地球は丸いらしい
夜空を見上げれば、星が動いているように見える。
地平線を見ても、この大地は平面に見える。
でも、実際は違うらしい。
動いているのは夜空の星ではなく、地球で、その大地は平面ではなく、球体なのだという。
地球は丸いらしい。
にわかには信じられない。
もちろん、観測や計算によってそれが証明されていることは知っているし、天動説や地球平面説を信じているわけではない。
でも、生まれてきた瞬間、どちらが正しそうかと問われたら、間違いなく見たままの世界の方だろう。
たぶん人類は皆、この間違った認識を経験している。
そして教育の中で現実理解を超えたこの世界の真理を知ることになる。
面白いことに、もしも独学で地球を観測すれば、星は動いているし、地面は真っ直ぐという結論になることだろう。
研究に研究を重ねた末の真実。
とうてい一人の人生で解決することはできない。
そんな大規模な事実を我々はものの数週間で信じ込む。
今となっては、世界がそうであることをたいていの人間は疑わない。
それは、地球が丸いという事実だけではなかった。
人間は、自分では確かめようのないものまで、誰かの言葉を借りて世界の前提にしていく。
いつしか人間は神の子となり、死後は天国に行くと信じ込んだ。
それが正しいか正しくないかを考えるより先に、それは物事を考えるときの前提になっていた。
それを疑うものは社会から弾かれ、異端者とされる。
この世界は疑うことを捨て、人として丸くなることで、はじめて回りだすのかもしれない。
そんな世界を私は信じられなかった。
自分で見た世界ではなく、周囲が信じたことが正しいのなら、
この世界はすべて戯言の類だ。




