12話:ドナドナ
「じゃ、気を付けていってらっしゃい」
「タリム家のために頑張ってくださいねお姉様」
お母様とアイシャに見送りに来てもらったのはタリム通の噴水広場です。
私とルーナはここから馬車に乗って、まずコーラシル砦へ向かいます。
そこで1泊したのち、王国軍第三騎士団陣地へと向かいます。
既に王国軍陣地には今後続々と来る予定の貴族のための簡易宿舎が建てられており、私達にも一部屋割り当てられているそう。
有るのはベッドと簡易的な収納だけだそうなので大したものは持っていけない。
遊びに行くわけじゃないし、しょうがないと思うけど。
「お母様、アイシャ、行ってまいります」
「第三騎士団長様には手紙を出していますから、何も心配いらないはずです。
まぁ何かあれば私の名前を出しなさい」
心強いですお母様。
なにせ、お母様の交友関係に高位貴族が多いことは有名。
特にタリム家の後ろ盾で有名なのがべリリム侯爵家だろう。
私に何かあったらガチで首が飛ぶ兵士の方が多い。
ちなみに、一時べリリム侯爵家の長男と私の婚姻なんて話もあったけれど、私が拒否してそれは立ち消えている。
あれは可愛がるものであって旦那に据えたいものじゃない。
それに今じゃ私よりデカいんだよジェラルド君は!!
可愛げなんてどっかいったよ。
「さ、ミリア様馬車に乗りましょう」
「はぁこんな馬車に乗るの初めてね」
今回乗る馬車は”荷馬車”だ。
無理やり座席を取り付けたところに座っていくことになる。
お尻痛くなりそう…
私とルーナは背負いカバンを馬車に乗せて、荷台にのっかった。
「じゃあお願いします」
「わかりました」
御者が答えて馬を動かし始める。
周囲には家の騎士たちが護衛しているので安心感はあるか。
これはコーラシル川への物資輸送も兼ねたものだから、全部で20台もの馬車が連なっている。
私はそのうちの1台に乗っている。
そしてコーラシル砦で私たちともう1台の馬車を置き、あとの18台はそのまま王国軍駐屯地まで行く。
ほとんどが食料で、後は火薬と鉛が積まれている。
戦場は現在にらみ合いが続いていて、そのため戦線維持には補給量がものをいうような状態だそうだ。
そして、聞いた話では鉄砲はやはり1発撃てば通常1分以上は再装填にかかることから、多くの死傷者は出したものの無敵ではないことが分かってきたんだそうだ。
鉄砲隊の一斉射を躱せば反撃のチャンスになる。
だから誰も先に撃てない、どちらも攻撃を仕掛けられなくて膠着しているという。
散発的な銃撃は互いにしているそうだが、今度は弾が届かない。
ごくまれに不運にも当たってしまう兵士もいるそうだが、その数は日に2~3人程度だという。
それでも犠牲者が増えていることには変わりない…
お母様が言うように戦争を止めるためには膠着状態を打開しないといけない。
…なんか考え事してたら気持ち悪くなってきた…大丈夫かな私、胃が痛いぃ。




