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召喚刑事  作者: 肺腸
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召喚刑事  1

リサリーは息を潜めその瞬間を待つ。

準備は十分とはいえない、違法術式の犯行現場を押さえるために。管轄の州警察の協力を受けたが。

あくまで地元のメンツを立てる為のもので、禁呪法のなんたるかも解かっていない警官に現場を荒らされたくはなかった。

本来、連邦捜査官であるリサリーは州警察に対し上位命令権を有している、今回の件に際しても上層部には問題なく命令は通っている。

しかし、現地の警官が横槍をいれてきた。

管轄(縄張り)内での出来事を黙認できはしない、ぜひに協力したいと申し出てきたという。

「私がハーフリンク(半妖精)であることがよほど気に入らないらしいな」

「リサリー捜査官。独り言はもっとお静かに」

隣にいる相棒のロゼがたしなめるようにいうが。リサリーは鼻で笑う

「私の言う事など誰も聞いていないからこんな状態になっているのだろう」

「我々はリサリー捜査官の命令にしたがっていますが?」

ロゼの表情の変わらない仮面のような顔を見ながらリサリーはため息をつく、ロゼ同様リサリーの連れてきた捜査局側の仲間は全てゴーレムだ。

エルフを模して造られてはいるが、それはあくまで、人形としてであり、白磁器のようなつややかな外装も、女性的ではあるが、

目も口もない貌には生物としての温かみは感じられない。

エルフは傲慢な者が多く。エルフの都市でハーフリンクと自律人形の捜査官がなめられるのはよくあることだった。

女性型ゴーレムであるロゼは平均的な女性エルフの身長より低くデザインされているが、隣にいるリサリーは更に小さい

美しいく長い黒髪を後頭部に編みあげて、同じく黒く、深い意思を宿す瞳が印象的な、エルフの少女、リサリーを一見すれば誰しもがそう思うであろう。

ハーフリンクとは第二次性徴期前に成長を止めたエルフのような外見で、老化をすることは無いがエルフほどは長生きはしない種族であり、

独自の国をもたず、他種族の国に依るか、生涯を放浪の中に置く者も多く、その生き方を奔放もしくは退廃的ととらえるエルフが多いのが原因といえる。

「我々はリサリー捜査官の命令にしたがっていますが?」

抑揚のない冷静とも云える声色でロゼは答える

「………」

「場所が高級住宅街という事もあり、私たち(ゴーレム)は目立ちすぎます、地元警察の協力はしかたないことかと」

「建前はもういい、術式反応が出ればすぐに突入する。素人どもに先を越されるなよ」

「了解しました。それでは今のうちに補助術式を展開しておきます」

ロゼの白磁器の様な体表面に複雑な図形が浮かび上がる。体内に張り巡らされた術式回路の配線を組み換え自らの必要とする術式に相応しい図式に変換する。

「耐衝撃防御、耐刃防御、耐攻撃術式防御、耐毒防御、耐汚染防御、耐精神操作防御、」次々に術式が展開されるが、その術式の向けられている相手は、リサリーである。

ロゼ本人には元々の特性として持っている能力だからだ。ハーフリングはエルフ程に術式が得意ではないのでその補助としてロゼと組んでいるが。

ハーフリンクと組みたがるエルフがあまりいないのも事実ではある。

「リサリー捜査官の視覚野に私たち(ゴーレム)の情報をつなぎます」

ロゼの言葉と共にリサリーの視界に周辺の地図と自律人形たちの位置情報が重なる、しかし警官達の情報は表示されていない。

「警官5人からは情報の開示を拒否されました。彼らの中に術式処理に長けた人物がいるようです。私の術式演算能力を上回っています」

「邪魔しに来ているのかあいつらは…」

リサリーは頭痛をこらえるように眉間をおさえる、ロゼはいま他のゴーレムの指揮官として機能させている。あまり余計なことに演算能力を割いてほしくはなかった。

「もういい、あいつらは放って…」

リサリーの言葉が終わる前にロゼが叫んだ

「リサリー捜査官!反応がでました、高出力の術式が展開されています。」

「星霊の流れを止めろ術式を完全に展開させるな!」

すぐさまリサリーは命令を下すが視界に映るゴーレムの位置情報の幾つかが消える。

それはこの区画に術式の起動に必要な星霊の流脈を押さえる為に配置していた者の筈であった。

「術式止まりません!起動されます」

「全員、現場に突入」

声よりも早くリサリーは流脈工事用の偽装車両から飛び出す、目指す高級住宅は角をまがった先で背の低い彼女にはかなり遠く感じる、すぐに隣にロゼが並びそして追い抜いていく

