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Poesia

BLOEMENVEILING

作者: 路瀕存

繊細な霞のさなか、澪標がみえるころには、幾層もの国境をとうにすぎていた。時計の針どもはせっかちにも、すっかり傾いでいて、彼女らを語りうることばは、そばから劣化していった。


Karvanはどこから出でて、どこへむかうのか。とりどりの花卉は旅立ちの、身支度をととのえ離散する。再び離散する彼女らをして、畢竟、Bloemenveilingは、幾層もの霧のさなか、澪標のひとつ、国境の又国境のその又すきまにすぎない、未知らぬ名もなき通りの1つだろうか。


  空と吐息のあいだには

  豊かなるわたしのふるさとがある

  あれはいつの いかなる水べであったろう

  土くれのわたしを吸い上げて

  募る想いを

  かつて葉が覆う

  胡乱な陽射しのさなかで

  そこだけが

  それのみが

  永遠に

  わたしのふるさとであり

  わたしのふるさとであり続ける


そうしてKarvanは、どこへむかうのか。

不意に眩んだ行為にかまけて。


  地上では、眩むような“夏”と遭うだろう。

  茹だるコンクリから、煮沸される樹木から、

  けぶる蒸気がたちまち街を歪ませるから、

  影は用役を放棄する、視界はたゆたゆとろけている、

  そそくさ残像を畳む間に

  地べたのへりになりをへばりつけて。


  かくして彼女は姿を消した。痩せこけた蝋燭が、用役を果たしたあとに。しゃぼん色を湛え、滴らせば、泣き崩れて、そしてきえてしまった。遺る、拡声器をしても、届かない。そう、声も、詩も、なにもかもが、なにもかもを、とろかして、地に説き伏せるのだから。


  大地と大気に挟まれて

  ぎりりと呻り軋ませて

  おもえば

  なにを、して、い、る、の、で、 す、  か


されどAalsmeerは点描する、千紫万紅の、Chrysanten、Tulpen、Rozen、七百万の、一分の隙なくびっしりと覆う、八百万すぎの鉢植えの植物たちを刺繍として。過たず花ばなの間に、間に、喪に服すかげたちが、たとえば悪意であったとして、丁度、待ち侘びたものを憎めど、赦してしまうがごとく、届かない、悪意とて、善意とて、ころがされて、増幅されて、反射して、だれかをわるいやつらに仕立て、だれかを善球にして、そうでもあり、そうでもないことを、ついぞ蕩かしてしまうから、


地べたのへりになりをへばりつけて

アイロンプリントされた残像

圧縮された懊悩

装丁として 点描として

つとめて

しづかに

街は

記憶で出来ていく


こうして街は記憶した。Naivashaに群れるものも、Bogotá出のものも、みな、αγοράにあればCréoleとして、形も、意味も、在るべきすがたも、接合されて、剥落されて、souqからPazarへ、Pazarからmacheへ、はざまとはざまのあいだへ、群生する花ばなの1つとして。

※参考文献:

[1]John McMillan著・瀧澤弘和訳『市場を創る―バザールからネット取引まで』NTT出版、2007年

[2]Ken Steiglitz著・スティグリッツ著、川越敏司訳『オークションの人間行動学 最新理論からネットオークション必勝法まで』日経BP、2008年

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