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日常乖離―反射する、正しい世界

作者: mousempire
掲載日:2026/02/27

いつからだろう。

不透明なガラス窓、廊下に広がる薄汚れた白の床材、頭をかち割れそうなタイル群、そして組み合わされた木目調の長方形の集合体…それぞれがあみだくじのできそうな線の背景となっている。

それらは僅かながらでも周囲を反射し、歪に映し出す。

私は思った。


寧ろ、これらの反射物…境界面の世界こそが現実だと。


どんなに実態として視界に収まったとしても、どんなにそれらしい現実でも嘘を隠した偽物だ。特に、ワックスの効いた教室付近は実に正確な現実を映している。

学校というのは本当に歪んでいる。

 歪 という漢字を分解して不正だ。

反射された物体は全て的確に映し出されている。


トットットッ…。コッコッコッ…。

おはようございます。

「うっす。」

顔を先生に向けつつ、チラッと境界面に視線をやる。スニーカーの足部から頭部につれて徐々にぼやけていった。

顔は蛍光灯のせいもあり誰だか分からなかった。

スーッ。

トットットッ…。

ガラッ、ドン…。トッ、トッ。ガラガラ…。

トットットッ…。

ガタッ。ガガッガッ。

教室で席に着いた私はクラス中の机という境界面に注目する。蛍光灯に実体が照らされ、生み出された人影が蠢いていた。時に映し出された現実に被さるも、ただ歪な現実に重みが加わるだけで大した影響はない。

……でね、、今日の一限、自習ね…え、男テニでしょ…キャハハッ…イヤッハッハ、マジで言って…違うでしょ…それでもうちゃんに話しかけたらさ…公共次第でトップ10はいれるんやって…キャァァァァァー、おい煩いぞー。

「そんな浮かない顔すんなって。いつも言ってるだろ。」

僕は目の前の虚像を凝視する。別にそんなことはないのだと伝える。

「移動教室だからはよ行くぞ。あー、そうだったあ!1時間目自習だわ。」

あっそうなん?そもそも何の授業だっけ。

「数…Cだね。」

おけ。

僕は腕時計を見つつ、彼の虚像をその中に収める。

あぁ歪んでいる。

でもマシだ。彼の顔はほとんど変わらず映っている。

「教科書要らないかなあ…一応ワークだけあればいっか。」

タッタッタッ…。

廊下に出ると不正をしたセイト、所謂バケモノたちが狂ったように喚き叫び、その姿だけを偽っていた。

友人と雑談し、境界面の現実と比較しながら一限の教室へ向かう。なんだあのメガネは。身ぶり手ぶりが歪んでいるじゃないか。うわ、あの坊主頭は何もかもが真っ黒だ。

ダダッ、ガサッ。バサッ、ガッ、バラバラバラ…カラ、カラッカラッ…。

あっ。

「ちょ、何してるん。おもろすぎ。」

思わず教材やら文房具やらを落としてしまった。プリント類をかき集めるためにかがみ込む。やっちゃったなぁ。

すぐに拾い集め…。


どうして気づかなかったんだ。

気づいてやれなかったんだ。

境界面に映し出された、自分の姿。


…この歪んだバケモノは私なのか。


何て醜いんだ。


それからというもの、私は鏡やガラス、タイルやワックス掛けのある廊下を見れなくなった。

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