ネオ朝日シティホテルの戦い
超が付くほどの高級リゾートホテル「ネオ朝日シティホテル」99階スイートルーム前廊下にて、戦闘が始まろうとしていた。
「殺し屋」曲野零と対「殺し屋」用戦闘機M-125。
「ふん。ロボットが相手ってのは初めてだぜ。分解してやろうじゃねーか!」威勢よく『素人殺し』を構える零。
「あなたを抹殺します」サングラスをかけた、まるでガンタンクのようなロボットは言った。
いきなり、M-125が指先に穴の開いた手を零に向けて、銃を乱射してきた。
ドドドドドドドドドド。
すさまじい音が廊下に響き渡る。
「いきなり銃かよ!反則だぜ」零は『素人殺し』で銃弾を捌く。真っ二つに割れた弾丸がカーペットが敷かれた床にパラパラと落ちる。
「だが、燃えるねぇ」
零はこの状況を楽しんでいた。
ヤブカラ王国での激戦から1週間。
それは、彼にとって長い期間であった。
その間、戦闘ができなかった鬱憤をここで晴らしているのだ。
戦闘機は容赦なく銃の乱射を続ける。それを『素人殺し』で全て切りながらM-125に接近する。
「おりゃあああああああぁぁぁぁぁぁ」
零は全力で『素人殺し』を振り下ろす。
が。
全く効かなかった。
冷たい金属音がこだまするだけで戦闘機には何のダメージも与えられなかった。
それもその筈、M-125の体は鋼鉄でおおわれているのだ。
剣に鋼鉄が切れるわけがない。
いくら零よりも大きい大剣でも。
いくら『素人殺し』でも。
「ちっ、固すぎるぜおめーの体」
零は一旦距離を置くことにした。
しかし、零がエレベーター付近に後退した時、M-125はものすごい勢いで迫ってきた。
賢いロボットさんは遠距離戦はやめたらしい。
にしても速えー。
50メートル走どのくらいだろう、とか考えてしまった。
M-125は背中のボックスからサーベルを取り出した。
えーーーーー!!
あんた剣使うの!?どんだけ万能なの!?
ガ〇ダムか!
「おもしれーじゃねーか!お互い剣士ってわけか!」
M-125は俊敏な動きで攻撃してきた。
こんなのとてもじゃないけど避けきれねー。
零も『素人殺し』で応戦した。
カンカンカン!
剣と剣の打ち合い。
M-125はギリギリの所をついてくる。全て計算してやっているのだろう。
だが零も負けじと『素人殺し』で受け切る。衝撃が零を揺さぶる。
だがそれも快感だった。
ここまでの剣の打ち合いはしたことが無かった。
「気持ちいー。お前サイコーだぜ」
零は心の底からそう思っていた。
ネオ朝日シティホテル86階 バー「ウミガメ」。
99階で零とM-125が戦っているとき、「ウミガメ」で2人の男女が密会していた。
ツンツン頭のスーツ姿の男。
青い長髪でジャージを着た女。
2人はカウンターテーブルで酒を飲んでいた。
「どうだ?集まったか?」男は女に聞いた。
「ああ。ざっと20人程な。中には不死鳥もいる」青い髪の女は不気味な笑顔を浮かべて言った。
「どんな手を使ったんだか、聞くのも怖いぜ」
「身の毛もよだつ手段だよ。まさに地獄絵図」
「敵には回したくないねぇ」
「オレに味方はいないさ。世の中全員敵さ。あんたもね」
「怖い怖い」
「そういえば、あの女はどうした?」
「もうすぐ着くそうだ」
「相変わらず、ルーズな奴だぜ」青い髪の女はケッと吐き捨てる。
その時、後ろから声がした。
「じゃーん!苺ちゃんのとーじょー」
ピンクの髪の毛をツインテールにした、身長130センチのポンチョを着た少女は派手に登場した。
「遅すぎてラーメン伸びちまったぜ」女が不平を言う。
「ここはバーだよ」苺ちゃんはやさしくツッコむ。
「苺ちゃん。成果は?」
「だめだったー。千乗山の水仙さん強情でー、全然誘いに乗らなかったー」
「ちっ、あの頑固ジジイめ」
「まあとにかく。着々と準備は整っている」
「『世界の終わり』に向けてな!」
「やったー!」
そのバーには、そうそうたるメンバーが集っていた。
「殺し屋戦争」を勃発させた張本人、刑務所を抜け出したばかりの男、太刀奈美新。
世界の金の半分を所有する大財閥、「差篠原」を1夜で全滅させた女、吉良川好乃。
世界一の暗殺部隊「バーサーカー」を先導する指揮官、苺ちゃん。
この3人がいるだけで、世界が動かされてしまう。
この3人が力を合わせれば、世界は崩壊してしまう。
この3人がいなくなれば、世界が平和になる。
そんな3人だった。
零は今、絶体絶命だった。
零は床に倒れ伏せ、M-125はサーベルで喉を突き刺そうとしていた。
『素人殺し』は戦闘中に落としてしまった。
零は必死でこの状況をひっくり返す策を考えていた。
この機械には、剣攻撃が効かない。
機械?
機械を倒すことのできる方法。
それは、時間の経過だ。
零はひらめいた。
M-125を倒す方法を。
零は瞬時に剣をすり抜け、戦闘機の後ろに回った。
そして、M-125の太い腕をつかみ、能力を発動した。
「時の門番」。
M-125の時間だけを急激に進めた。
M-125の体は数分でさびてきた。見る見るうちに体のねじが外れ、鋼鉄の鎧が剥がれ落ちた。
ロボットの体は時間の経過によって見るも絶えないものになってしまった。
零の能力はこんなことまでできるのだ。
さびれて動かなくなった戦闘機を後にし、『素人殺し』を拾い、スイートルームのドアに向かった。
「お前とのバトル、楽しかったよ」
鍵のかかっていないドアのぶを回した。
扉が開いた。
そのころ、3人はホテルの駐車場に止めてあったスポーツカーを動かしていた。受付を過ぎて夜の街に出る。
「なあ、あのホテルには梶山の野郎がいたらしいな」吉良川は運転をしている太刀奈美に話しかけた。
「すでに手は打ってある」
「どんな手なの?」
太刀奈美は、後ろにそびえる巨大なホテルをちらっと見て、
「あのホテルごとドカンさ」と言った。
「いいねぇ」
第10話です。
だんだん話がこんがらがってきました。新キャラが3人も出ましたね。
この後主人公にどう絡んでいくか必死で考えています。
今日は一気に2話も更新したな。
よほど暇なんだな。
感想、アドバイスお待ちしています。
ではでは。