かたき討ち
曲野零は友人の雨宮霧雨や三神夜鶴とともに紅町きってのレジャー施設、「紅シーサイドスプラッシュパーク」というダサい名前の遊園地に来ていた。夜鶴のチケットが余ったので零と霧雨を誘ってくれたらしい。零はドキドキだった。
ジェットコースターを乗り終えて死にそうになった零はベンチで休むことにした。
「大丈夫か?零」霧雨が隣でアイスをなめながら言った。
「だっ、大丈夫です!三神さん」
「はっ?。熱でもあんじゃないの?」霧雨が怪訝な顔をした。
零はあまりのドキドキに夜鶴に話しかけられたものと勘違いしたらしい。
恋をすると幻聴が聞こえることがよくあるらしい。
5分後、本物の夜鶴が数人の女子と駆けてきた。手にはアイスクリームを持っている。
「はい。曲野君の」
そう言ってミント味のアイスクリームを差し出す。
ゲッ。
零は真っ青になった。
零の嫌いな食べ物ナンバー1がミント味のアイスクリームなのだ。
「あ、あ、あ、ありがとう。俺大好物!」
何言ってんだ俺。
後悔をする零。
「よかった」
夜鶴からのアイスを断るわけにはいかない。男曲野零。愛する女のために一肌脱ぐときがきたのだ。
零はにこやかにアイスを受け取った。
ご丁寧に3段重ねだった。恐る恐る舌を出す。
「うわー。おいしそう」棒読みだった。
「もしかして嫌いだった?」夜鶴が零の挙動不審な態度を見て言った。
「まさか。世界で一番好きな食べ物さ!」零はパクッと食べてしまった。
「うえー」と言いたくなるのを我慢して飲み込んだ。
「大丈夫曲野君?むせているような気がするけど」
「だいじょーぶ!私AllRight!」またわけのわからないキャラになってしまった。
そのあと零達は様々なアトラクションを楽しんだ。
帰りがけ零が尿意を催し、みんなにトイレに行くと伝えた。
一番近かったショッピングモールのトイレに行くことにした。
さんざん迷った挙句、最上階のレストラン街でやっと発見することができた。零は基本的に方向音痴なのだ。
レストラン街に人はいなく、さびれた雰囲気がした。シャッター街と言うやつだろう。
急いで用を足した。
トイレから出ると、階段の前でこちらをじっと見ている男に気が付いた。
白いコートを羽織っている。
コートだけでなく、ズボンから髪の毛まで全身白かった。白い眼鏡をかけ、白いカラーコンタクトをしていた。やせていて細かった。
異常だ。
そういう感想しか出てこなかった。
そして、殺し屋の感からこいつはヤバいということを瞬時に悟った。
零は足早に男とは反対方向に進んだ。
あの男とはだいぶ距離を離すことができた。
と思ったら。
全身白の男は零の隣にいた。
馬鹿な。
20メートルはあったはずだ。そんな距離をこんな一瞬で移動できるはずが・・・。
零は全力で走った。あの男に追いつかれないように。
しかし気が付くと彼はすぐ隣にいるのだ。
能力者だ。
零は悟る。
多分移動系の能力なのだ。ということは、あの男は「殺し屋」。
何のために俺を追うんだ?
零は全力で走った。
走り過ぎて息が続かなかった。
「はあ、はあ、はあ」
もう走れない・・・。
白い男は余裕の顔で、一滴の汗も流さずやってきた。
「もう、限界のようですね」
白い男は、膝に手をついて動けない零に言い放った。
「私の能力『地獄の歩行者』に勝てるわけがないのです」
「私は『一歩』を『3歩』分移動できるのです」
だから、この男は俺に余裕で追いつけたんだ。一歩ふみだせば3歩分の距離を移動できるから。
「はあ、はあ、お前、何者だ?はあ」
「私は、とあるマフィアグループに雇われた『運び屋』。あなたを拉致するように依頼されました」
「『運び屋』・・・だと?」
白い男はパチッと指を鳴らした。
すると、どこからか黒いスーツを着た数人のがたいの大きな男たちが現れた。
その男たちは無防備な零を軽々と持ち上げて青い袋に詰め込んだ。
抵抗する気も・・・起きなかった。
「さあ木場。あれを使いなさい」白い男が木場という男に命令した。
「はい」
木場が念じると、零を包んだ袋は異次元の中に消えてしまった。
木場は次元能力者なのだ。
「あとは運ぶだけ」
白い男は手をぱっぱと払った。
そのころ、霧雨と夜鶴は、「曲野君遅いね」と心配していた。
零が目を覚ますと、そこは煉瓦で囲まれた部屋の中だった。手足は鎖につながれて自由に動かすことができなかった。
「くそっ。ここはどこなんだよー!」
その時、ドアが開いた。
第12話です。
新たな能力者が登場しました。これからも面白くなるように話を工夫していきたいと思います。ぜひ、読んでください。
今日はいよいよ晦日ですね。1年も終わってしまいます。
今年も充実してたなー。
感想、アドバイスお待ちしています。
ではでは。