16話:売られた喧嘩を買いましょう
さて、明日の朝は試しに私の射撃を見せることになったわけだが、これって喧嘩売られたってことでいいよね?
「まぁ間違いなくそうですね。タリム子爵はまだ若い子爵家ですし、ロベルト子爵は歴史だけはありますので」
長年子爵やってるだけはありますよねとルーナが笑う。
今私たちがいるのは割り当てられた宿舎の部屋だ。
部屋には本当にベッドが2個あるだけ。
あとはキャニスターが1個だけ…たしかにコレは必要最低限の設備ね…屋根があって寝るところがあるだけマシなのかも。
司令達がいたのは天幕だったし、兵士たちも同じような天幕で雨風を多少防げるだけのような状態であった。
きっと司令達も部屋は別にあるだろうけれど、慣れてもいない貴族子女がいきなりあんな所で寝ろって言われても無理だろうねぇ…
「ミリア様、とりあえず荷物は片付けましたよ」
「ありがとうルーナ…さて相談なのだけど明日試射をすることになったわけだけれど、さてどうしたものかしら」
一度リュックの中身を空にしたルーナはカバンを小さく畳みながらかんがえているようだ。
「そうですねぇ…ミリア様の覚悟があるならですが…」
「か、覚悟?」
「私が観測いたしますので、いっそ敵将校を狙ってみませんか?」
「え…」
「兵士たちに聞きましたが、敵はわずか1km離れた地点にいるそうですよ。お互いに睨み合っているだけだそうです。1kmしか離れていないのであれば向こうの将校1人ぐらい狙えると思いませんか?」
「た、確かにそうだけれど…大丈夫?そんなことして戦闘が再開されたりしない?」
「大丈夫じゃないですか?だってスナイパーライフルって音ほとんどしないじゃないですか。帝国軍だってどこから撃たれたかすらわからないんじゃないかと」
「ふむ…」
確かに私がそれを成せば文句は出なくなるでしょうね。
マザー銃をかせといわれて貸したところで同じように狙撃できるわけじゃないし…私の覚悟を決める上でもいいかもしれない。
「ルーナのいう通りね。それでいきましょう」
「その意気ですミリア様」
早速私の戦果ってやつをあげてやろうじゃないの…
実際に人を殺すってなるとビビっちゃうかもしれないけれど、でも相手は敵。
私たちの敵、無心で撃つ。
そう決めたから私はここに来た。
売られた喧嘩は買ってやる。
私が女だからって舐めた真似はさせないわ。
お母様の次に私は狙撃が上手いんだから!!




