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召喚刑事  作者: 肺腸
19/19

召喚刑事 エピローグ

広いながらも余り利用者のいない駅の構内に

他の視線を集める奇妙な者達がいた

女型の自律人形がと半妖精ハーフリンクの女性

妖精エルフ達にはなじみのない人間の男性の3名だった。

妖精エルフの首都を離れて獣人の住む地方都市へと

留学する事となった永倉を見送るためにリサリーとロゼは

この場にいる

「エレノワーレ総領事が後見人となってくれたお陰で

捜査官養成所へと通えるようになった

異世界人の俺にとってこんなに有難いことはない

正直言って極刑も覚悟していたからな」

永倉の言葉に「私もその一員だ」とリサリーは応える

「しかしだ獣人の都市の養成所は随分と遠くへ飛ばされたものだ

後見人とはいえこれではそう簡単には面会にもいけない」

「仕方ありません永倉さんは星霊術式を

基礎から学ぶ必要がありますから

妖精エルフ半妖精ハーフリンクと同じ様には行きませんので

発展途上の獣人と同じ段階から始めるのが良いとの判断でしょう」

ロゼの正論にリサリーは苦虫を嚙み潰したような表情になる

「永倉いつまでも拘束具をつけたままにもいくまい

代わりの術式端末を用意している」

リサリーの手には永倉がこの世界に召喚された時に付けていた

眼鏡と同じものが握られていた

「以前から使っていたものと同じ様式の方がいいと思って造らせた

どれ掛けてやろう、少しかがんでくれないか」

言われた通りに永倉はリサリーの前に跪くと

リサリーは永倉の頬に手を添えてキスをする

「…」無言の永倉にリサリーは照れながら云う

半妖精ハーフリンクの風習でも

コレは好意を寄せる相手にしかしないものだ

まあ何だ早く術式を学んで連絡を取れるようにしてくれると嬉しいです。」

「鋭意努力するよ」受け取った眼鏡を掛けなおすそぶりで

熱を持つ顔を隠す様にしながらも永倉は答える

「イチャコラするのは構いませんが節度を持ってくださいね」

「イチャついてなどいない」揶揄する声にリサリーが振り向くと

一体の自律人形ゴーレムが近づいてくる

「遅れてしまったようですね

永倉匡一郎の監視監督役として同行させて頂きます。」

「なっ…」その姿にリサリーが絶句する

リサリーは新しい自律人形と正面から目を合わせる

否、のっぺらぼうの自律人形に目などないのだが

リサリーと同じ高さに顔があるのだから

目線が合うと思えたのだ

「永倉匡一郎の為に新造された第8世代型自律人形です

まだ名称も有りませんので

宜しければ名前を付けてもらえませんか」

「自律人形に半妖精ハーフリンクタイプなど

聞いた事がないぞ」

リサリーの言葉に半妖精ハーフリンク型自律人形は

「ロゼからの報告にある永倉匡一郎の嗜好に合わせたつもりですが」

と答えた

「ちょっと待て。誤解があるぞ」

永倉はリサリーとロゼを片手で制しながらも

半妖精ハーフリンク型自律人形を少し離れた場所へと引っぱっていく

「君はエレノワーレ総領事の複製体何だろう?」

小さな自律人形の傍らに片膝をついて

自律人形の耳らしき場所にこっそりと呟く

「正確にはエレノワーレの霊格の思考方式を表層的に複製したものです

5000年を生きている始祖妖精ハイエルフの霊格の全てを

自律人形サイズの疑似霊格機関に複写するのは不可能です

そう言う意味ではエレノワーレではありません」

自律人形の返答に「そうか…」と短く頷き

永倉はリサリー達のところに戻る

「俺はリサリーの内面、その霊格に敬愛の念を抱いているのであって

容姿に対して思うところはないぞ」

永倉はこれまでのやり取りからこの世界で言う霊格とは

人格や性格、心、知性、思考など含む

永倉の知る言葉でいうと魂魄のようなものと捉えている

果たして言い訳になっているのか疑問に感じながらも

リサリーの様子を見るに満更でもなさそうなので一安心する

エレノワーレから複製体のことを

これと言って口止めされていた訳ではないが

永倉はロゼに視線を向ける

「ロゼは生まれてから3000年たっているんだよな

その間の記憶はどんな感じなんだ」

「完全に記憶しているのは近々の400年程です

それ以前は重要事項以外は消去しています

その為3000年前の私と、今の私は全くの別霊格と言ってもいいですね」

「そういうものか」納得した様に言ったのはリサリーであった

そして、自分と同じ体形の自律人形に向き合い云う

「これから長い付き合いになるのだから

永倉が名付け親になるといい」

リサリーの言葉を受けて永倉は両手を組んでしばし考え込む

「リル…だな」ぼそりと呟くように

「永倉の世界の名前なのだろう、どういう意味を持っているんだ」

リサリーが訊くと永倉は

「小さくて可愛いといったところかな」と記憶をたどるように答える

「良いのではないですか」ロゼが同調する「生まれたばかりの子ですし」

「見た目からですか…まあ良いでしょう

では永倉匡一郎これからは私が其方を導いて行きましょう。」

なんだか偉そうな態度でリルと名付けられた自律人形は永倉を見上げながら宣言した

こうして永倉の異世界での事件は一先ず幕を閉じる

彼がリサリーと再会し妖精エルフの社会を震撼させる

大事件に関わって行くのはまた別の物語である








































薄暗い車内に数名の影が静かに佇んでいる

その影の主たちは警戒感を内包し

任務を遂行中である

何の装飾も窓すらもない車両には

進行方向の壁を背に

一つの座席が固定されている

たった一人の人間を輸送するためだけに用意された

特殊護送車両であった

無駄に巨大な椅子には

全身を包み込むような拘束服の上から更に

頑丈なベルトで座席に縛り付けられた

鮫崎が座っている

「実に大仰で結構なことだな

自分が大物になった気分だぜ」

ゲラゲラと楽しげに鮫崎は笑っていた

妖精エルフの機動部隊員が2

戦闘型の自律人形ゴーレムが5

イヤイヤイヤイヤ

嘗められたものだよな

俺を誰だと思ってるだ」

「…」

妖精エルフの2名は意にも介さない

否、隠し切れない嫌悪感が表情ににじみ出ている

鮫崎はニヤニヤと笑いながら

「護送する囚人に関する報告書は読んだか?

