69話:そして伝説へ
アルミナ王国とディクトシス帝国の軍事衝突はロッシジャーニ辺境伯領都解放にて終結した。
ディクトシス帝国にて第二皇子イビリ・ターオスが側近であった侯爵により民衆の前で殺害され王位継承権争いが終結したことで、アルミナ王国との和平条約が結ばれた。
アルミナ王国側はかなり有利な条件で和平を結べることとなった。
何より戦争の形を変えてしまったことがその理由であろう。
特に、ミリア・タリムによる狙撃とガリム伯爵家が開発したサブマシンガンはオーパーツと言ってもよい戦果を挙げた。
わずか十数名の兵士が1000人規模の敵拠点を攻略する。
特にミリア・タリムの通算スコアである死傷者数542人はいまだに破られない伝説であり「狙撃令嬢」の異名で語られる。
なにより、それまで戦場の花であった騎士が、ただの的になり下がってしまった。
後の戦場は様相が一変したことは言うまでもない。
ミリア・タリムはそののちに、子爵かつ騎士であるためにタリム家当主となったと記録がある。
ただし、彼女自身に領地経営の手腕は無かったと言われ、領地運営の采配は妹が取っていたという。
少なくともミリア・タリム、アヤタルがその後戦場に立った記録はない。
というのも帝国と王国の和平協定によって大陸西岸の治安が安定したためだ。
平和はミリア・タリムの死後40年、大陸東岸部の国々との貿易協定のこじれから発生した帝国と東岸諸国の戦争まで続いた。
アルミナ王国は大陸東岸地域とは帝国が蓋になっており直接の戦争には巻き込まれていないが、帝国に対して軍事供与は行っていたと記録にある。
その時代ではすでに狙撃手が大きな戦果を挙げることは無くなっており、カウンタースナイプの技術も向上していたため、ミリア・タリムの戦績を超える人物が現れることはなかった。
タリムの町の入口にはミリア・タリムの銅像が立っており、当時戦争に従事したときのライフルを手にした彼女の姿が残っている。
当時は15歳で成人であったが、それでもあまりに小さく、子供のように見える彼女が伝説の狙撃手アヤタルであるとはいまだに信じない人も多いという。
終わり
長い間お読みいただきありがとうございました。
一応の完結です。
恋愛?そんなものはありませんよ。




