったあと、零を床に叩きつけた。
如月は零の上に着地する。
「ごほごほ、ごほ」零に激痛が走った。如月は零の顔を踏みつける。
「お前ごときが吾輩に勝てるか。身の程知らずが」如月は高らかに笑う。
「はっはっはっはっはっははっは」
こいつ・・・、サディストだ・・・。
徹底的に俺を痛めつけるつもりだ。
くそっ。
絶望的だ。
湯煙探偵増田の29巻も買えずにくたばるのか・・・。嫌だ・・・。
そんな時、救世主が現れた。
「もう、あんたは何やってんのよ。この世界の果ての果ての島まで何時間かかったか。はあ、ちゃっちゃと助けちゃうから、レンタル料2時間分と交通費、よこしなさいよね」
ポニーテールに大きな瞳、フリフリスカートの美女は言った。
ツンデレ美少女登場!
第5話です。
はあ、戦闘シーンは書くのが大変だ。僕の力不足です。
でも、書いてるのは本当に楽しいので良いです。
もっともっと精進します。
ではでは。