厳しい現実を乗り越えよう
1.突然の解雇
「お前は、今日で首だ。出て行ってもらう。お前は、戦士で前衛なのに、臆病すぎる。前に出て戦えない戦士なんて、使い物にならない。」
その日、夜太郎は仲間だったチームのリーダーから、突然の首を宣告された。
夜太郎が所属していたチームは夜太郎を含め6人であり、レベル30の夜太郎を除けば、平均レベル15の駆け出しのチームだった。
「わかりました。今までお世話になりました。ありがとうございました。」
ああ、またソロ生活か。まあ、仕方ない。とりあえず、町に戻ろう。
近くの町に着いた夜太郎は、まず安い宿屋を目指す。「いらっしゃい。一晩前金で銅貨10枚だよ。」
夜太郎は、銅貨10枚を、おかみさんに渡す。
「毎度。じゃあ、これが荷物を入れる宝箱の鍵。」
鍵を受け取って、自分のベッドがある部屋に入ると、まだ昼前だからか、他に誰もいなかった。
さて、まずは身体を鍛えなきゃ。夜太郎は、宿の裏庭に出て、入念に準備体操をする。それから、腹筋、屈伸、腕立て、ジョギング、剣の素振り、シャドーと黙々と続けていく。
夜太郎は、これら運動を毎日こなしている。継続は力だと信じている。
汗を十分流した夜太郎は、井戸の水を思い切り被り、汗を落とす。ああ、気持ちいい。
運動を終えた夜太郎は、冒険者ギルドに向かうことにした。
冒険者ギルドの扉を開けて、受付窓口を見ると、夜太郎の担当である紗良さんがいる。
「こんにちは。紗良さん。」
「あら、夜太郎さん、こんにちは。今日はお一人ですか?」
「ええ、チームは首になっちゃいました。また、ソロで素材集めのクエスト依頼を受けたいと思います。」
「そうなんですね。正直こちらといたしましては、大歓迎です。どうしても冒険者の皆さんは討伐クエストを受けたがりますからね。素材集めのクエストは溜まりがちなんですよ。」
「そうですよね。やはり魔物倒さないとレベル上がりませんからね。」
「その点、夜太郎さんは素材集めのクエストを沢山こなして下さりますし、採集物も質が良くて、依頼してくれた方の評価も良いんですよ。」
「ありがとうございます。それじゃあ、薬草と毒消草集めのクエストをお願いします。Dランクでもありますよね。」
「はい、ありますよ。こちらになります。」
紗良さんは、依頼書を渡してくれる。
ええと、薬草50個に、毒消草30個。期限は10日で、達成報酬は銅貨50枚か。
「夜太郎さんは、確か今レベル30だから、Cランクの試験も余裕だと思うんですけどね。」
「いやいや、まだDランクで十分です。それじゃあ、この依頼お受けします。」
夜太郎は、依頼書をバックに仕舞い、紗良さんにお礼を言って、ギルドをあとにした。