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妹攻略

 重い腰を上げた黄泉川姉妹妹黄泉川悼美は姉とそっくりの冷たい目線を零に投げかけ、言った。

「自分がヘッドになるとか笑わせないでよ。あんたがなれるわけないじゃん。いつもそう思ってた。死んでよかったわ、あんな女」


 仲がよさそうに見えた黄泉川姉妹。

本当に偏見でしかないのだけれど、2人の姉妹は手を取り合って今まで必死に生きてきたという感じがしたけれど。

全然そんなことは無かった。

妹は姉を限りなく憎んでいたのだ。

表面だけの姉妹。

そういう表現がぴったりだった。


 だから、姉がどれだけ悲鳴を上げても、耳がもぎ取られても助けに行こうとしなかったのだ。いや、助けに行かなかったどころか、冷たい目で見ていた。

零は恐ろしさに身を縮めた。背中がゾゾッとする。


 「私は、姉のように甘くはなくってよ!」大きな眼鏡を動かし、威勢よく言った。

「ねーちゃんみたいにしてやるぜ!」零は『素人殺し』ではなく、ブリキの剣を構えた。

黄泉川悼美VS曲野零。


 「零君頑張って!」桜子が応援をしてくれる。

この階段を上るにはこの女を倒さなければいけないのだ。

「サンキュー」


 悼美は、姉のように電光石火で攻撃はしてこず、おおきなスカートの中から1冊の本を取り出した。

茶色い革表紙の分厚い本。

およそ戦闘には向いてい無さそうな道具が出てきて拍子抜けだった。

だが、能力に関する道具かもしれない。


 「おい、それなんだよって言う前に、何でスカートから出してんだよ。ドキドキするわ!」

純情な曲野少年だった。

「ここが一番いいのよ。相手を誘惑するテクよ」

「あいにく俺の好みはショートヘアなんだよ」

零が特攻をかける。

隙ありありな攻撃だが、それだけに威力も大きい。肩の傷が痛んだが、全力で疾走する。


 しかし、彼女は涼しい顔をして避けようともしない。

「うおりゃあああああああ」

悼美に向かって剣を振り下ろす。


 零は気づかなかった。

彼女が零が無駄な特攻をかけているときに本に何かを書き込んでいることに。


 零の攻撃が全然的外れなところに当たった。

悼美には当たらず、自らも気づかない間に悼美から30センチも離れたところに剣を振り下ろしてしまったのだ。

確かに狙いをつけていたのに。

いくら『素人殺し』ではなくても、こんな距離で外すはずがない。

能力だ。


 困惑している間に、悼美の膝蹴りが飛んできた。美しいフォームだった。

ドスッ。

鈍い音がして、零が吹っ飛ばされた。煉瓦造りの壁に激突する。

背中に衝撃が走った。

「痛ええええ!」



 ぱねえ。

女の子の力じゃない。零はとっさにそう思った。

「お前、男か」

「男じゃないわ!」彼女は胸を突き出した。女の子であることを証明しているらしい。

「まな板だ」

空からのこぎりが降ってきた。

「へっ?」

零はギリギリで避けた。

こいつ危険すぎる。

それ以前に何でのこぎりが空から飛んでくるんだ?それも彼女の能力のようだった。


 ちらっと悼美を見ると、すごい形相で零を睨んでいた。髪の毛が逆立っている。

やばいよ、それ。

怪物だよ。

「黄泉川さん、どうしたの?」

零が言った途端、空中からすごい数の武器が落ちてきた。

剣、槍、棍棒、トンファー、拳銃、ムチ、鎌。

「こんなの反則だぜ!」

避けるが、やはり当たる。

鎌が零の背中を引き裂いた。

学生服が縦に引き裂かれ、血が噴き出した。

「くそっ!」

「零君!!」

ヤバい。出血しすぎてる。

このままじゃ、死ぬ。


 それに、悼美の能力が一向にわからない。本が関わっているはずだが、攻撃が不自然な方向に流れたり、空中から色々なものが降ってきたり、法則性がわからない。

今まで出会ったことのない能力だった。


 「許せない。許せない。私を馬鹿にして」悼美がぶつぶつ呟いているのが聞こえる。

悼美はさっきの零の「まな板」発言が許せないらしい。

その発言をきっかけにして彼女の本性を目覚めさせてしまったらしい。

悼美覚醒。


 「てめえ、どんな能力なんだ・・・」出血に苦しみながら零が聞く。

「あなたには関係ない。殺してあげるわ」

悼美はまた本に書き込んだ。


 突然地面が揺れ始めた。地震が起きたのだ。

ドドドドドドドドドドドドドドド。

零はバランスを崩して倒れこんでしまった。

 悼美のところは揺れていないらしく、彼女は全力で零の前まで走り、回し蹴りを放った。


 零はそれをもろに喰らってしまった。

顔面に。

「ウグッ」

蹴られた零はまた壁にぶつかった。

一瞬ピンクのパンツが見えたが、そんなことを考えている場合ではない。


 とんでもない能力だ。

攻略法が見つからない。


 しばらく動けない零の前に立っている悼美は冷たい目で見降ろしてきた。

「謝りなさい。私を馬鹿にしたこと」

血管が浮き出て破裂しそうになっていた。

「嫌だね。板チョコ女」

零はハアハア言いながらかすかに言った。

零は、そういう男だった。

「わかったわ。あなたは殺して血を抜いて壁に貼り付けておいてあげるわ」

悼美がまた本に書き込んだ。


 彼女の手に一本の巨大な包丁が現れた。

魔法のように。


 悼美はそれを零の頭めがけて振り下ろした。

風を切る音が聞こえた。

「避けてええええ!」桜子が悲鳴を上げる。

零はそれを見事に避けきり、代わりに悼美の足を蹴った。

悼美はバランスを崩してこけた。


 血だらけでボロボロの体を無理やり起こして、食らいつく思いで、彼女が手放さない大事な本を取り上げた。

「返しなさい!」悼美は取り返そうと、すぐに立ち上がり手を伸ばしたが遅かった。

「お前の能力の秘密がわかったぜ」

悼美は零を睨む。

わかるもんなら説明してみなさい。そういわんばかりの視線だった。

「この本に書いたとおりに現実を操作する。そういう能力だろ。この本に書いたことは現実に起こる」

やっとわかった。

彼女の行動を見続け、至った結論だった。

彼女は驚いたように目を見開いたが、すぐに冷静になった。

「わかったからなんだって言うのよ!」


 VS黄泉川悼美戦、後半に続く。




 第17話です。

ずっと戦闘シーンでしたね。次回で決着がつく予定です。悪魔の館編はまだ続きますが。

あんぱん食べて書く力が湧いてきました。あんこは偉大な食べ物です(笑)。

これからもいろんな本を読んで勉強したいと思います。

感想、アドバイスお待ちしています。

ではでは。

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