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姉攻略

 「私は黄泉川姉妹の戦闘担当、姉の黄泉川祟よみかわたたり。梶田グループきっての策士兼武闘家よ」天井に張り付いていた赤い髪の女は地面に着地して言った。


 「私は黄泉川姉妹の知能担当、妹の黄泉川悼美よみかわいたみ。梶田元頭首の秘書をしておりました」階段の段で本を読んでいた少女は顔の半分を占めている大きな眼鏡をカチリと動かして言った。


 零と桜子は階段の前に立ちふさがる2人の姉妹を前に、息をのんだ。

この2人、かなり曲者だ。

何か禍々しいオーラが2人を包んでいる。この息のピッタリな自己紹介も異常だが、それ以外にも異常なところがあり過ぎる。


 「美人姉妹さん。ここを平和的に通してくれないかな」零はこちらを睨む2人の女に自信ありげに言った。何、こっちには切りジョーカーがあるんだ。


「それはできない相談ね。あなたを倒せば私がヘッド、この子が作戦部長になれるんだから。とーても悲しいけど、ここであなたを殺さなくちゃいけないの」

祟はちっとも悲しくなさそうに、むしろ、殺したくてうずうずしているかのように言う。舌を出して自分の持っている短剣をなめた。

ヤバい、祟姉さん異常だ!

零は危険を察知する。


 「ふふん。こっちには人質がいるんだよ!」零は威勢よく言って、ロープで縛られた桜子を見せた。

大げさに。

まるで救世主が参上したように。

桜子も、まんざらではないようだ。


 「あーん!助けてえ。殺されちゃう!」

よっ、名演技!

桜子は人質を見事に演じた。そこで、零も一肌脱ぐことにした。

「黙れ!この女がどうなってもいいのか!」零は白い桜子の首元に鎧から拝借した剣を突きつけた。

我ながら見事な演技だ。

「いやーん!怖ーい!」

桜子の演技は妙にエロかった。


 「さあ。そこを通せ!」

「嫌」

一言だった。

祟姉さんはけがらわしいものを見るかのような目で、一蹴した。

「へ?」

零もキャラに合わない声を上げる。

「この女が殺されてもいいのか」

「どーぞご自由に。その女の名前も知らないし。どうなっても関係ない」本当に冷たく、嫌味もこもっていない声で、そう言う。


 自分以外はどうなっても構わないのか!?

とにかく、この姉妹には人質作戦は効かなかった。

相手にもされなかった。


 零も桜子も演義はやめ、これは戦うしかない、そう思ったとき。

黄泉川姉妹、姉の祟が動いた。

紫色の短剣を持って素早い動きで襲ってきたのだ。零は瞬時に避けた。そして隙ができた祟の背中に剣で攻撃しようとした瞬間、彼女が消えた。


 そして、零の頭上に現れる。

気づいたときには遅かった。祟の短剣が零の左肩に刺さった。

「くっ!!」あまりの激痛に顔をしかめた零。

肩から新鮮な血が溢れ出てきた。

「零君!!」桜子が零の名を呼んだ。しかし彼女はロープで縛られていて近づくことはできても、他には何もできなかった。

「桜子!こっちへ来るな!」


 追撃をしようとする祟の短剣をギリギリで避ける零。彼女は素早く何回も短剣で攻撃する。

最初の内はすべて避けたが、もう限界だった。

今度は零の右腕をかする。


 零の両腕は血だらけだった。このままでは失血死をしてしまう。

零は彼女から離れ、冷静に考えた。

祟の能力はテレポート系だ。

テレポートで場所を移動し、軽い動きで少しづつダメージを蓄積しているのだ。

1発が致命傷ではなくても、小さな傷を10発つければそれに等しい。


 祟が急に零の後ろに現れた。幸い、瞬間移動するときは音がするので、何とか気づくことができる。

狭い廊下で、零は必死に避けた。

「ほらほら。いつまで保つかな?」

祟の剣攻撃を自分の剣で捌く。

小気味のいい金属音が廊下に響いた。

祟は、時にはテレポートを織り交ぜ、四方八方から攻撃をしてくる。

零はそれを全て察し、剣で受ける。


 妹の悼美は階段に座ってボーっと観戦しているだけだ。

悼美は戦わないのか?

