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竜使いの鎮魂歌 ~空の覇権が人に移る時、少女と竜は空を翔ける~  作者: 春待 伊吹
第2章

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第73話「奪われる声」

パピト島奪還作戦が始動した。

静かに、だが両軍ともに犠牲を覚悟した上での大胆かつ緻密、総力戦の動き。


シーレイアにとっても、ローチェにとっても、この戦いが南部戦線の分水嶺となる。

お互い、そのことを認識していた。


パピト島東部、アクルに近い北側沿岸。

その沖合を、西へ向かって空母 《コタンコロ》が進んでいた。


ホニーに伝えられていた最初の任務は、パピト島東部の航路要衝——レシャス海峡への新型機雷の精密投下。

夜間、敵に気づかれずに高高度から精度を維持して投下せねばならない。


——前哨戦であり、陽動。

だが、敵海上戦力を削ぎ行動を制限する重要な任務だ。


今回も《シューティングスター》作戦と同様、16機編成の爆撃機編隊が出撃する。



深夜。月は満月。

明るく照らす月明かりの下、次々と爆撃機 《カグラ》が甲板から発艦していく。


(満月か……見やすくはあるけど、それはこちらも見つかりやすい。対空砲火には注意しないと)

ホニーは、これで3度目の夜間作戦の先導役だった。


《こちらテンペスト。レシャス海峡へ向かう。これより無線封鎖を実施、私の先導に従ってください》

共鳴魔法での通信が、編隊の全機に伝わる。


静かな夜空を、16機が縦列で滑るように進んでいく。



レシャス海峡まで、残り100km。


《これより先行し、作戦海域上空の偵察に入る》

そう告げると同時に、ホニーは高度を上げて単独で前方へ飛び出した。

ホニーは作戦空域の近くにきてふと精霊の様子が少しおかしいと違和感をもつ。


だが、それ以上に目の前の光景に驚いた。

(このあたり、いつもなら……暗いはずなのに)


しかし、視界に入ったのは地上から空へと向けて走る光。

動き回る光の線、交差する軌跡。


(……探照灯)

満月の光ではない人工的な明かり。

地上から、空の隅々まで照らそうとする、強力な光源が動いていた。


それだけではない。

機械的に、正確に照準を追うような挙動。


完全に夜間奇襲を察知した警戒態勢がレシャスは整えられていたのだ。

(この警戒態勢じゃ……あの狭い海峡に投下は不可能だ)

ホニーの判断は即座だった。


《作戦中止、全機帰投せよ》

作戦失敗、この警戒態勢の中強硬したとしても機雷投下ができる可能性は低い。

なにより機雷投下がばれては効果が薄い。


だが、共鳴魔法で伝えるが反応がない。

一部の機体は進路を変え始めていたが、ほとんどの爆撃機は、なおもレシャス海峡へと進んでいた。


《作戦中止!全機帰投するように!》

再度ホニーは叫ぶ。だが動きに変化は——ない。

(なんで!? 反応がない!?)



その時だった。


ドン——!


夜空に、爆発音が響く。

視界の端で、一機の爆撃機のそばをかすめる。


地上からの対空砲火。

探照灯で位置を正確に割り出された上での砲撃だった。


ホニーは急いで無線封鎖を解除した。


「全機撤退、即時帰投する!」


「了解、帰投する!」


今度は各機からの応答が一斉に返ってきた。

(……共鳴魔法が、通じなかった?)

ホニーの脳裏に冷たい疑念が走る。


敵に探知されないための相手を指定した——共鳴魔法。

その魔法が、味方に届いていなかった。


(妨害か、干渉……? でも、どうやって?)

帰還する空の途中ホニーの中で、じわりと恐怖が広がっていく。


作戦は失敗。

機雷の投下は行えず、レシャス海峡への封鎖工作は無為に終わった。


だが——幸いなことに、爆撃機部隊は全機、生還した。


それでも。


レシャスに来た時に感じた精霊の違和感。もしかして、あれがー


共鳴魔法の封殺。

それは、単なる通信障害ではなく、シーレイアの魔術体系そのものへの干渉を意味する。


ホニーの胸には、一つの確信だけが残された。


(ローチェは、私たちの“声”すら奪いにきている)


敵は、見えない場所で進化していた。

精霊制御、いや精霊支配という精霊すらひれ伏す域にまで、現実的な対抗手段を持ち始めている。


「……これ以上、甘く見ていたら」


ホニーは月明かりの中で、唇を噛みしめた。


奪還戦はまだ、始まってすらいない。

それでも、確実に“何か”が変わろうとしていた。



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