57話:べリリム領ストローンの町
馬で三日、目的地であるべリリム侯爵領のストローンの町に着いた。
タリム程の規模ではないがそれなりに人は居そうである。
ただ、街に活気はなかった。
「あまり活気はないわね」
「商人の行き来が無い為でしょう。野盗が出たとなれば物流が滞りますから」
「なるほど、とりあえず代官の建屋に行きましょう」
私達は馬に乗ったまま代官屋敷へ向かう。
代官の屋敷はすぐに見つかった。
門に居る兵士に声をかけると馬を預かってもらえた。
「お疲れのところ申し訳ありませんが、このままマルセル様にお会いいただけますか?」
「えぇ問題ありません」
家令と思われる出迎えの人に言われて私たちはそのまま応接室へと案内される。
ここの代官はべリリム侯爵家の血筋の男爵だから現状について教えてもらえるのだろう。
「タリム様よくおいで下さいました」
応接室に入ると恰幅の良い男性に急に頭を下げられる。
この方がマルセル様だろう。
「べリリム侯爵からのご依頼によりはせ参じました」
「お噂はかねがね…早速ですが現状について説明させていただきます」
そういって席を勧められ私が座り後ろにルーナが立った。
「お聞きの通り、ここストローンの町とロッシジャーニ辺境伯領の間にある黒き森に野盗が潜んでいるのです」
「べリリム侯爵家騎士団によって何度も討伐されていると聞いておりますが、殲滅できていないのですか?」
「残念ながらこれまでに騎士によって倒された野盗は居るのですが未だに一人も捕まえられていないため、詳細が分からずじまいなのです」
「それは…さすがにおかしくないですか?」
「仮にとらえようとしてもあっさりと自害してしまうのです」
なんとまぁ奇怪なことも有るものだ。
野盗は捕まれば重い刑に課せられると言え、死を選ぶほどではない。
ほとんどの場合、生活に困って“生きるため”に野盗をするものがほとんどで、騎士たちに攻められれば命乞いする。
「普通ではないようですね」
「その通りです、そして数も減らない…何が目的なのか全くの謎なのです」
「もちろんロッシジャーニ辺境伯へも連絡を入れておられるのですよね?」
「侯爵様から使者を送っていただいて共同で討伐をと呼びかけておりますが…」
「辺境伯の動きが悪いのですか?」
「その通りです。ロッシジャーニ辺境伯家は現当主であられるギュンター様がご高齢となり、次期当主であられるライナー様が当主となる予定でしたが、いまだに正式に当主交代がされておられぬようでして…」
それは私も初耳だ。
でもうまく当主が交代できていないなんてことがあるのだろうか?
次期当主であるライナー様については特に噂も聞いたことが無いので何かが起こっているとしか思えない。
「何か理由があるのでしょうか?」
「ギュンター様が息子であるフリッツ様を超えて、お孫さんのライナー様を当主にと動かれているためでしょう…」
それは揉めるだろな。
まてよフリッツ・ロッシジャーニって聞いたことがあるぞ?
「もしかして女狂いのフリッツって」
「えぇそのフリッツ様です」
あちゃーそれは後継がせられないわ…まてよ確かフリッツ様って結婚されていなかったはず。
ということはライナー様は別子のお子かぁそれは荒れるわ…
まてよ?もしかしてそこを帝国に付け込まれているんじゃないかしら?
表向きにはそれが分からないということは裏でフリッツがつながっている?
これって本当に私の仕事?
一部話をタリム復興期とつなげるために、向こうのある伯爵令息を変更いたしました。