「すでに警察官5名が突入しています。反抗が激しく、現場は混乱していて召喚陣に近づけません。流脈に配置していたゴーレムたちの反応回復しません」

「現場の自動人形の指揮だけに専念しろ」

リサリーはロゼに命じる、おそらく反応の消えたゴーレムは始末されたと考えるべきだろう。 伏兵を考慮しなかったのは自分の落ち度ではあるが、いまはそのことを悔やむより召喚陣の無効化が最優先されるべきだった

前を走るロゼに追いつこうと全力を出しつつもリサリーは叫ぶ

「状況はどうなっている」

リサリーの叫びが聞えたかどうか。ロゼは先に警官隊が突入時に破壊した門扉を飛び越え、屋敷内に駆け込んでおり、すでに彼女からは姿は見えない。

しかし、視界に表示されているロゼの位置情報を頼りに無駄に広い屋敷を迷うことなく駆け抜ける。

ロゼからの通信がリサリーの聴覚に届く

「想定以上の抵抗を受けています。どうあっても、召喚陣を起動しようとしているようです。

警官3名が既に負傷しています、残り2名が激しい攻撃術式の応酬を行っているため近づくことが困難です」

「警官ごと鎮圧しろ、私が許可する」 

リサリーは上着の内側より術式端末を兼ねた警杖を取り出す。

伸ばした指先から肘あたりまでの長さの棒で、手のひらの場所に横向きにグリップがついている

グリップをきつく握りこむと、内蔵されている術式が起動し、麻痺属性を付加される暴動鎮圧用の武器である。

地下へと続く階段を飛び降りるように駆け下りると、通路の突き当たりの扉の前にロゼが待機していた。

「入口はここだけですが、設計図を確認するとまだ奥に酒蔵庫として使われていた小部屋があるようです」

「脱出経路の確保に使われている可能性は?」

扉に身を隠すようにして室内を覗きこむが、飛び交う攻撃術式と、それによって舞い上がった埃が確認を困難にしている

「最も近い地下水路まで30メートル以上離れていますが」

「奴らには時間はたっぷりとあっただろう。すでに道は有ると考えていいだろうが、ではなぜ?今回の召喚陣に執着している…既存の物ではないと云うことか?!」

何かに思い至った瞬間。考えなしにリサリーは室内に飛び込んでいた。負傷して自力で動けない警官を部屋の外へと放り出す勢いで連れ出していく流れ弾に当たる危険性など考慮しない。

連れてきたゴーレムたちが応戦のさなかにリサリーを守るように防御術式を起動させている、しかし其の 隙を逃さず相手の攻撃がゴーレムを襲っている。

もう時間がない、3人目に手を伸ばしたところでロゼの声が聴こえた。

「召喚陣完全起動。召喚されます!」

「ロゼ!空間封鎖だこの部屋を閉鎖しろ」

ドサリと何かが床に倒れる音がした、反射的に振り向く先にうずくまるように倒れた男がいた。

エルフではない。背格好はエルフ男性に似ているが、リサリーから見える後頭部の髪の色は闇のように黒く、エルフにその様な髪を持つものは…リサリーの知る限りいない。

男は見慣れない民族衣装?を着ている、腰のあたりにナイフのようなものが刺さっていて服は血に染まっていた。

低くうめき声が聴こえ、まだ息があることはうかがえたが、このまま何も手を打たなければ、もう長くは無いかもしれない。

男は緩慢な動作で起き上がろうとしていた。自分の前方に落ちている何かに手を伸ばそうとしているようだが、傷の痛みが身体の自由を奪っているようだ。

「動かずにじっとしていろ!」

リサリーの声が聴こえたのか男は振りかえる、そして彼女の背後を指さしながら何かを叫んだ。

それがどこかの言語だと、考えるより早くリサリーは警杖を構え振り返る、召喚事件の実行犯が背後に立って、今まさに彼女に襲いかかろうとしていた。

犯人はエルフで体格はリサリーの倍近くあったが、焦ることはなく構えた警杖で相手の術式端末をたたき落とし返す動作で脛を打ち、膝をついたところに警杖の麻痺術式術 式を使い沈黙させる

「容疑者1名確保」

 再び男に振りかえるよりも早くロゼの声が室内にこだまする

「異世界生物の召喚を確認しました。規則に従い、これより半径20メートルの時間凍結を行います。なをこの術式は外部時間で40時間を経過するまで解除されません

警告します。効果範囲の境界線上のある動体は切断されます。速やかな退避を願います」

台詞の終わりと共にリサリーの意識は途絶えた。


 


 


 






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