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07. アメリ、ミーナと正面からぶつかる

 アメリが王子と舞踏会へ行った次の日、教室の前で睨みつけられた。


 ミーナだ。


「ちょっとよろしいかしら?」

「はぁ」


(よろしくなくても、断れないんでしょう)


 ミーナは背中を向けて歩き始めた。アメリはその後ろをついていく。アメリはミーナと話すのは、これが初めてなのだ。


 まさか、王子がデートしていた女と2人きりで話すことになるなんて想像もしていなかった。ミーナの反応からも、楽しい話では無さそうだ。


 ミーナは空いている教室に電気もつけずに入った。アメリは少し躊躇したが、入るしかなかった。ミーナは教室の中程まで歩いていったので、アメリは素直について行った。


 するとミーナはアメリの方へ向き直り、食って掛かった。


「あんた一体何をしたのよ?」

「⋯⋯えっ? どういうことですの?」


 アメリは混乱した。どちらかといえば、アメリは王子と婚約しているのにもかかわらず、ミーナは王子へ近づいてデートを始めた。そればかりか舞踏会にも国の行事にも王子と一緒に参加をしてアメリからその機会を奪い去ったのだ。


 どちらかと言えば、アメリは“された方”だと思っていたので、首を傾げていた。そのアメリの反応にミーナは表情を変えない。


「王子はあんたに婚約破棄を言い渡して、私と結ばれるはずだったの! だってフラグは完璧に回収したはずだもの⋯⋯それなのにシナリオが変わった」

「⋯⋯フラグ? シナリオが変わる?」


 アメリはミーナの豹変した態度にたじろいだ。いつも猫なで声で王子に話しかけていたが、今はライオンのように牙をたてて噛みつかれそうな勢いだ。

 ミーナはアメリの反応に怒りを荒げる。


「本当なら舞踏会には私が呼ばれるはずだったの! それなのに私よりあんたのことを優先させた。しかも⋯⋯王子に終わりにしようって言われたのよ! どーしてくれるの?」

「⋯⋯ん?」


 アメリは頭の中でミーナの言葉を必死で理解しようとする。なぜ私は責められているのだろう⋯⋯?


(フラグ? シナリオって何かしら? もしかして私の知らない意味でも含まれているのかしら?)


 ミーナはアメリの態度が気に入らないようだ。アメリにさらに近づいて尋問する。


「あなたは王子のことが好きなの?」

「えっ⋯⋯」


 アメリは即答できなかった。ここ何日か巡るましく変わる王子との関係にアメリ自身が戸惑っていた。


 正直、アメリは自分の気持ちが分からなかった。


「正直、私も王子から婚約破棄されるんじゃないかって思ってたの。あなたとは仲が良さそうだったし、私には王子と合わないかなって思って⋯⋯」


 アメリは正直な感想をミーナに伝えた。 


「そうなの? それなら良かった!」


 それを聞いたミーナは表情をぱっと明るくした。


「でも今は王子もすごく変わったわ。今では熱心に勉強しているみたいだし⋯⋯それに⋯⋯」


 今は王子のことをそんなに悪くはないかなと思っていた。


「明日、最後のフラグがあるわ」


 アメリはミーナの目を見つめる。するとミーナは勝ち誇ったような目に変わった。明日何かが起こるらしい。


「前に一度攻略を失敗して、舞踏会に呼ばれないことがあったの。その時にこの最後のイベントを見つけたの」


 イベント⋯⋯これにも何か知らない意味があるのだろうか。


「⋯⋯⋯⋯」


 アメリは何も言わずにミーナを見続けている。ミーナは最終宣告のように黒い笑みを浮かべて短く言い切る。


「婚約破棄よ」


 アメリの心臓はどくんと鳴った。王子と始めたゲーム、ルールは婚約破棄と言ってはいけない。


「王子は婚約破棄とは言わないわ」

「言うのよ。明日、お昼のカフェテリアで伯爵家の男の子が婚約破棄を宣言する。それを見た王子も確信するの」


 アメリの目は泳いでいた。ここまで確信があるように話すミーナは胸を張ってアメリを見下ろしている。アメリは自信を持って否定できる言葉がなかった。


「⋯⋯嘘よ」

「これは避けられないわ。だから婚約破棄される心積もりをしておいた方がいいわよ。私だってあなたにむせび泣かれたらさすがに心苦しいわ」


 アメリはそんな事を言う割に楽しそうなミーナを睨みつけた。


「何でそんなに自信満々なのかしら?」

「フラグの力はそれだけ大きいってことなの」


 アメリはそれを聞いて眉をひそめた。何度も出てくるその言葉にアメリは何度も引っかかる。


(フラグの力?)


「あなたもしかして、魔法使いの類なの?」


 それを聞いたミーナは地団駄を踏みながら焦れた。


「違うわよ! 王子があんなに変わってあなたから離れて私と一緒にいたのをあなたも見ていたでしょう? あれがそうなのよ」


 アメリはミーナと出会ってからの王子を思い出していた。高飛車な態度はあったが、婚約している相手がいても目移りする方ではないと思っていた。王子曰く「男に二言はない」って言ってるし、筋は通したい方に見えたのよね。


 それがミーナと言う“フラグの力”なら納得だ。


 アメリはそう考えて頷いた。そしてミーナの方をじっと見る。


「後は王子次第ってことね」


 アメリは自分ではどうすることも出来ないことを知った。これはもう覚悟をするしかない。それを聞いたミーナは満足そうな笑みを浮かべた。


「そういうことっ!」

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