史上最強の親子喧嘩
夕暮市紅町、午後12時。こんな名前の街にも夜はやってくる。
紅高等学校の屋上に、親子はいた。月明かりに照らされて2人は向き合っていた。仲良くおしゃべりしているのではない。そこには、第三者が介入できないような険悪なムードが漂っていた。今から、親子喧嘩が始まろうとしていた。しかしそれは、ただの喧嘩ではない。
普通の親子がするようなレベルではない。
下手すれば死ぬ。
「おい親父、何で携帯の契約切ったんだ?」
そう言いながら蛇のように睨みつけるのは、学生服を着たトンガリ頭の少年。
この少年、普通に見えて普通じゃない。
名は曲野零。
職業は高校生兼「殺し屋」。世界をまたにかけ日々殺しを行っている。
右手に握るのは大剣。キャッチコピーは「全てを切り裂く闇の刃」。
「お前は最近喋りすぎだからな。この前請求書見て倒れそうになったわ」
こちらもかなりの曲者。曲野だけに。
浴衣姿の中年の男は曲野百二郎。
殺し屋の父親はやっぱり殺し屋で、通り名は「百戦錬磨の鬼奉行」。
まだまだ現役バリバリで働いている。
「ああ?」
「1ヶ月携帯使用禁止だ!」百二郎が宣言した、と同時に零が動いた。
「ふざけるな!!」
零は自分の身体よりも大きな「素人殺し」の剣を振りかざして百二郎に切りかかった。
刹那のスピードで。
たが、百二郎は軽く受け流し、肘で零を吹っ飛ばした。
零は柵に激突した。
「まだまだ若い者には負けんわ」百二郎は腕のホコリを払った。
百二郎は助走をつけ、屋上から飛び立とうとした。しかし、飛べなかった。
走路を大剣で塞がれたからだ。
ふりかえると、零は立ち上がっていた。
ボロボロになりながらも。
息を切らしながらも。
「親父、勝負はまだ終わってねぇんだよ」
その瞬間、零が消えた。
百二郎は悟る。
奴の能力が発動したのだ。
殺し屋の素質を持つものには、子どもの時に能力が発動する。零もそうだった。
「時の門番」<タイムキーパー>。それが零に与えられた能力だ。
百二郎は冷や汗を掻いた。
零は時間を自由に移動できる。いつ、どこから現れるかわからない。
1秒、2秒と時間が過ぎて行く。やけに時間の進行が遅い。
百二郎が鞄からメスを取り出した時、時の狭間から零が出てきた。
零は空中から殴りかかってきた。
百二郎は即座にメスを自分の腕に突き刺す。
ブスッと軽快な音をたて、血が噴き出す。
百二郎に壮絶な痛みが襲ったが、零も苦しみだした。
百二郎の能力は「自己犠牲」<オウンアタック>。自らが触れた相手に自分の苦しみ与える技。鬼奉行と呼ばれている理由はこれだ。能力史上最凶と呼ばれた。これをやれば、殆ど勝ちだ。
「くそっ」零は苦痛の声を上げた。
それでも一撃与えてやろうと、捨て身で突っ込んだ。
「おりぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
世界でたった一人の父だから、今まで一緒にいた父だから、殺し屋として尊敬した父だから、自分の能力が成功した時、百二郎が一瞬油断することを零は知っていた。
そのすきをついて零は拳を叩き込む。
百二郎の顔の目の前までパンチが飛んで来た。これは避けられない。
いくら百二郎でも。
その時、2人の戦いを中断するベルが鳴り響く。零は腕時計を見た。
液晶には、会長の姿が映っていた。会長が口を開く。
「指令だ」
今回挑戦するのは、殺し屋が主人公のファンタジーです。いつか書いてみたかった、こういうの。かなりはっちゃけた話にしたいなと思ってます。個性バリバリのキャラクターもつくりたいな。
何もかも始めてですが、面白くなるように頑張ります。
感想、アドバイスお待ちしています。
ではでは。