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召喚刑事  作者: 肺腸
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召喚刑事 7

『2億年の歴史を持つ始祖妖精ハイエルフの文明においても戦争や犯罪のない時代は存在しない、それが残酷な現実だ』

『生物は所詮生存競争のなかで生き抜いていくものだ、争いのない世界なんてどこにもない』

 リサリーの言葉に永倉は苦笑で応じる

『しかし、永倉はその秩序を守る側の職業についていたのだろう?疑問を持ったことは無いのか』

『俺は性善説を信じている、疑問など持ったことは無い』

『永倉さんは理想主義者のようですね』

ロゼは皮肉でもなく淡々とつぶやく

『リサリー捜査官と良く似ています』

『―――』

リサリーが反論しようとする間もなく、ロゼは片手をあげる

『さあ、目的地に到着しました』


 その妖精エルフの閑静な高級住宅街と説明されていた場所は永倉にとってはまるで森林公園のようだった。

長い時間を車内で話していた感覚はあったが、一体どれほどの距離を移動していたのか、

見渡す限りの木々の緑の中に中世の城砦を思わせる石積みの家屋が点在している。

庭園のような街路樹を手入れしている自律人形の姿が観えていなければ、時間軸まで移動したかのような風景の変化だった。

石畳の道を歩き一軒の屋敷に入る。

『ここが現場なのか』

永倉は灯りのない薄暗い室内を視まわすが召喚された場所とはいえ、すぐに気絶してしまったため、見覚えらしきものはなにもない。

『そうだ、すでに情報保存は完了している。自由に視て回ってくれてかまわない』

リサリーのいう情報保存がどういうものかよくわからないが永倉は取り合えずいつも持ち歩いている手袋をはめる

『灯りは無いのか』

『すまない、今現在この屋敷は星霊の流れをとめられている、よって術式が使えない』

『私の内蔵霊力を使いましょうか』

ロゼの意見にリサリーはしばらく考え込たあとに頷いた。

『私の端末に連結してくれ、できるだけ消費の少ない方法を試してみる』

しばらくしてライトのような白い明りが室内の一部を照らし出した、

永倉が光源を確認しようとリサリーの手を視るがそこには何もなく彼女の手のひら自体が発光しているだけだった。

『身体から放射されている体温を可視化しただけだ、あまり広い範囲は照らせないが辛抱してくれ』

永倉は『十分だ』といい室内の探索に入る、リサリーのに当時の状況を確認しながら自分が倒れていた場所に立つが、床には血痕も何も残っていない。

何気なしに刺されていた背中側の傷のあった場所に手を置き、そこではたと思いだす。

『俺の所持品を返してもらったときに、俺の背に刺さっていたナイフがなかったのは凶器だから証拠物件として押収されていると思って訊かなかったが

あの現場で他に異世界からの物品が押収されているか?』

リサリーはロゼと顔を見合わせ、ロゼが答える

『…発見されたのは、人類の男性のものと思われる右手だけです。しかし永倉さんの背にあった刃物の指紋とは一致していなかったために

鑑識で一時保存されたあと、研究のためコルム医師の元へ送られています』

『永倉の話であればその手が、犯罪者の鮫崎のものなのだな』

リサリーの問いに永倉は首肯し

『しかし問題はその右手そのものじゃない、鮫島が持っていたはずの拳銃だ、あの武器はこの世界でも危険すぎる物だろう』

永倉は簡単に拳銃の仕組みを彼女たちに説明し

『鮫島は中国製の安価で質の悪い拳銃を好んで使っていて、使い捨てとして複数持ち歩いていたらしいが、摘発されるような隙は見せなかった』

と苦々しく語る。

『君が俺に知識が力になると教えてくれたように、奴はそれの使い方をよく理解していた、敵対する者の弱みを利用することに長けていた…

右手を失ったとはいえ、すぐに治療をすれば死ぬこともないだろう、元の世界で鮫島を検挙出来ないのは心残りだが、今は拳銃の行方だ』


『火薬の爆発力を利用して弾丸を飛ばす原始的な武器だな、重量もあるし使用時の騒音もかなりのモノだろう?習得にかなり時間がかかりそうだな…

本来であれば管轄がちがうと断るところだが、今回は心当たりがある…。

鑑識のタニスに連絡を取ってくれ』

長倉の話を聞いて、わずかに考えるそぶりを見せたリサリーはロゼに指示し、長倉に告げる。

『外に出てあと二か所、現場を見てから本部に戻ろう、このあたりの地理を把握しておいた方がこの後の説明もしやすいだろう』

『どうやら最悪の事態を想定する必要があるようだ』

車に乗り込むときにリサリーが小さくつぶやいたことに永倉は気付いていた。

 

 


 

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