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スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜  作者: シャチ


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53話:停戦合意されるも終わらぬ戦い

翌日、ニホニの町にて王国軍と“第二皇子所属の帝国軍”との停戦合意が成った。

そう、第二皇子所属の帝国軍との停戦だ。

つまり、帝国と停戦したわけではない。

あくまでも戦争を始めた第二皇子派の貴族たちが戦争継続の意義を見出せず離反するために停戦したいというのが真意だそうだ。

「ふざけた停戦ね」

「戦争を始めた第二皇子の主力部隊が丸々撤退するとのことですから、この場での停戦は間違いないと思います」

実際、帝国軍は完全撤退のために動いている。

その代わり来た道を戻るわけではなく、山越えにて帝国に戻るルートを使うようだ。

理由がそのまま戻ると第二皇子直轄の近衛に捕らえられる可能性があるからだそうだ。

帝国は一枚岩じゃないとはいえ、推していた勢力からの脱退を考えるほどなので、率いていた将軍からすると今回の作戦はよほど腹に据えかねたんだろう。

「撤退を確認すれば私達もお役御免よね?」

「そういうわけにもいかないと思いますけどね」

私の言葉をルーナが否定する。

「なんでよ」

「この停戦がなったのはイゴール・リュビーモフ大将が率いた部隊だけですから、第二皇子との停戦はできておりませんので、この先も部隊が来る可能性を否定できません」

私は思わず顔をしかめてしまう。

たしかにそのとおりだった。

あくまで目の前の戦闘が停止されただけでしかない…

「とにかく一度家に戻りたい」

「それは可能だと思います…一度しっかりお休みすべきですね」


*****

停戦合意から3日、ようやく私達タリム家の人間の撤退がかなった。

ここからは王国軍の仕事になる。

王国軍による正式な掃討部隊と、ニホニの再建が始まるそうだ。

今後ニホニは要塞都市になるらしく、すでに防御用に塹壕などが敷設され始めている。

撤退するに当たり私は司令部テントに呼び出されていた。

「ミリア・タリムです」

「タリム子爵令嬢、この度の働きも素晴らしいものであった。正式に王国から報奨が出る予定だ」

「ありがたき幸せ」

「まだ学生であるにも関わらず、これまでの戦いで実に敵を392名も死傷させたその狙撃の腕は国一番だろう。

 アヤタルの名にふさわしい活躍だったな。しばらくは休んでもらいたい」

「学園の再開は成りそうですか?」

「まだ難しいだろう…王国北側の帝国に接している領地の者たちは皆防衛に出ている。

 激戦となったのは前回同様にこの西岸部だけであるが防衛が必要なことに変わりはないのでな」

「そうですか…」

まだ平穏な生活には戻れそうにないわね…

とにかく一度タリムに戻れることになっただけでも良かったのかな。


挨拶を済ませた私達は一路コーラシル砦に戻ることにした。

まずは一度しっかり休みたい。

私が戦場に立ってからここまでまともに休むことも許されなかったから、髪もごわついてきているし、肌だって荒れているんだもの…

休んでよくなるかしら…

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