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ネオ朝日シティホテルの脱出劇

 零はスイートルームの中に入っていった。

玄関とは思えない広さだった。進んでいくとリビングがあり、奥にも部屋が何個かあった。

標的ターゲットの梶田鮪の姿はない。

零はさらに奥へと進む。


 梶田鮪は寝室とつながっているバルコニーにいた。SPらしき女もとなりにいる。

2人とも必死にカーテンを繋ぎ合わせている。

廊下の音を聞いて、刺客が来たと悟り、脱出しようと試みていたのか。


 「悪いねえ鮪さん。俺はあんたを殺さなきゃなんねえ」零は静かに言った。

太ったはげの中年男は「ひいいいい」と声を上げてリビングの方へ走った。SPは失神寸前だ。

「遅い遅い遅い」

零はポケットから短剣を取り出した。

そして、梶田の方に駆け寄り、音もなく命を奪った。梶田の背中から血があふれだす。

女のSPも殺した。

証拠は残さず徹底してやる。

殺し屋とはそういう職業なのだ。


 彼はテーブルの上にあるティッシュ箱から1枚拝借し、短剣を丁寧に拭いた。

素人相手に『素人殺し』は使わない。

それが彼のポリシーだった。


 零は腕を伸ばし、「任務完了」と言った。

と、その時。

床が揺れた。

穏やかではない轟音が耳を貫く。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオ。

 零は床に倒れてしまった。

「なんだ?」

急いで立ち上がりバルコニーから下を覗いた。

すると、60階あたりから煙が上がっていた。

彼の脳裏にある予感がよぎった。


 爆発。

何者かがホテルに爆弾を仕掛けたのかもしれない。

だが何のために?


 それを考える時間はないようだ。

続いて爆発音がして、地震が起こったように激しく揺れた。

「ここにいたらこのおっさんと一緒にお陀仏だ」

零はすぐさま部屋を抜け出し、階段を駆け下りた。エレベーターは使用できないだろう。



 83階で足が止まった。

そこは、火の海だった。階段を下りることができない。

「どうする?俺」

零はこの状況を打開する秘策がないか考えた。

階段は使えない。

行けるのは廊下だけ。

だとしたら、唯一の道、廊下に出るしかない。


 零はひたすら廊下を進んだ。

どうにか下に行ける道はないだろうか?

どこにも、非常用エレベーターはおろか、階段さえなかった。


 見渡してみて唯一の脱出経路はただ一つ。

窓だった。

跳び降りるしかない。

 

 零は窓を割り、深呼吸をした。

失敗したら、死。

でもここにいたら死しか待っていない。

なら行くしかない。


 「ふーー」

零は勢いよく窓から飛び降りた。

見渡す限りの宝石の海。きらきら輝くネオ朝日シティの町だ。

零が飛び降りた瞬間、83階が爆発した。

あっぶねー!

焼き人形になるところだった。


 しかし、このまま落下していけば待ち受けるのは死だ。

零は背中から『素人殺し』を引き抜き、ホテルの外壁に思いきり突き刺した。

何とか刺さり、零は剣にぶら下がっている状態になった。

風が強かった。気を抜けば地上にまっさかさまだ。

3回目の爆発が起きた。今零がいるところよりも少し上の階だ。

「急がねえと」

そこから零は目の前にある窓ガラスを足で蹴り、中に入った。


 そこは70階で、まだ火の手は回っていなかった。

人々が逃げ惑っていた。

零は急いで階段を駆け下りた。

何回も爆発したが、無事に1階にたどり着いた。パニックの波にのまれながら出口へ行く。


 地上からネオ朝日シティホテルを見上げると、大変なことになっていた。

あちこちから煙が立ち上がり、50階あたいからぱっくりと傾いていた。救護ヘリがうるさい音をたててホテルの周りを旋回する。

「とんだ大冒険だったぜ」零はつぶやく。

「ハリウッドスターにでもなろうかな」零はこの年で転職するそうだ。


 零は面倒くさいことにならないうちにネオ朝日シティを出た。

彼はまだ知らない。

この大冒険をきっかけにして、のちにひと騒動が起こることを。

 

 第11話です。

意味深な終わり方ですが次回あたりにその訳が明らかになると思います。

こういうやつが書きたかったので満足です。

ホテルを舞台にした脱出劇。

これだけで小説が1本書けそうですね。興奮しちゃう。

安原杏を主人公にした外伝的な短編も上げたいと思いますのでそちらもよろしくお願いします。

感想、アドバイスお待ちしています。

ではでは。

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