ポリネーターを名乗る犯罪者には常に

同行する黒い自律人形がいると…」

「なぁ。なぜ黒だと思う

異世界人の俺からすれば自律人形が皆

白系統色の方が異常だと思うが

お陰でオズを妖精エルフの目から

見えなくすることができるわけだが」

妖精エルフ2名はお互いの顔を見合わせる

鮫崎の言葉の意味が分からないためだ

「自律人形の個性とか考えたことがあるか?

ねーだろうと想像はつくが

俺から見ると

極まれにとんでもねーヤツが自律人形の中に

混じっているんだぜ

例えば禁呪捜査課のリサリー・マキャフリーの相棒

ロゼだアイツもオズと同じいかれていやがる

お前ら妖精エルフはそれがまるで

見えちゃあいねえ

だから敢えて黒色の自律人形を印象付けるだけで

妖精エルフにはオズを認識できなくなる」

鮫崎の語る相手が妖精エルフから別の誰かに変わる

「さあオズもういいだろ

そろそろ輸送先の予測はできているんだろ

さっきから背中がかゆくてしょうがないんだ

いい加減に拘束服を脱ぎたいぜ」

「何を言って…」

鮫崎の戯言に遂に妖精エルフの片方が

疑問を口にするがそこで彼らの背後から鈍い音が重なる

振り向く妖精エルフ達が見たものは

4体の自律人形が床に倒れ伏す姿であった

残った1体の自律人形の手には薄暗い車両で鈍色に輝く

鋭い刃が握られていた

それが日本刀だとは妖精エルフ達にわかる筈もないが

自身に降りかかる厄災は予測できた

戦闘用に特化の術式端末を構えようと動くが

自律人形との距離が既に近すぎた

2名の妖精エルフが物言わぬ死体になるのに

瞬き程の時間も必要なかった

「このままノアの塔まで案内させるつもりかと思っていましたが」

「もう少し待遇が良ければな」

鮫崎は嘯いて見せる

体表ボディーの色を白から黒く染め変えながら

オズは鮫崎のの拘束を外すと

車両が停止する感覚があった

外部への扉が強制的に開かれていくと

静かだった車内に暴風と爆音の乱入が巻き起こる

鮫崎が外に出ると機首と尾翼側に二対の回転翼をもつ

大型輸送ヘリがアイドリング状態で着陸していた

停車した護送車の周りには鮫崎の部下の自律人形や獣人達

少数ではあるが妖精エルフが周囲を警戒している中で

一人の人間の男が

長い髪を風になびかせながらもゆるぎない足取りで

鮫崎達の前に歩いてくる

黒色の軍服に身を包み左の腰には日本刀の二本差し

右側にはリボルバーの拳銃が収められたホルスターが吊り下げられている

「いつもは慎重なお前が随分と危ない橋を渡ったものだな」

「土方さん来てたのか」

誰に対しても傲慢不遜と言える鮫崎をしてその声にやや畏怖が混じっている

「オズから連絡があったからな

一足先にノアの塔から例の物を回収して来た」

「土方様お疲れ様でした。

いかがだったでしょうか

鮫崎様の推測通りでしたか」

オズの言葉に土方と呼ばれた男は背後のヘリへと視線を送る

鮫崎とオズはヘリ内部の格納庫で20個を超える円筒形の容器を見て回る

透明なその容器は赤い液体に満たされてその中に

性別も肌の色も髪の色も様々な人間が眠るように収められていた

唯一つ共通点があるとすれば

全員が天寿を迎えた老人で在ろうことだろうか

「やはりな

保存していると確信していたぜ

最後の人類をなぁ…

ノアの塔にたどり着くために

永倉という不確定要素があったが

賭けは俺の勝ちだったな」

鮫崎は土方に笑いかける

土方はこの世界に来てから一年以上経つが

死体とはいえこの世界の人類を見たのは初めてだった

「死体を氷漬けにしているのか?

こんなものをどうするつもりだ」

「俺たちが元の世界に帰るための

送還術式を手に入れるには

召喚術式を開発研究していた人材が必要不可欠だ

死んでいようと関係ねーぜ

叩き起こしてやる

この術式が世界の理を書き換える世界に

死の安寧など存在しないぜ」

「全く、函館で死にかけていた筈だった俺が

この魑魅魍魎ばかりの世界に呼び出されてから

実は地獄の入り口にいるという疑念が消えなかったが

今日はそれが確信に変わったぜ」

土方は鮫崎こそは地獄の極卒であろうと思っている

「鮫崎様」

オズの呼びかけに鮫崎は壮絶な笑みを浮かべ振り返る

「お前の云いたい事はわかっているぜ

ボスとの契約は忘れちゃぁいねえ

組織を俺の自由に使える代わりに

ボスの悲願

平行世界からの

始祖妖精ハイエルフの召喚は

俺が成し遂げてやるぜ」


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