6話:スナイパーライフルとハンドガン
「ま、まってお母様…1000m以上もの有効射程がある銃なんてものを開発したんですか?」
「そうよ、残念ながらここまでの性能を出せたのはこれ1丁だけなんだけどね」
その言い方だと他にも同型の銃があるって聞こえます。
「今までのように弾を前から込めるんじゃなくって、最初から5発装填しておいて、この後ろにあるレバーを引いて弾を入れるのよ。で、これが弾」
円錐形の先端がついてる円筒形の物体を並べられる。
これが弾?
なかなかの大きさがあるわねコレ。
「何だこれって顔してるわね。これは実包というの。先っちょの円錐形の部分が飛翔体…つまり弾として飛んでいくところ、下側の部分を薬莢といって火薬がつまってるのよ。
今までみたいに火薬を詰めて弾を詰めてなんて作業は不要。こうやって弾を入れるの」
そういってお母様がカチャとレバーを引いて開いた空間に弾を込めていく。
5発入れてレバーを元の位置に戻すと、ガチャっと音がして蓋が閉まる。
「いまは安全装置をかけてるし、これは模擬弾で薬莢には火薬を詰めてないから撃てないけれど、本来はこの後安全装置を解除してレバーを引けば発砲できます」
「ず、随分簡単なのですね」
私は思わず引いている。
とても簡単だ。
しかも安全装置とやらがついていて、それを解除しない限りレバーを引いても発射されないそうだ。
「すでにコーラシル砦には失敗作が配備済みよ。これならレイ君もつかえるからね」
「お父様もお持ちなのですか…」
あの銃が苦手なお父様でも使えるとは…しかしなんで一番精度が良かった銃をお母様は私にくださるのだろう?
「ミリア、あなたには狙撃手になってもらいます」
「スナイパー?」
「ルーナはスポッターね」
「スポッターですか奥様?」
「わかっていないようだから説明するわね」
*****
お母様いわく、いくら女性も兵士として使えと国から通達が出たとはいえ、貴族令嬢を男所帯が基本である軍隊に放り込むのは外聞が悪すぎる。
下手をすると味方に襲われる。
そこで、お母様は別働隊として私とルーナを戦場に出そうということらしい。
マザー銃は全部で5丁しかこの世にないらしく、弾には制限があるとも教わった。
とりあえずと渡されたのは180発、12箱分の弾を渡された。
それと、ルーナにはハンドガンという中折式の銃が渡された。
1発だけ装弾できるもので、特殊な加工がされているから発射音がほとんどしないらしい。
で、私がもらったマザー銃も先端に円筒形のものと上に望遠鏡みたいなものがついている。
サプレッサーという部品とスコープという部品だという。
サプレッサーは発射音を低減してくれる機能があるそう。
スコープはいくら目が良くても遠くの目標のピンポイントを見るのは難しいからと、望遠鏡を小型化し固定化したものだそうで、覗けば遠くのものがすごく近くに見える。
「二人にはこれの慣熟訓練を1週間してもらいます。その間に私は二人の装備を整えるわね」
そう言うと早速お母様に連れ立って射撃場に向かった。