それとも、姉よりも強いのか?

零にはわからなかった。

今この状況をどうやってひっくり返すか、それを考えていた。

こちらはまだ能力を見せてはいない。

不意をつけばダメージを与えられる。


 短剣での攻防を繰り返しながら、祟は口を開く。

「私の『天使の気まぐれ』<アンノウン・アピュアー>での四方八方からの攻撃、受けきれる?」

赤い髪をなびかせながら、汗を流しながら、彼女は言う。

「そうかい。俺は世界最強と戦った男だぜ」

彼女の顔が一瞬曇った。

やはり、世界最強、如月流星の名は強い影響があるようだ。


 零は祟の剣攻撃の隙を利用し、後ろへ飛んだ。

戦線離脱。

つかの間の。


 すぐさま『天使の気まぐれ』で零の目の前にやってくる。

今だ。

『時の番人』発動!

零は時のはざまに入り、3秒後に自分がいる場所に行く。

3秒後に零がいる場所は祟の後ろ側だった。

「何!?」

祟はすぐに振り返る。

しかし、零はもう彼女の肩にタッチしていた。

「タッチ!」

これで準備は整った。

「何をしたんだ!?」祟は何が起きたかわからず自分の体を慌てて見渡した。


 『時の番人』第2の能力。

『通行料』。

発動した途端、世界の時間が止まる。その中で動けるのは自分と能力を適応する相手だけ。

「おい!どうなってんだ?」動かなくなった悼美、桜子を見て祟が言った。

相手に触ることが条件だ。

その瞬間からいつでも能力を発動できる。


 「さあ、これから動き出す時間に戻りたければ、通行料を払いな」零は彼女の前まで行き、言った。

祟は短剣で攻撃しようとしたが、できなかった。零の前で剣が止まってしまうのだ。

この世界ではお互いに攻撃することができない。

「通行料ってなんだよ!」

「お前の体の一部だよ」

祟は絶句した。

そう、この能力を発動したら相手は、時間を経過するために、体の一部を『通行料』として差し出さなければいけない。

恐ろしい能力だ。

もっとも、それは同じ相手には2度と使用できない。


 「払わない場合には右腕を持っていくことにしている」

「そ、それだけはやめてくれ!」

「あと5秒、まあこの空間に時間と言う概念は存在しないが」

「5,4,3,2」

「わかった、わかった。この左耳を持って行け!」

「わかった」


 どこからか時間の番人、黒いコートに身を包んだ亡霊がやってきて、鎌で祟の耳をそぎ落としていった。

「通行料、確かに」零は悪魔のように微笑んでつぶやいた。


 時間が動き出した。

その途端、つんざくような悲鳴が鼓膜を振るわせた。

「耳がああああ!耳があああああああああ!!」

血だらけになった、自分の左耳があった場所を触って祟が叫んだ。

そんな事態になっても、悼美は平然として見ている。

声もかけずに。


 零は泣き崩れている祟に近づき、自分の剣で首を切り裂いた。

一気に祟の周りが血の海になった。

地獄絵図。

そんな喩がぴったりだった。


 「零君!大丈夫だった」祟の姿を見て少し驚いたようだったが、すぐに切り替えて零のもとに駆け寄った。

「ああ。何とか勝てた。次は妹さんだ」

零は悼美を睨む。

悼美はやっと立ち上がり、尻を払って言った。

「やっと死んでくれたわ。祟姉さん」



 第16話です。

1話で一戦を終わらせるというのはちょっと無茶で駆け足になっちゃいましたが、なんとか終わらせました。ちょっとえぐかったかな。

次はVS悼美です。

戦闘シーンを頑張ります。

感想、アドバイスお待ちしています。

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