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竜使いの鎮魂歌 ~空の覇権が人に移る時、少女と竜は空を翔ける~  作者: 春待 伊吹


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第68話 閑話「お見舞い」

【アマツ新聞】


『シューティングスター成功 南部諸島奪還へ作戦始動』

昨日、シーレイア危機管理局は、極秘裏に進行していた夜間爆撃作戦オペレーション・シューティングスターが成功し、南部諸島奪還に向けた準備が整いつつあると発表した。


作戦は、星渡りテンペスト卿率いる爆撃部隊が、敵軍の後方支援拠点と化していたダッカ基地に対して奇襲攻撃を敢行、航空機・弾薬・食料の各種補給拠点を破壊したものである。

これにより、敵主力はダッカ以西への前進を阻まれ、インスペリ・タベマカ両軍の前線は後退を余儀なくされた。

避難船護衛、アクル奪還に続き、テンペスト卿の一連の作戦は“星渡り”の名にふさわしく、神話と現実を結ぶ象徴として国民に強い印象を与えている。



『テンペスト卿、コアガルで同盟再確認 潜水艦攻撃作戦成功』

一週間前に実施された同時攻撃作戦オペレーション・ファイアーフラワーが成功を収めたことが、危機管理局より正式に発表された。

本作戦は、同盟国コアガル沿岸を占拠する敵艦隊に対し、当国が投入した約50隻の潜水艦が一斉に攻撃を行った大規模作戦である。

作戦成功を受け、テンペスト卿は外交官としてコアガルを訪問。国王および首相との会談を通じて、両国の同盟の強化と航路再建の合意を得た。

今後、コアガルとアクル間の航路回復が見込まれ、南部諸島に向けた本格的な共同作戦の準備が進められる予定である。


「流石ホニー先輩……新聞の一面に写真付きか」

ハレ・アツタは、病院のベッドに横たわったまま、記事をじっと見つめていた。

ホニーと別れた後、超弩級潜水空母 《アマツ》は母港・霊都を目指していたが、出力音の大きさが仇となり、敵の爆雷攻撃を受けて中破。艦はドック入りし、ハレも骨折と裂傷で応急処置ののち神都へ後送されたのだった。


「入院したら、ホニー先輩が見舞いに来てくれるなんて……」

少し照れながらつぶやいた。


ハレが入院したことが神都に戻ってきたホニーの耳に入ったのだ。

アクルに戻る前、ついさっきホニーがお見舞いにきていた。


ハレが浮かれていたその瞬間、病室の入り口から声が飛ぶ。


「お前、ホニーの何だ?」

声の主は、片腕に大きな傷跡を持つ男。リハビリ用の支柱に寄りかかっていたその男に、ハレは一瞬怯みながらも答えた。


「えっ……その……以前の部署の先輩です。僕にとっては恩人みたいな人で……」


男は一瞬だけ睨んだが、すぐに誰か分かったように笑う。


「お前が、ハレ後輩か! 俺はグラル。ホニーの兄貴のグラルだ!」

一転して笑顔を見せた男に、ハレは思わず敬礼してしまった。


「ホニー先輩のお兄さんですか! ハレ・アツタです。よろしくお願いします!」

「お前、ずいぶん怪我したな。早く治して復帰しろよ。」

グラルはハレの怪我を気にかける。


「ありがとうございます。グラルさんはもう?」

「ああ。俺は、ようやく完治した。これから戦線に戻る」

軽い調子で言いながらも、グラルの目には、深く燃える“復讐”の炎が宿っていた。




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