夢の誤解
ごく弱い、聞き漏らしそうな声が聞こえた。
イリスか!
急いでソウに以心伝心を送った。
『マーレイを連れて急いで帰ってくるのにゃー!』
次に、ユリのそばに行き、ユリに頼んだ。
「ユリ、頼みがあるにゃ!人を助けてほしいのにゃ!」
ユリがキョトンとしてこちらを見ていた。
「私にできることなら手伝うけど?」
「ユリにしかできないのにゃ!」
「何をすれば良いの?」
ユリは来てくれるようだ、それならあとはリラをどうするかだが、勝手に連れて行って良いか分からない。マーレイを連れてくるソウに任せよう。
「その前に、リラ、一人で待っていられるにゃ?ソウが来たらソウに連れて来てもらうと良いにゃ」
「はい・・・」
リラが不安そうだが、説明している暇もない。
「ユリ、2階から行くのにゃ!」
ユリを抱えて転移するには、このままでは無理がある。変身した上で行くには今はまだ外に出るわけにいかない。ルレーブになって、ソウの部屋から転移しよう。
階段を上がって変身して気がついた。
あ、ユリに説明しなくては!
「ユリには癒しの力があるの。不治の病も治せるわ。元の国の病気で、血栓ってわかる?」
「血管が詰まって脳や心臓だと一大事になる病気ね」
わかるなら話が早い!
「そのイメージで、魔力放出器官に詰まった固まりを取り除いてほしいの」
「イメージすれば良いの?」
よし、ユリが理解した!
「その通り。移動するわ!」
ソウの部屋に入り、ユリを連れてイリスの元に転移した。
転移先でユメに戻り、ソウに『イリスのところに居るにゃ!』と再び以心伝心を送ってから、部屋の戸を開け廊下に出た。
廊下にいた番頭に見つかったが、急いで頭を下げられた。
「先日は大変失礼いたしました。どうかお嬢様をお助けください!」
「やるだけやってみるのにゃ。ソウが来るから外で待っててほしいにゃ」
「かしこまりました!」
隣の部屋の戸を開け、先に入った。
後を付いてきたユリが、イリスを見て驚いていた。
イリスは意識がないのか呼吸は荒いのに目を瞑ったままだった。
これは不味いかもしれない。
「ユメ様!その方が?」
「もしかしてリラちゃんのお母さん?」
店主に聞かれたが、ユリを優先した。
「そうにゃ。ユリ頼むにゃ」
「頑張ってみます」
ユリは寝ているイリスの額を触り、頬を触り、首を触り、右腕を触り、首をかしげた。
もう一度手を出して、今度は左腕を触り、そのまま心臓の辺りを触ると、イリスは淡く輝き、その光が飛び散った。
呼吸が落ち着き、表情が穏やかになった。
「ユリ、大丈夫にゃ?」
「何となく、まだちゃんと治っていないと思うの。失礼してもう少し触るわね」
コンコンコン
「ホシミ様をお連れいたしました」
「お入りください」
部屋の中に居る店主が答えた。
すると、ソウとマーレイとリラが入って来た。
「お母さん!!」
リラがイリスを見て声をあげた。
「リラの、声が、聞こえる、気が、するわ」
イリスは体力がないためか、蚊のなくような小さな声で、途切れ途切れに話した。
「目が覚めたのにゃ」
声をかけてみたが、焦点があっていない。
「ユメちゃん、本当に、助けに、来て、くださったのね。ありがとう、ございます」
最悪は防げたみたいだが、まだ治ったとは言いがたいようだ。
「助けたのはユリにゃ」
「ユリ様、助けて、くださって、ありがとう、ございます。私は、イリスと、申します」
「えーと、イリスさん、痛い所とか調子が悪い所を教えてください。新前なので、まだよくわからないのです」
ユリも同じように感じているようだった。
イリスは少し微笑むと、頑張って話し出した。
「一番、痛かった、胸に、杭を、刺される、ような、重みが、なくなって、あとは、この辺が、少し、痛みが、残って、いるように、思います」
イリスの手が布団の上から示した場所は腹部だった。
「男どもは部屋からでるのにゃー!」
男性全員を部屋から追い出し、布団をどけた。
ユリが、イリスの薄い服の上から手を当てて、左の脇腹の辺りを触ると、そこが淡く輝き、その光が飛び散った。
少しユリがクラッとしたように見えた。
「ユリ、大丈夫にゃ?一度休むのにゃ」
「え、あ、うん」
「リラ、母と話すと良いにゃ。何かあったら呼ぶのにゃ」
「はい、ありがとうございます」
リラを残し、退出した。
外に待っていた女性に応接室に案内され、ユリと一緒に入ると、ソウとマーレイと店主がいた。
「ユリ・ハナノ様、わたくしイリスの父で、この店の主人をしておりますレギュムと申します。娘をお助けくださり本当にありがとうございます。どんなことでもいたしますので、どうかお申し付けください」
「え?」
ユリは少し困っているようだったが、ソウが補足すると落ち着いたらしい。
「ユリに、お金のお礼は要らないと言ったらこうなった」
「成る程・・・」
ユリは少し考えていたようだったが、何かを思い付いたのか話し出した。
「私はランチとおやつの店、アルストロメリアの店主、ユリ・ハナノです。お礼を何かしたいと言うなら、お店が忙しすぎて大変なので、信頼できる人を紹介してください。あ、マーレイさんに選定してもらいます」
え?人を雇うの?
足りないの?
もう少し早く起きなくてはダメなの?
ユリの言ったことを理解しようと考えれば考えるほど、私は要らないんじゃないか?と思えた。
「ユリ・ハナノ様、イリスは元気になりますか?」
「えーと、ユメちゃん?」
「体力さえつけば元気になるにゃ」
「ユリ・ハナノ様、人は何人必要ですか?」
「女性を2人が希望ですが、1人でも良いです」
「仕事内容を伺ってもよろしいですか?」
「配膳です。配膳の人がいれば、私とリラちゃんが作る方に集中できます」
え?やっぱり、私は要らないの?
リラと同じくらい早くから手伝わないと要らないの?
「リラを呼んでくるにゃ」
私は部屋を出た。リラのところに行き、戸の外から声をかけた。
「リラ、帰る支度をしてにゃ」
「はーい!! おかあさん、又来られたら来るからね」
リラはすぐに出てきた。
「ユメちゃん、本当にありがとうございます。お母さんが助かったのはユメちゃんのお陰です!」
「治したのはユリにゃ」
「でも、ユメちゃんが来てくれなかったらユリ様も来られなかったのだと思います」
「・・・私は役立ったのにゃ?」
「役立つどころか、神様です!」
「リラが感謝してくれるならよかったにゃ」
全員揃ったので帰ることになった。
来たときと同じ部屋に入り、ソウが3人を連れて先に転移した。
もう一度部屋を出て、店主に伝えに行った。
「ユリが治したと公言しないようににゃ」
「はい。ホシミ様からも、黒猫様が治した事にするようにと申しつかりました」
「まあ、ユリに迷惑がかからないならそれで良いにゃ」
「この度は、本当にありがとうございます。黒猫様は、何かご希望はございませんか?」
「リラを連れてくるのに、隣の部屋をそのままにしておいてにゃ」
「はい。いつまででも空けておきます」
「あ、リラの服を作ってやってにゃ。パープルのところにいくことがあるのにゃ。それだけにゃ。帰るにゃ」
「はい、次回までには揃えておきます」
ソウの部屋に転移して戻ってきた。
ハンバーグができていたので、みんなで食べて解散になった。




