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夏休み ー「夕立」と遊び場ー

作者: おりん
掲載日:2026/08/25

夏休み —「夕立」と「遊び場」—


迫力のある雷が鳴った。


大粒な雨が叩きつけるように降ってきた。


道路は一息に濡れて、すぐにコンクリートの濡れる匂いがした。


ざっと降ってさっとあがる。



隠れていた木の下から出てみる、もう大丈夫だ。


地面の上は蒸していた。


厚い雲の隙間から、また日が照ってくる。


蝉は夕立の間、鳴くことを休んでいたのかどうか分からなかった。


また広場に出た。




忠魂碑


けんけんぱーけんぱー。


けんけんぱーけんぱー。


夕立がやんだので広場に出ると、「けんぱ」がまたはじまった。


けんけんぱーけんぱー。


けんけんぱーけんぱー。


忠魂碑のいくつもの大きな石を登り、天辺の碑があるところまでいくと「いい景色」を眺めることができたが、彼にはできなかった。いつも同じところで怖くなって足が出なくなった。だから彼はいまだに忠魂碑からの「いい景色」を眺めていない。もうチャンスはない。かりに1人で登ったとしても、そんなことはあり得ないが、それでは成功したことにはならない。それにはみんなの承認が必要だ。


忠魂碑というのは、戦没者を慰霊する碑のことで、そんな場所で遊ぶこと、ましては碑に登ることは、罰当たりなことに違いなく、何度も何度も「遊んだらダメやぞ!」と大人たちから言われていたけれど、子供にとってはこれ以上の遊び場はなかった。そこには十分な広場があった。「けんぱ」や「缶蹴り」、「キックベース」、「ドッチボール」、「体力測定」、「陣取り」、「ヨーヨー」、「誰かがモンキーセンターに行ってきた話」、「スターウォーズの話」・・・・・いまはもう忘れてしまった遊びをした。


あれから何十年か経った・・・・か。いまはもう忠魂碑で遊ぶ子供はいない。毎年、お盆の時期にお年寄りたちが集まって厳かに式典をするだけだ。


彼たちは忠魂碑で遊んだ最後の世代だろう。


おやつは、農協の購買部でアイスなんかを買ってたべた。アイスは30円と50円のがあった。もちろん消費税はなかった。


朝のラジオ体操が終わって朝ごはんを食べてから集まりだし、昼ご飯のあとまた集まり、夕暮れになると帰った。


日の暮れは、家族が呼びにくる子もいた。


「次郎!ご飯やぞー」「太郎!帰っておいで」


彼はいつも姉が呼びに来てくれた。



それが夏休みの間繰り返された。



けんけんぱーけんぱー。


けんけんぱーけんぱー。




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