55話:受爵式と新たな依頼
1週間があっという間に過ぎて、私はドレスを着せられガリムに向かう馬車の中。
「大丈夫ですかミリア様?」
「なんだか胃が痛い…」
久しぶりにコルセットを巻いて叔父様の家に行くわけだけれど、そこには王太子殿下がいらっしゃってわざわざ子爵令嬢でしかない私に爵位を授与してくれる。
騎士爵なので王家から爵位をもらうのは間違いないのだが、わざわざ王太子殿下がいらっしゃるとは聞いていない。胃が痛い。
「気にしなくて大丈夫よミリア。殿下は多少の粗相があっても許して下さるから」
その言葉に私はさらに小さくなる。
母よ、粗相する事前提に話さないでもらいたい。胃が痛い。
そんな私をよそに、馬車は時間通りにガリム伯爵家に到着した。
「待ちわびたぞミシェル!ミリア大丈夫だったかい?」
大丈夫に見えますか御爺様。
たぶん私今顔が真っ青だと思いますよ。
「父上、大丈夫ではなさそうだよ…少し部屋で休んだほうがいいだろう。コルセットも少し緩めたほうが良いのではないかい?」
叔父様の助け舟のおかげで私は大人たちのあいさつに巻き込まれずに済んだ。
ルーナが一度ドレスの背を開けてコルセットを緩めてくれる。
「ずいぶん締まってますね…以前よりも細くなったからってメイドたちが締めすぎたのではないですか?」
私はコルセットが緩んでほっと息を吐く。
その可能性が高すぎる。かなり楽になった。
「でも胃が痛いわ」
「胃薬を用意いたしましょう」
そういってルーナが部屋から出て行った。
王族と会うなんて聞いていないわ。
戦場に出てる時とは別の意味で胃が痛いのよ…お腹に穴が開きそう。
受爵の手順も聞いているしそんなに難しいことはないのよ?膝をついて座っているだけで後は殿下が全部取り仕切ってくださるそうなので、特に何にも難しいことはないのだけれど、今回ガリム伯爵家にはかなりの貴族が詰めかけているのよ。
私見世物じゃないわよ!?
しかもそのあとには当然パーティーもあるわけで…
あぁまた胃が痛くなってきた。
*****
ルーナからもらった胃薬は随分と効いてくれた。
おかげでスムーズに式は終わって、気が付けば私の胸には名誉少尉勲章が輝いている。
騎士爵を得たことで“帯剣”できるんだけれど私には不要ね。
そして、パーティーが始まり、叔父様と一曲ダンスを踊って壁の花になっていると、向かいからべリリム侯爵令息が歩いてきた。
「やぁミリア久しぶりだね。すごい活躍だったそうじゃないか」
「ジェラルド様お久しぶりです」
「うん、久しぶり」
べリリム侯爵家とタリム子爵家はお母様の繋がりで良くしていただいている。
ジェラルド様には子供のころ遊んでもらったこともある仲だけれど…会うのは本当に久しぶりね。
「実はミリアにあってほしい人がいてね」
「わたくしにですか?」
「うちの両親だ」
「は?」
「あぁ婚約とかそういう話じゃない。帝国との戦争に関することなんだ」
いや、それはそれで困るのですが?
なんで?ねぇ、なんで私なの?
それ、私じゃないとダメ?
「もちろんミシェル夫人にも同席してもらうつもりだよ」
そ、それなら安心かな?
私だけで侯爵夫妻の前に出るのはさすがに怖い。
いや、子供のころは無邪気にお話ししたことはあるけれど、貴族としてちゃんと勉強した今となっては気楽な席ではないことぐらい分かる。
でも、母がいるならまだ大丈夫だろう。
私はジェラルド様にエスコートされて応接室へと向かった。




