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竜使いの鎮魂歌 ~空の覇権が人に移る時、少女と竜は空を翔ける~  作者: 春待 伊吹


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第20話 閑話「憧れのヒーロー」

【竜龍新聞】


『テンペスト卿、テンシェン国にて新型機を翻弄』

先日、神託によってテンペストの名を授けられたホニー・テンペスト・ドラグーン卿(14)が、外交任務でテンシェン国の首都コーロンを訪れた。

空路での到着直前、テンシェン側の新型飛行機による威嚇飛行が行われたが、テンペスト卿は冷静に対応。高高度での宙返り機動によって背後を取り、同行者であるオオクラ外交副局長の安全を確保した。


当局によれば、今回の一連の行動は「高い技量と判断力を示すものであり、我が国の竜使いの質の高さを内外に示した」と評価されている。



『テンペスト卿、星環海横断へ 前人未到の挑戦』

政府は、テンペスト卿が前人未踏の星環海単独横断飛行を行う予定であることを発表した。

本挑戦は、単独飛行・補給なしでの長距離飛行を要する極めて危険な挑戦であり、過去30年にわたりシーレイアでは挑戦者が現れなかった領域である。

もっとも近い挑戦はレコアイトスの竜使いが5年前に行ったが飛行途中で断念している。


テンペスト卿は、神託による拝命、鎮魂祭での献身、そしてテンシェン国での飛行任務を経て、国民からの期待を一身に背負う存在となっている。

関係者によれば、本人は「自分の行動で誰かの希望になれれば」と語っているという。


一方、若干14歳の挑戦に対し、国内外からは安全面への懸念の声も上がっている。

飛行計画の詳細については、後日改めて発表される見通しだ。



***

「ラシャ姉、またホニー姉が新聞に出てるよ!」


小さな声が部屋中に響き、ラシャ・ドラグーンはソファから顔を上げた。

目の前には、新聞の切り抜きを両手に広げた弟・ナーグルの姿。満面の笑みでこちらを見ている。


「今度はね、空でぐるっと回って、敵の後ろ取ったんだって!」


「その時のホニー、私も見てた。流石だったよ。」

ラシャは同行したテンシェンでの出来事を思い出しながら答える。


「ラシャ姉いいなー、僕もホニー姉とマートのかっこいいとこ見たかった。もっと教えてよ!」

ナーグルはホニーの活躍をもっと知りたくラシャにせがむ。


ラシャは久々にアクルに帰省していた。

帰省した実家はテーブルにも壁にも、ホニーの記事の切り抜きが溢れていた。


「ナーグル、新聞はちゃんと片付けなきゃダメでしょ?」

優しくたしなめながらも、ラシャは少しだけ苦笑する。これだけ夢中になっていると、もはや注意する気も薄れてくる。


「だってさ、島のみんなが毎日くれるんだもん。『今日のホニーちゃん』って言って!」


「そっか。ホニーはご近所公認アイドルね。」

ナーグルはラシャの言葉など気にも留めず、次の記事を広げて目を輝かせている。


「ホニー姉が空飛んでるとこ、かっこいいもん。ぼく、全部取ってあるよ!」


「じゃあ、私も新聞に載ったら切り抜いてくれる?」


「うん! ラシャ姉も頑張ってね!」


「……うん、多分ないと思うけど。期待してるよ。」


ラシャは苦笑しながら、床に散らばった切り抜きを拾い上げる。

ナーグルにとってホニーは、誰がなんと言おうと最高にかっこいい“ヒーロー”なのだ。


その純粋な笑顔に、ほんの少しだけ羨ましさを感じるラシャであった。

(私も上に掛け合って、広報任務出れるよう頼もうかな……)



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