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見えない敵、見えない攻撃

 『悪魔の館』地下1階図書室にて、零と桜子は何者かに攻撃を受けていた。

「またかっ!」零は突然皮膚が裂け痛む腕を抑えて叫んだ。

「やっぱりおかしいよ!何で武器どころか敵もいないのに攻撃されるの!?」少しパニックに陥った桜子が泣きそうになる。

「落ち着け!さっきも言っただろ、これは能力攻撃なんだよ!」

零は動けなくなってしまった桜子の手をつかみ、本棚の間に隠れる。


 その時、物音がした。

人が素早く移動するよう足音。

桜子が何か言おうとしたので、零が自分の唇に人差し指を当ててそれを制した。

やっと手がかりをつかんだのだ。

やはりここには誰かがいて、特殊能力で攻撃してきているのだ。そして、その攻撃が当たらない場所に零達が移動したので、相手も場所を変えたのだ。


 つまり、『無敵の攻撃』じゃない!

攻撃できる範囲が決まっているのかもしれない。それか、零が本棚の陰に隠れたので「見えない攻撃」が当たらなくなったのかもしれない。

どちらにしろ、零にとってはチャンスだった。


 足音は零達がいる場所からそう遠くはない場所から聞こえた。

零が桜子に合図をし、静かに動き出した。

零の脇腹を銃弾が当たったような感覚が襲ったのは、その時だった。

ちょうど動き出した時。

「ううっ!!」

零は脇腹を抑えた。

「大丈夫!?」

「ああ」


 こうなったら少しの攻撃くらい喰らうつもりで特攻をかけるしかない。早く『相手』を探し出さなければ。零は桜子を置いて走り出した。

「どこ行くの!零君!」桜子が大声で言ったのは、零がかなり遠くに行った時だった。

零は何も答えない。

『相手』は桜子には一切攻撃をしない。だから、あそこに居ても大丈夫だろう。


 零が数えきれない本棚をすり抜けた時には、零は傷だらけになっていた。

何回攻撃されただろう?

それさえもわからない。

ただ攻撃をしている『相手』を見つけ出すためだけに全力で走った。

「どこにいるんだ!?」

もちろん答えはない。


 しかし、階段を上る音が聞こえた。

それは、ありがたすぎるくらいの答えだった。

「2階まで追い詰めればこっちのもんだ」

零は誰にも聞こえないようにつぶやいた。


 零は階段を2段飛ばしで駆け上った。ここまで全力で階段を上ったのは、昔、父である百次郎のつまらない話を聞かされて学校に遅刻しないように全力で走ったとき以来だった。

この前、全力で階段は『下っ』たけど。


 2階の海外小説が置いてある本棚の通路に『見えない敵』はいた。

そのありえないというか意外な正体に、零は目玉が飛び出した。

飛び出してはいないけれど。

 『見えない敵』の正体は、小さな子供だった。

黒いとんがり帽子を目深にかぶって、黒いマントに身を包んだ小さな男の子。

本当に小さかった。

120センチもあるだろうか?

あの『死神の鎌』の地獄岬湊より小さかった。

 一見すると、男の子のようだった。

目がくりくりしていて、かわいらしい少年だった。じっとこちらをにらんでいるが、あまり迫力がない。


 「お前みたいな子供が相手だったとはな」お説教をするように言った。

「お兄ちゃんだって子供でしょ」その子供は口を大きく開いて言った。

ムカ!

子供に子供って言われた。

「じゃあお前は因数分解できるのか?」子供相手にマジになってしまった。

「僕は微分積分だってできます」

「嘘をつけ!」

ていうか何で知っているんだ。

「お前みたいな赤ちゃんは家に帰ってママのおっぱい飲んでろ!」

「僕の母は地球です」

地球マザー!?壮大だな!」

「お兄ちゃんこそ家に帰って牛の乳でも飲んでなさい」

「俺の母親は牛なのか!?」

子供と喧嘩をしている高校生であった。


 「さあ、お前の能力を教えてもらおうか」零は子供に向けて指をさした。

「そんなにホイホイと自分の能力を教えるほど馬鹿じゃないですよ」子供は鼻で笑った。

子供だが侮れない。

うまくいくと思ったのに。


 子供は突然、零に指を向けた。手で銃をつくる形だ。

その瞬間、零の腹に見えない何かが突き刺さった。

腹から血が噴き出した。

「この野郎!」

零は余裕をぶっこいて立っている子供めがけて走った。そして、『時の番人』発動!

3秒後に零がいる場所にとんだ。子供が目の前にいる。

「うわあああああ!!」子供が叫んだ。


 子供はバカだった。能力をばらさないとは言ったものの、子供の行動で能力の正体は「バレバレ」だった。子供が零に向けて指を向け、零の腹から血が噴き出した。

その行動のおかげで、子供の能力のなんたるかを知ることができた。

 そう、子供の能力は「自らの手を見えない拳銃に変える力」だったのだ。

そうなれば今までの事は辻褄が合う。

子供はその小さいからだとそれに伴う素早さを利用して隠れ、その能力であたかも「四方八方から見えない攻撃が飛んでくる」ように見せかけたのだ。


 零はさっさと子供の腕をつかみ、能力が使えない状態にする。

「何するんですか!警察呼びますよ!」零に捕まれて空中で宙ぶらりん状態になっている子供はもがきながら精一杯抵抗した。

「警察を呼びたいのはこっちだ!お前銃刀法違反で捕まるぞ!」

「それはお兄ちゃんもです。剣とか槍とか持ってます」

痛いところをつかれた。

この少年、なかなかやる。


 零は子供を抱きかかえて、桜子のところに行った。1階でまだブルブル震えていた。

子供の姿を見た時は驚いていたが、一緒にエレベーター前まで向かう。


 動かないエレベーターの前で、零は子供に聞いた。

というか脅した。

「どうやって動かすんだ、コレ」

「あなた方みたいな悪党には算数しか教えません」

「算数は教えるんだ!」桜子が突っ込んだ。

零はブリキの剣を子供の首に突きつける。

「そこの小さい扉を開けて、数字版に1256と入力してください!」子供はすぐに白状した。

「早!」

寝返りの速さは世界記録を更新するだろう。


 パスワードを入力すると、固く閉ざされていたエレベーターの扉が開いた。

「これで上に行けるぜ!」歓喜の声を上げた零と桜子を乗せてエレベーター締まろうとした。

しかし、子供が『開』のボタンを押し、遮った。

「どうしたんだ?」

「僕も連れてってください」そう言って子供は頭を下げる。

「はあ?」零が怪訝そうに聞き返したが、桜子は乗り気のようだ。

「良いじゃない。連れて行きましょう」

桜子は勝手に子供をエレベーターに乗せた。

「待てよ!裏切るかもしんないぜ」

「大丈夫よ!こんなにかわいいんだもの」桜子は子供の頬に顔をすりつけた。

ため息をつく零。

「しょうがないな。おいガキ、名前は何ていうんだ?」

「僕の名前は長坂宇月ながさかうつき。6歳です」

「「えー!!」」

2人で絶叫してしまった。


 こうして、仲間が増えたのであった。

 第20話です。

「コロシヤステップ」も、ついに20話を迎えることができました。嬉しい限りです。

新しい仲間が増えた零一行。次はいよいよ地上での戦いです。

激戦です!

これからもがんばります。

感想、アドバイスお待ちしています。

ではでは。

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